テディ・Dと実験機10-サイレント・ネオ-boy meets girl-
「てこずらせましたな…しかし、さすがはムドー先生、相手の電源をシャットダウンさせるとは、このような戦法、一度たりとも見たことがございませぬ」
「白影殿、世辞は無用だ。ただ、運が良かっただけのこと…陸戦艇で孫娘ごとこの化け物を収容してしまうがよかろう。孫娘はその後、つかまえればよい」
ムドーがほっと息をはきながら、安堵の表情を浮かべた時だった。
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「私は納得できません、この化け物に俺たちの仲間はやられてしまった…許せない!」
陸戦艇で待機していた最後のシェルが突然外に姿を現し、ムドーの傍らで僚機のパイロットが叫んだのだ。この男は血の気が多いタイプだった。
「よせ、何をする!?」
ムドーが声を荒げた。
「この化け物を仕留めるのは今しかありません、仇をうつ!」
男がのるシェルはサーベルを腰から引き抜くと、踊るように実験機に向かった。
「よせ、余計なことをするな!」
白影の叫び声がチャンネル越しにひびく。
その時だった。再び実験機のモノアイに光がともった。しかも、ものすごい速さで明滅を始めた。赤、黄、青、緑、紫…と、七色にめまぐるしく点滅している。
それをみるとムドーは思わず背中をぞっとさせ、後ずさりした。
歴戦の勇であるムドーでさえ、このようなCAを見たことなど一度もなかったのだ。
さらに、次の瞬間だった。実験機の背中が開き、音も立てずに2mくらいの平たい円盤が次々と空に向かって放出されていく。
やがて実験機の上空を射出された100を超える円盤が覆った。
その圧倒的な眺めに、ムドーは声を振り絞るようにつぶやいた。
「なんとまがまがしい光景よ…」
一方、シェルのパイロットは「うわあああ…」と恐怖の叫びをあげて、見境もなく実験機に突撃した。
「化け物、くだばれぇええ!」
パイロットが叫んだ次の瞬間…上空のサークルは明滅し、一斉にまばゆい光のレーザーを放った。
その光は実験機に向かっていたシェルに集中し、一瞬でこの世から消し去ってしまった。
サイレント・ネオ-boy meets girl-(テディ・Dと実験機全10話・先行配信中)
BGM
-登場人物-
テディ・D:ゴスロリの格好をし、腕には9.8と数字をほり自死がんぼうがある少女。
オジャム:お飾りの提督をしていたが、父親をころされたあげく、砂漠に追放された。命からがら助かり、ゴサクの家で豚小屋などを掃除して糧を得ている。心優しい少年。
サシャ:誘拐船でオジャムと出会った6歳の女の子。勘が鋭く、ゴサクに気に入られている。その正体は…!?
ムドー:月歌だけでなく、コロニー連合などで十数年の間、傭兵として戦場をわたりあるいてきた猛将。残酷な攻撃をすることもあるが、騎士道と義理を尊ぶ武人。シュトライツァー党では義兄弟のシュトライツァーの副将として活躍、北国随一の武将とまで呼ばれるにいたった。
ムサシ:地球(テラ)・ネオ東京出身の19歳の青年。愛機サイレント・ネオをあやつり、第5次地球・コロニー戦争において100機落としを達成、スーパーエースに認定された。しかし、戦う意味を見失い、月歌に放浪の旅に出る。
ソック:ムーンキングダム・斥候隊副隊長。ボーナスをなくしてしまい、恐妻トド子に家を追い出された悲しき中年男性。
マギー教授(おねえ)とみなみちゃん(アイドル):一年前に地球(テラ)から月歌に向けて出発したが、未だに到着せず。