マガジンのカバー画像

樫の木通信

96
運営しているクリエイター

記事一覧

第十一章:マボとトロル兄弟!?7 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

第十一章:マボとトロル兄弟!?7 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

とはいえ、震えていたマボですが、逃げるとしたら今しかありませんでした。怖くて足がなかなか言うことをききませんが、マボは覚悟を決めてよたよたと逃げ始めたのです。

7

トロル兄弟はすっかり喧嘩に夢中で、マボが逃げたことにも気づきません。マボは逃げ切ることができたのでしょうか?
残念ながらそうではありませんでした。トロル兄弟は間もなく喧嘩に飽きてしまい、「わかった、今回は特別だ。お前にも少しわけてや

もっとみる
第十一章:マボとトロル兄弟!?3 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

第十一章:マボとトロル兄弟!?3 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

途端にあたりがしんと静まり返り、聞こえるのは泣き声のような風の音だけになりました。しかし、すぐにドスン、ドスンと轟音を響かせ、何者かが近づいてくる足音がしました。足音が鳴るたびに地面がぐらぐらと揺れ、そこかしこにある岩山の石がごろごろ転がり落ちる音がするので、マボの心臓はすっかり高鳴りました。そして、おそるおそるお輿の隙間から外を見たのでした。



マボが見たのは、もちろんトロル兄弟でした。天

もっとみる
第十一章:マボとトロル兄弟!?2 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

第十一章:マボとトロル兄弟!?2 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

そうこうするうちに、お輿もいよいよトロル兄弟の住処に近づいてきたのでしょう。あんなに楽しそうに話していた小人たちは、すっかり黙り込んでしまいました。

2 
それからいくばくがたつと、お輿は迷い森をぬけ、赤茶色の地面とごつごつとした灰色ではだかの岩山がつらなる大変開けた場所に出たのでした。見渡す限り草ひとつはえておらず、太古の岩々が塔のように天高くそびえ立っているので、荒野という表現がぴったりの場

もっとみる
第十一章:マボとトロル兄弟!?1 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

第十一章:マボとトロル兄弟!?1 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

「マボさん、ありがとう、頼んだよ~!」
チャッピが手を振ると、小人たちがそろって真似をしました。いよいよマボはトロル兄弟のところに向かったのでした。

1

4人の小人がマボが入ったお輿を抱え、えっちら、おっちら森をかけています。といっても小人たちは呑気なもの、しばしば足を止めて、
「あ、ごらん。みやまきんぽうげがこっちに向かっておはようとあいさつしてるよ!」
「あちらも見てごらんよ。りんどうの美

もっとみる
第十章:小人村は大騒ぎ!?13 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

第十章:小人村は大騒ぎ!?13 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

「うーん、とにかく、マボさんに任せておけば、ミィちゃんも安心だね!」
「そうですよ、私たちはこの日を樫の木庵のマボの日にするように長老に頼まないといけないですね!」
「本当にねえ。マボさんのおかげで、小人村も平和が訪れるねえ」
マボはこれを聞いて、さらに心に重たい石がドスンと落ちるような気持になったのでした。マボはよろよろと階段を下りました。

13

「マボさん、おはようござます!」
家族が全員

もっとみる
第十章:小人村は大騒ぎ!?12 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

第十章:小人村は大騒ぎ!?12 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

つまり、マボのわずかなのぞみは完全に絶たれたのでした。ですが、マボはキッチュの助けもなしにトロルとの対面にのぞむことなど考えたくないことでした。マボは「きっと、キッチュに僕の声が届いているよ、明日にはきっと来てくれるはずだ」そう自分に言い聞かせました。そして、なかなか寝付けずに何度も寝返りをうっていましたが、いつのまにか眠ったのでした。

12

次の日の早朝、楽しげに小鳥がおはようの歌を外で歌い

もっとみる
第十章:小人村は大騒ぎ!?11 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

第十章:小人村は大騒ぎ!?11 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

多くの大人たちはマボの周りにわっと集まり取り囲むと、早くも胴上げを始めたのです。それから、再び歌い踊り始めたものですから、もう収容もつきそうにありませんでした。しかし、長老が何とかなだめ、小人たちはついに家々に帰って行ったのでした。
マボはチャッピにつれられ、彼の家で一晩過ごすことになったのです。

11

チャッピの家は川原広場のすぐそばにありました。お父さんとお母さん、弟の4人暮らしです。

もっとみる
第十章:小人村は大騒ぎ!?9 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

第十章:小人村は大騒ぎ!?9 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

長老の一言で歓迎会は終わりました。マボはほっと溜息をつきましたが、まだ続きがありました。長老を始め、小人たち300人がマボの前に座ったかと思うと、みんながみんな平伏したではありませんか。まだ平伏の意味を知らない赤ちゃん小人たちだけが、不思議そうにきゃっきゃっと笑いながら、周りを見ています。もうこうなると、マボはお地蔵さまのように固まるよりほかありません。
「マボ様、実を申し上げれば…」
 長老はや

もっとみる
第十章:小人村は大騒ぎ!?8 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

第十章:小人村は大騒ぎ!?8 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

リーダーのボバンフールがこう言うものですから、戦士小人はすっかり興奮してしまい、携帯している武器を腰や背中から抜いて、振り回すばかりか、中には打ち合う者まで現れました。それは、とても危なっかしく、マボはすっかりドギマギしました。

8

しかし、今度はその様子を見ていて老婆の小人が歩み出ると、マボに手を合わせ始めています。
「こんな機会はめったいにないからのう。死んだじいさんにも一目でいいから、伝

もっとみる
第十章:小人村は大騒ぎ!?6 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

第十章:小人村は大騒ぎ!?6 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

しかし、マボはネズミをみただけで、布団をかぶってしまうこともあるぐらいの怖がり坊やだったのです。そのマボを今や小人の村の住人は、英雄が現れたとばかりに大歓迎を始めようとしているのです。

6

それから、小人たちは歓迎の宴をしようと、ちょうどマボ達がきた丘の下に集まりました。この小川の前は広場になっているので、お祭りなどの会場になるのです。ここに小人たちがめいめい、焼き菓子やらドーナッツやら果物な

もっとみる
第十章:小人村は大騒ぎ!?5 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

第十章:小人村は大騒ぎ!?5 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

「本当にそうですとも、妖精の騎士が来てくださるなんて、なんてありがたいことなのでしょう!」
おばあさん小人がうなずきました。
「母さん、これでミィもきっと助かるだろうねえ、本当に神様は我々を見捨てたりしなかったんだねえ」
とお父さん小人は母さん小人の手を取り、目を見つめて言いました。いったい、何が彼らに起きているのでしょう、マボは全く知りません。

樫の木庵のマボ(第1巻 全話完結)|遥ナル (n

もっとみる
第十章:小人村は大騒ぎ!?4 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

第十章:小人村は大騒ぎ!?4 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

淡い紫色の癖っ毛をしている彼女こそ、ミィちゃんでした。ミィは危険をおかして森に入ったチャッピ達の大事な大事な友だちでした。

樫の木庵のマボ(第1巻 全話完結)|遥ナル (note.com)

4

「ミィちゃん、大丈夫かい!」
チャッピがうれしそうに声をかけました。
「うん、ありがとう! あなたたちこそ大丈夫なの…?」
戸の間から半分だけ顔をのぞかせ、マボの方を心配そうに見つめています。”人間な

もっとみる
第十章:小人村は大騒ぎ!?3 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

第十章:小人村は大騒ぎ!?3 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

無理もありません。妖精の間では人間は評判は全く良くないのです。自然を好き勝手に壊してしまうし、動物を食べても感謝する人は減ってしまいました。ですので、小人族は人間のことを「邪悪な人」「やっかいすぎる隣人」「迷惑な生き物」などと呼んで嫌がりこそすれ、歓迎などすることはありませんでした。しかも、秘密の場所にあるこの小人の村に、やってこれないはずの人間がやってきたので、面食らったのです。これは、チャッピ

もっとみる
第十章:小人村は大騒ぎ!?2 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

第十章:小人村は大騒ぎ!?2 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

その小川の両岸から少し離れた所に、小さなキノコの形をした屋根の屋がいくつも並んで立ってました。マボはついているのか、ついていないのか、小人の村を初めてたずねた人間になったのでした。

バレエ・児童文学 イラスト 素材(バレエ チラシ用・クルミ割り人形)|遥ナル (note.com)



今は昼下がりの午後でしたので、小人たちは仕事をすっかり終えていました。小人は人間のように夜遅くまであくせく働

もっとみる