第十章:小人村は大騒ぎ!?8 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)
リーダーのボバンフールがこう言うものですから、戦士小人はすっかり興奮してしまい、携帯している武器を腰や背中から抜いて、振り回すばかりか、中には打ち合う者まで現れました。それは、とても危なっかしく、マボはすっかりドギマギしました。
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しかし、今度はその様子を見ていて老婆の小人が歩み出ると、マボに手を合わせ始めています。
「こんな機会はめったいにないからのう。死んだじいさんにも一目でいいから、伝説のマボ様をお目にかけてやりたかった」
などと言っています。
「ばあさんの言うとおりだ。こんな機会はめったにないぞ!」
また誰かが叫ぶと、小人たちは歌うのも食べるのもやめて、マボを拝みだす始末です。マボはすっかり困り果て、頃合いをみはからって言おうとしていたこと…すなわち……、
『僕は妖精の騎士ではないよ、ただの子供だよ。子犬に追いかけられて、逃げ出したこともあるよ。このメダルはキッチュというエルフの子供にかしてもらったんだよ』
なんて口が裂けても言えなくなってしまったのです。
それから、どれほどたったのかわかりませんが、マボにはずいぶん長い時間に感じられた宴もたけなわになりました。お月様が空高くのぼり、村を穏やかな光で照らしています。
「さて、そろそろ、歓迎会も終わりにしよう。マボ様も旅でお疲れじゃろうからな。今日はチャッピの家でゆっくり休んでもらおう」
長老の一言で歓迎会は終わりました。マボはほっと溜息をつきましたが、まだ続きがありました。長老を始め、小人たち300人がマボの前に座ったかと思うと、みんながみんな平伏したではありませんか。まだ平伏の意味を知らない赤ちゃん小人たちだけが、不思議そうにきゃっきゃっと笑いながら、周りを見ています。もうこうなると、マボはお地蔵さまのように固まるよりほかありません。
「マボ様、実を申し上げれば…」
長老はやっと本題を話し始めました。長老によると話はこうでした。
樫の木庵のマボ(第1巻 全話完結)|遥ナル (note.com)
マボ:5歳の男の子。臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。
ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。
キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。
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