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UXを実践するための読書記録
はじめに
先日、SNSにポートフォリオサイトを公開したところ、UX面でのご相談をいただきました。
その際、「要件定義できますか?」という質問があったのですが「できる」と自信をもって答えることができず、これはまずいと思ったので要件段階での具体的なデザイン手法を本で学び直しました。本記事はその記録です。
なお、要件定義を一言で言えば、実現したい体験に必要な機能を洗い出すことです。
その際に必要なことは2点、「戦略段階で定めた方向性や目標を達成できるか」に加え、「技術的に実現可能か」を評価することです。
↓ Goodpatch Blogより、UXにおける要件定義の位置づけが分かる記事です
アイディアを可視化するストーリーボード
ストーリーボードの活用によるインサイトと、コンセプトの立案、ベネフィットについてAirbnbの創業者、Joe Gebbiaらが社内で実践した際の具体例を知ることができるのがこちらの本です。彼らは旅行をして家に帰るまでゲストとホストに何が起こるかをコマ割りで描くことで、Airbnbの登場する場面がとても少ないことに気づき、ビジョン実現のためのプロトタイプ作りを行うことになります。
ストーリーボードは一般的にはアニメ制作など映像作品を作るための絵コンテのことをいいますが、新規サービスの立ち上げの際や、サービスの改善を行う際、ユーザーを中心に置いた行動のアイディアを可視化することで、共通認識がチームで形成されます。
↓ Joe Gebbiaが実際に描いたストーリーボード
↓ btraxさんの記事でもAirbnbのストーリーボード活用事例が紹介されていたので、参考にしました。
ストーリーについての理解を深める
「Airbnb Story」で、ストーリーボードの活用事例をみましたが、そもそもストーリーがなぜサービスやプロダクト開発を左右するのか、またストーリーの作り方についてTwitter、Slack、Pinterestなどの具体例を交えながら、入り口からゴールまで段階的に理解を深められるのが、こちらの本です。
また、私にとってこの本で面白かったのは、フィットネス / エクササイズ動画配信アプリ「FitCounter」の具体例でした。私自身は元々糖尿病内科医で、生活習慣病の治療アプリやPHR(パーソナルヘルスレコード)開発に興味があります。
FitCounterをどうエンゲージメントを得るプロダクトにするかのストーリー作りは、今後のプロダクト開発を行う上でもかなり参考になりますし、クリニックの外来での食事運動指導にも生かせる内容だと感じました(医師はプロダクトに例えるとUIの役割も担っていると最近感じています)。
脱線しますが、後期研修医として市中病院で3年間勤務して感じたのは、糖尿病の治療(食事・運動習慣の改善、適切な薬の使用など)が上手くいくかは、担当医である自分のことを好きに(ファンに)なってもらえるかどうかに依存しているんじゃないかということです。冗談みたいですが、プロダクトの目的がエンゲージメント獲得による目標達成と考えると、あながち間違った発想じゃなかったかも・・・と思っています。
実務の手元に置いて読みたい本
こちらの本は、長年ソフトウェア開発に携わり、アジャイルや製品設計プロセスのコンサルタント、スクラムトレーナーである著者によるユーザーストーリーマッピングの手法・詳細が書かれています。今後チームでの開発経験を積みながらその都度参照しよう!と思いました。
製品やサービス開発に関わる様々なステークホルダー間で、議論の促進を促すのが可視化だとこの本の冒頭で述べられています。「顧客体験を図示するための種種のダイアグラム(図表)」の解説が掲載されており、こちらも資料作成やプレゼンテーションをする際に参考となる事例が豊富に紹介されています。
個人的に「そういう視点!」と目を引いたのは、妊娠に関するエクスペリエンスマップが医院や妊娠関連のサービス業者などにとって有用なダイアグラムと紹介されていた箇所でした。
まとめ
本を読むというのは、結構時間がかかるので、「記事にする!」という目的を持って読み進めてみました。今回は要件定義について学びたいと思って本を選んだのですが、要件定義は開発に関わるチーム内での共通認識の言語化と解釈しました。さらに共通認識はストーリーを可視化することで固めるのが効果的であることを学びました。
デザイン手法は、やっぱりやったことがないと「できる」とは自信をもって言えないのですが、必要な時に手探りでも参考にできる引き出しとして、これらの本を手元に置いておこうと思います。