キツツキと雨
鑑賞時の感想ツイートはこちら。
2012年の日本映画。山あいの小さな村で暮らす無骨な木こりと、ゾンビ映画の撮影にやってきた気弱な新人監督が、映画づくりを通して交流する姿をユーモラスに描いた、ほっこりするコメディ作品です。
出演は、役所広司、小栗旬、古館寛治、高良健吾、伊武雅刀、山崎努、嶋田久作、ほか。監督は『南極料理人』、『横道世之介』の沖田修一。
絶妙な「間」が魅力♩
まずは、この予告編をご覧ください。
冒頭の役所広司さんと古館寛治さんのやりとり!笑
これなんですよね~! 沖田修一監督作品の特長であり最大の魅力は、この絶妙な「間」の可笑しさ! 観ていて、思わず「フッ……笑」と笑ってしまう。
もちろん、役所広司さん、古館寛治さん、という二人の俳優の素晴らしい演技があってこそなのですが、
「一瞬、止めてもらってもいいっすか?」
「……はい?」
「映画の撮影やってまして」
「…………はい?」
このやりとりだけで、もう「くすっ」と笑わせてしまうなんて。なんというか、沖田監督は “その場に醸し出される空気の可笑しさ” を撮るのが本当に巧い人なんだなぁ、とつくづく感じます。
・・・
わたしがこの “沖田作品の魅力” に触れたのは『南極料理人』という作品が最初でした。
こちらも超面白いので、オススメです♩
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でね。
本作が審査員特別賞を受賞した東京国際映画祭での会見(2011年)で、主役を演じた役所広司さんがこんなことをおっしゃっています。(YouTube)
記者:
「 沖田監督のユーモアについて、どのように感じていますか?」
役所広司:
「まず台本を読ませてもらって、これだけ面白い台本を(我々のような)俳優である人間が演じた時に、台本よりも面白くなくなったらどうしよう? という不安がある」
「人物が、これは “面白い”、“ユーモア” だ、と(自覚して)喋ったり行動したりしているのではなくて、普段生きている中で理由があってそうしているんだろう、と。それが、監督が狙っている “ユーモア” なんだろうなぁ、と思いつつ演じていました」
まさにその通りですよねぇ。うんうん。
言ったりやったりしている本人は大マジメ。その人なりの理由があって、そうしている。でも、傍(はた)から見ると、ちょっとヘンで面白い――。笑
気弱でリーダーシップのない新人監督(小栗旬)に対し、何かと当たりが強いベテラン助監督(古館寛治)。胡散臭くて良いです!笑
役所広司が可愛い♡笑
役所広司さん。“劇団の東大” とも言われる「無名塾」出身。本当にお芝居が巧いですよね~! 大好きな俳優さんの一人です。
代表作『うなぎ』(1997年)、『バベル』(2007年)など、シリアスな演技の作品でも長く活躍されていますよね。最近の作品だと『すばらしき世界』(2021年)が評判良いみたいなので、ちょっと気になっています。
その一方、ダイワハウスのCMシリーズや『THE 有頂天ホテル』(2006年)など、コミカルなお芝居もバッチリいける俳優さんでもあります。
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その役所さんが沖田修一監督のもと、存分にコメディの才能を発揮してくれているのが本作『キツツキと雨』。
役所さん扮する主人公は、小さな山村で暮らす木こりの「岸 克彦」。村の仕事仲間からは「克(かつ)さん」と呼ばれています。3年前に妻に先立たれ、無職の一人息子「浩一」(高良健吾)と二人暮らし。
無骨で、実直で、華やかなことや浮ついたことには縁がなく、田舎の “働き者のおじさん” を絵に描いたような男性。
毎朝、息子と自分、二人分の朝ごはんをつくり、仕事へ持って行く自分のお弁当をつくり、唯一の楽しみといえば好物の甘いものを食べることくらい。それも血糖値が高いので、近頃は医者から止められているという。
そんな、普通の “木こりのおじさん” として居るだけなのに――
可愛い♡笑
そして、可愛い♡笑
役所さんの可愛いおじさんぶりが、これでもかというくらい堪能できます。
あたたかい気持ちになれる作品
そして、「ふふふ♩」と笑いながら観てゆくうちに、小栗旬演じる気弱な新人監督「田辺」と、同じ年頃の息子を持つ「克さん」との交流に、なんともあたたかい気持ちになります。
作品全体を通して感じられる “あたたかさ” は、沖田監督作品のもうひとつの良さなんですよね~。
・・・
最後に、もうひとつ。
雨は分かるけど、なんでキツツキなのかなー? という疑問は最後に解けた。ほのぼの。
という点と、
相変わらず、ごはん美味しそう!!
という点も、よかったら注目してみてください♩
(パリパリの海苔が美味しそう~!)
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