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2001年宇宙の旅
鑑賞時の感想ツイートはこちら。
『2001年宇宙の旅』を観た。これは…名作というより傑作だー!! 60年代にこんな映画が創られていたなんて、驚嘆。圧倒的映像美。音楽と環境音。色褪せないデザインセンス(オリヴィエ・ムルグの赤いソファ、素敵だった)。凄い。凄すぎる! pic.twitter.com/rR58JviLVO
— もりはるひ (@haruhi_mori) August 6, 2014
1968年のイギリス/アメリカ映画。わたしの大好きな映画監督、スタンリー・キューブリックによるSF映画の傑作です! この作品との衝撃的な出会いがきっかけで、その後、次々とキューブリック作品を辿ることになりました。
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イギリスの SF作家であるアーサー・C・クラークと、キューブリックが共同でアイディアやストーリーをまとめ、映画(キューブリック)と小説(クラーク)という形で発表されました。原題 "2001: A Space Odyssey"。
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アーサー・C・クラーク(左)とスタンリー・キューブリック(右)。
宇宙船のセットにて。
わが生涯のベスト映画10に入る大好きな作品なので、今回は長いです。汗
よろしければ、おつきあいください♩
わたしが人生で最も衝撃を受けた映画
昔から映画が好きで、それなりの本数を観てきたわたし。ですが、40代後半にしてはじめて観たキューブリック作品が本作『2001年宇宙の旅』でした。
トレーラーはこちら。
その時の衝撃たるや!!!
「生きているうちにこの作品に出逢えて良かったな」
と心から思います。
確実に、わたしの映画の世界を広げてくれました。
・・・
映画を観て、その作品を「良かった」と思う要素って色々ありますよね。
○ ストーリーがすごく面白かった!
○ 俳優の演技が素晴らしかった!
○ 音楽が美しかった!
○ 映像や演出が凝っていた!
わたしが衝撃を受けたのは、本作のいったいどこだったんだろう? ――と、考えてみました。
まずは、兎にも角にも、キューブリックの「圧倒的美的センス」!(キューブリックの前職は写真雑誌のカメラマンでした)
それから、高い芸術性を保ちながらも、ストーリー(起承転結)を持った「映画」という「コンテンツとして魅力的」で「面白い(楽しめる)」という点。
芸術的な作品というと、得てして
「たぶん芸術的なものを作りたかったんだろうな……」
「監督のそういう意図は “雰囲気” で伝わってくる」
「けれど、映画として面白いかというと、そうではない」
つまり「難解」笑。という傾向がありますよね?
キューブリックの作品には、それがないのです。ちゃんと面白い。
部分的に難解と感じるところもあるかもしれないけれど、そこに込められた意味を考察するのが、また面白い!
キューブリック作品の考察サイトとしては、こちらのブログがダントツに詳しくて情報量も多いです。
▽ KUBRICK.blog.jp
すみません。好きなので、キューブリックをベタ褒め♡笑
インターミッション(途中休憩)のある映画
さて、クラシックやオペラ、バレエ鑑賞がお好きな方はご存じであろう「インターミッション」(intermission)。上演が長時間にわたる場合、途中で挟まれる休憩のことです。
映画館での上映がフィルムで行われていた時代には、長尺の作品にインターミッションが入ることもよくあったようです。(『風と共に去りぬ』、『マイ・フェア・レディ』、『七人の侍』など)
でも、デジタルで上映される現在では、インターミッションって珍しいですよね。
2018年に『2001年宇宙の旅』が劇場で IMAX上映された際、わが家の息子が観に行きまして、実際にインターミッションを体験していました。あいにく都合がつかず行けなかったわたしは、もう、うらやましくて、うらやましくて!笑
『2001年宇宙の旅』IMAX上映、きょうで最終日とのこと。今朝、息子が「観に行く」と言ってた。そうだよ! あーん、忘れてた! 嗚呼! 羨まし過ぎる。わたしも行けば良かったー!…と悔やみながら仕事中。息子から感想を聞くのが楽しみ。 https://t.co/iY79Ragr8c
— もりはるひ (@haruhi_mori) November 1, 2018
さらに本作の公開当時には、監督の意向で、上演前の「入場曲」、インターミッション時の「間奏曲」、エンドクレジット以降の「退場曲」まで流れたのだとか。
クラシックに造詣が深い(後述)キューブリックらしいこだわりですよね♩
クラシック音楽の使い方が素晴らしい♩
スタンリー・キューブリック監督といえば、既存のクラシック音楽を作品に多く使用することで知られていますよね。
本作の音楽で真っ先に浮かぶのは、コレ!
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ぱーーーーー♩
ぱーーーーー♩
ぱーーーーー♩
/
ぱぱーーーーーーーーーー♩♩
\
(ドロロロロォン ダン ドン ダン ドン ダン ドン ダン ドン ダン!!)
オープニングで流れるリヒャルト・シュトラウスの交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』。
動画も載せちゃう!♡笑
ぬぉぉぉ、かっけええぇぇぇーーーー!!!涙
ハッ……!
興奮のあまり、言葉が乱れました。
どうかご容赦くださいませ。
作中で使われているのは、カラヤン指揮&ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏の録音です。豪華だなぁ~!
・・・
そうだ。ちょっと余談を。
あのね、あのね、ひとつ自慢してもいいですか♩笑
あれは 2009年のバレンボイムさんの時だったか、もっと前の年だったかしら……? テレビで初めてニュー・イヤー・コンサートを観て以来、ウィーン・フィルの美しい音色の虜になったわたし。
「いつか生でウィーン・フィルの音を聴いてみたいな♩」
と思っていて。
それとは別ルートで、指揮者のグスターボ・ドゥダメルさんのことを知り、素敵な音楽を奏でる方だなぁ、と惹かれていたのです。
それで、
「もし、ドゥダメルさんの指揮でウィーン・フィルが演奏したら、最高だな♩」
と思っていたら――。2014年、本当にその組み合わせで来日公演が!
わぁーい♩
— もりはるひ (@haruhi_mori) May 1, 2014
9月のウィーン・フィル来日公演、先行販売の抽選当たった!!
念願の生ウィーン・フィル!!涙
念願の生ドゥダメル!!涙
ああー、楽しみーーー♡
しかも、わたしが行った日の演目は、一曲目が『ツァラトゥストラ』!!
これって、奇跡?♡
神様に仕組まれたとしか思えない!
ウィーン・フィル最高でした!!!
— もりはるひ (@haruhi_mori) September 22, 2014
ただ、ただ、美しかった!!
アンコールは、『アンネン・ポルカ』と『憂いもなく』。
ドゥダメルさんの指揮を観てると、こちらまでウキウキ♩
ウィーン・フィルに拍手を贈れる、このしあわせ。ああ、最高♡
本当にしあわせな出来事でした♩
余談はここまで。
・・・
本作の音楽ではこちらも有名な、ヨハン・シュトラウス2世の『美しく青きドナウ』。このシーンも美しい。
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上の画像ではわかりづらいかもしれませんが、宇宙船に太陽の光が当たって、陰影がくっきり写っているんですよね~!
徹底的な科学考証の賜物。(こちらについては後述します)
曲は、ウィーン・フィルのニュー・イヤー・コンサートより、フランツ・ウェルザー=メストさんの時の演奏をどうぞ♩
○ クラシック音楽★豆知識
ウィーン・フィルのニュー・イヤー・コンサートでは、アンコールで『美しく青きドナウ』を演奏するのが恒例。(それに続いて『ラデツキー行進曲』でラストを飾るのも、毎年の恒例♩)
面白いのは、
1)冒頭のフレーズが演奏される
2)客席が「待ってました」とばかりにどよめき、拍手を送る
3)指揮者が一旦演奏を止めて、お客様に新年のご挨拶を一言
4)続いて楽団員が一斉に "Prosit Neujahr!"(あけましておめでとう)
5)もう一度はじめから演奏が始まる
という流れがお約束になっていること。
とっても楽しいので、お正月にはぜひチェックしてみてくださいね!(日本では元日の夜に生放送されます)
・・・
そして、『2001年宇宙の旅』といえば リゲティ!
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月面でモノリスを見るシーン、不穏な感じがしてすごく印象的でした。
その他にも、キューブリック作品ではリゲティの曲が多く使われていて、『シャイニング』や『アイズ ワイド シャット』などにも登場。本作では4曲が使用されています。
寝る時に聴いたら、悪夢にうなされそうだなぁ……。笑
本作のために作られた音楽かと思ってしまうくらい、バッチリ映像とマッチしているのに、これが既存の曲だという驚き。
こちらは『アイズ ワイド シャット』より、リゲティの『ムジカ・リチェルカータ』(Musica Ricercata)。
この映画に、この曲を持ってくる――という、キューブリックのクラシック音楽の引き出しの豊富さには舌を巻きます。
圧倒的な映像美!!
前半でご紹介したトレーラーをご覧いただいた時点で、もう充分伝わっているかとは思いますが、キューブリックの作品は――
とにかくとにかく映像が美しい!!♡
もともと写真を撮るカメラマンだったキューブリック。さすがの美的センスです。また、彼はシンメトリー(左右対称)の構図を好んで使用することでも有名ですね。
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わたしの大好きなショット。ああ美しい!
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木星探査へ向かう宇宙船「ディスカバリー号」の船内。
ボーマン船長とプール飛行士。ここ、ドキドキしたなぁ~!
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モノリスと月。
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人工知能(AI)HAL 9000。無機質なダグラス・レインの「声」がまた良いんですよね。人間とお話できる AI なんて、50年後の「Siri」や「アレクサ」を予見しているようではないですか! 凄い!
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本作の重要なキーアイテムである「骨」。サルがヒトへの進化の過程で獲得した “道具” の象徴。この後のシーンへの繋がりが見事!!
わたしがキューブリックの才能に最初にノックダウンされたシーンです。まさに「やられた!」と思いました。
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フランス人デザイナー、オリヴィエ・ムルグによる「ジン」(Djinn)というシリーズの椅子。こちらのページで紹介されているグレーも素敵♩
モダンで、お洒落で、2020年の今見ても古臭さを全く感じません!
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この部屋もエレガントな設えで、すごく好き!
徹底的な科学考証に基づいた表現がスゴイ!
完璧主義者として知られるキューブリック。SF作品である本作を撮るにあたっては、多くの科学者や研究者が科学考証に参加しています。特殊撮影についても、大規模な特撮チームを編成して撮影。
だからこそ、本作の SF表現は “ちゃち” な感じや “作りモノっぽさ”(ウソっぽさ)が一切感じられないのですね。
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(極めてクオリティの高い)これが 1968年に作られていたのかと思うと、驚愕です!
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2020年現在の、SpaceX社の宇宙船や宇宙服(上の写真)と比べても、何ら遜色はありません。
同じ頃に作られた映画を例に挙げると『007は二度死ぬ』。こちらは1967年の作品で、ロケットなども登場しますが、いかにも “当時の人たちが考えた”「宇宙」「科学」「近未来」という感じ。
もちろん、決して 007の表現が安っぽいという意味ではなく、これが普通。『2001年宇宙の旅』のリアルさや、未来を見通した感覚がいかに傑出していたか、ということです。
・・・
わたしが「凄いなぁ」と思ったのは、宇宙空間を航行する宇宙船の外観。
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宇宙空間って、真空ですよね。地球の表面のような空気の層がないので、星も瞬かないし、影もくっきりハッキリ出るのです。
わたしは宇宙が大好きなので、ISS(国際宇宙ステーション)からの映像をよく見たりするのですが――
見て! 本当に日陰と日向のコントラストがハッキリしていて、『2001年宇宙の旅』そのまんまでしょ?! 遠近感もあんまりないのですよね。(なぜなら、空気遠近法がないから……!!)
・・・
それから、この無重力の表現!
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まだ CGのない時代に!!
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「どうやって撮ってるんだろう??」と不思議でたまりませんでした。
ポカーン……となる部分も含めて醍醐味!笑
本作は三部構成になっていて
○ 人類の夜明け(THE DAWN OF MAN)
○ 木星使節(JUPITER MISSION)
○ 木星 そして無限の宇宙の彼方へ(JUPITER AND BEYOND THE INFINITE)
という3つのチャプターが順番に展開してゆきます。
それでですね。コホン……(咳払い)。
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ラストの「木星 そして無限の宇宙の彼方へ」になると、
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たぶん初見では
( ゚д゚)ポカーン……
となると思います。わたしはなりました。笑
「おうちに帰るまでが遠足」であるように、「ポカーンとなるその体験」も含めて本作の醍醐味です!
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本当に傑作なので、ぜひ味わってみてください♩
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