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湯船

 10年前、ひとり暮らしを始めてからずっと私はシャワー派である。毎日湯船を洗うなんて面倒くさいし、水道料金がかかる。しかし歳をとるとあったかいお湯に浸かるのが恋しくなってくる。最近の私は日々の習慣が無くなってしまって、朝起きて顔を洗うことも、夜シャワーを浴びてから寝ることもできなくなった。シャワーを浴びることが楽しみになるように香り付きのボディソープを買ったら、好みの香りじゃなくて失敗した。習慣がなくなってしまったのなら、いっそのこと新しい習慣を作ろうと、最近は湯船に浸かるようにしている。これが結構良くて、お風呂なんて何のメリットもないと思っていたのが、湯船に浸かりたい、今日は無理でも明日入りたいと思うようになった。単純にやること(掃除など)が増えるので、しんどさもあるのだが、お湯になんとか浸かりたい気持ちで頑張れるのだ。

 湯船に浸かる時の楽しさの一つに入浴剤がある。私は固形タイプの入浴剤を手の上で溶かしながら入浴するのが好きだ。ジュワジュワと溶けている途中の入浴剤をお湯からあげると揚げ物のフライみたいにみえる。最近愛用している入浴剤は、丸くて黄色くて、串カツ田中の山芋串に似ている。居酒屋で出てくるカマンベールチーズフライのようにも見える。ひとりでにジュワジュワぱちぱちしているのがかわいい。その状態で匂いを嗅ごうとすると、香りが強すぎてウッとなる。目がしぱしぱしちゃう。だんだん小さくなっていく入浴剤を最後の最後まで潰さないように優しく握って楽しむのだ。

 最近バスボムデビューをして、なんて楽しいんだ!そして結構いい値段する!と思った。1つ500円するリッチな入浴剤。でもこれを持っていると、生活が彩られるのだ。「いつ使おうかな。バスボムを使いたいからなにかいいことをしよう。家事を頑張ろう。」とバスボムのために頑張れる。いつも心のどこかに私はバスボム持ってるもんねというお守りがある。その大切なお守りバスボムをついさっき使ってしまった。すぐ買いに行こう。今すぐ。今度は2個買おうかな。バスボムから出てきたマスコットをシャワーを浴びている間に湯船のふちに置いておくのもうれしく楽しい。キティちゃんが私が湯船に入るのを待ってる!シャワーを浴びている間に子供が湯船に浸かって待ってる親の気持ちって、こう言う気持ちなんだ。

 生活習慣が0になった私の新しい習慣。生活の中に楽しみがあるのは本当にいいことだ。仕事にも行っていない私の生活には、作ろうとしないとストレスも楽しみも何にもなくて、なんかめんどくさいし無でいいや、意識もいらないからずっと寝ていようって思う日もあるけど、ちょっとでも生活が成り立つように、柱見たいな楽しみを作っていきたい。

 今の私の柱は湯船に浸かること、たまごっち、友達との予定、太鼓を叩くこと、アニメやドラマ、ゲームなどである。私の暮らしを見守って支える、神様みたい。

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