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休みの日にはお家でスコーンを
雨が降っていた。土日のどちらかは、喫茶店に行ってふたりでパソコンを開きながら勉強するのが趣味だけれど、なんとなく外に出たくない気分だった。きっと、雨のせいだ。
だから、お家で喫茶店を開くことにした。パンケーキかスコーンか…。究極なふたつの選択を迫られて、迷った末に選んだのは、スコーンだった。旦那がスコーンを焼いてくれる。
ホットケーキミックスで作る簡単なものだけど、オーブンで焼いているときに、ふわっと広がる甘い香りがたまらなく好きだ。
スコーンを作る。そう決めたらもう行動が早い。作り方をわたしは知らないけれど、手が汚れないよう、キッチンパックで捏ねながら、「このくらいでいいかな」と適当に形を作って並べていく。カフェで見るようなきれいな形じゃないけれど、それが良い。それが好きだ。
スコーンを焼いている間に、わたしは珈琲を淹れる。インスタントだけど、お湯を注ぐとふわっと湯気が立って、それだけでホッ…とする。いつもなら普通の珈琲だけれど、スコーンがあるだけで、なんだか特別な味になる気がする。
チンッ。オーブンが、鳴った。できた…!!
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焼きたてのスコーンをふたりでほおばる。指先にじんわりと温もりが伝わるような熱々なスコーンなんて、お家でしか食べられない。
ひとくち噛むと、表面は軽くカリッと、でもすぐにほどけるように崩れる。内側はほろりとやわらかく、口の中でじんわりと広がる。ほんのり甘くて、紅茶の香りがふわりと鼻に抜ける。うん。やっぱり美味しい。しつこくなくて、素朴な味で、美味しい。
カフェで過ごす時間も素敵だけど、こうしておうちでのんびりする時間も、なにより贅沢で、なによりも幸せな気がする。
まだ余熱が残るオーブンに、スコーンの香りがふわりと残っている。休日の午後の、このちいさな幸せを、大事に味わいたいな。そんなことを思いながら、それぞれイヤホンをして、作業に移った。お互いが隣にいるけれど、喋る訳でもなく、スコーンを食べる時だけ顔を見合せて笑ったりする。
雨だからこそ、味わえたものがあった。
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