小さな集合体を飛び出して
by いのうえたいじろう(父)
今から30数年前、時代はバブル前の高度経済成長期であった。
国際情勢は冷戦構造でがんじがらめ。
こんな時代が永遠に続くかとそう思っていた時代である。
そんなある日、私はふとカレーを作ってみようと思った。
たまたま完成品が家族に好評で、それを期に家族のカレー担当に決まってしまったのである。
当時私がカレーを作ると妻は大喜びであった。
理由ははっきりとしている。
また、子供たちも「おいちいおいちい」と大喜びであった。
彼らの「おいしい」にはそれ以外の要素が含まれていることは明確であった。
まだ小学生前の子供にとって両親が楽しそうであれば十分満たされるのであって、カレーの味を客観的に評価しているとは到底思えなかったのである。
しかし、大きな時代の流れの中で「カレー」には、一番身近な集合体を幸せにするチカラがあったように思う。
「はるカレー」を始めて、私の作るカレーはこの小さな集合体を飛び出し旅に出た。
今日はどこの誰を和ませてくれているのだろうか・・。と、想像してみる。