「ドにわか」が送る、はじめましての感想文
はじめに
1月、2月に出逢ったはじめましての曲と、アーティストについて書きたい。
これから書く音楽について、私は「ドにわか」である。
初めてまともに曲を聴いてから約2ヶ月。好きの軽さを例えると、新しい味のブラックサンダーくらい。確かにおいしい! 好き! と思った。けれど、製造元の歴史を調べたり、チョコレートとクッキーの黄金比を勉強したり、ほかの味と比較したりは、していない。
そういう軽さで書く感想文を、許せる方だけ先に進んでください。ブラックサンダー抹茶味にハマっているためこのような婉曲表現になりました。
にわかだって、好きなもんは好きだ!
※『曲名』〈歌詞〉※
アーティストのお名前は敬称略で失礼します。
1.藤井風 『罪の香り』 『燃えよ』
きっかけ
実家で観ていました。紅白歌合戦。
普段何にもハマらない母が彼の出番を楽しみにしていて、まずそこに驚いた。本人の歌唱は初めて見る。それまではTikTokやCMで『きらり』を聞きかじり、『何なんw』とかいうそれこそ「何なんw」な曲名をおもろいなと思っていただけで、1曲もフルで聴いたことはなかった。
岡山県の実家からお送りするらしい。へー、岡山の人なんだ。え、何、もっさもさやな。スウェット?
弾き語りのキーボードと同時に、地底をすべらかに吹き抜けるような低音が、狭く薄暗い部屋から日本中に響く。ソファーに踏ん反りかえって余裕ぶんぶんぶっこいていた。この瞬間から、新たな世界に連れていかれるとも知らずに。
最初に抱いた感想は、「楽しそうやなこの人」だった。“生き生きと”の具現化。そして、手からキーボードが生えてんのかと思った。肩、肘、手首、指先、鍵盤、みたいな。藤井風という人間そのものが楽器だった。今ならわかる。この時点で、だいぶキていた。
ぽかーんと惚けて観ているうちに、気付いてしまったのだ。私、この人の顔めっちゃ好きだ。私の人生初めての推しはKis-My-Ft2の藤ヶ谷くんなんですよね。似てるとかではない。切れ長の目、高い鼻、色気を纏う表情、この三拍子に弱い。ブルドーザーを前にしたアリくらい弱い。力士と土俵に立ったホラーマンより弱い。ねぇ……なんかこの人危ない。思ったことがそのまま口に出ていた。母と妹に笑われる。「姉ちゃんが好きそうな顔しとるもん。」
特にここが好き 【音の運び】
音の運びが気持ちいい。
全曲聴き、わかった好きなところがこれだ。とにかく音の運びが好き。私は詞をきっかけに曲を好きになりやすいから、こんな感覚は初めてだった。顔も、好きだけど。ゆるいようで強い、大きく包み込むように紡がれた優しい詞も好きだけれど。何よりも「音」。
特に好きな曲は、1stアルバム収録の『罪の香り』。
あの前奏よ。『千と千尋の神隠し』の千尋が、朽ちた階段をダダダダダダ! と両手上げて駆け降りるシーン、あのイメージ。あんなに聴いていて気持ちが高揚する前奏は他にない。
〈怠惰がうるさい〉〈理性がしょぼい〉〈エゴはやかましい〉という、自分の脳にはない文法でハマっていく言葉のピースにもしびれる。サビの〈逆らい難い嫌な匂い〉でさりげなく韻を踏んでいるのもニクい。
もうひとつ、紅白歌合戦でサプライズ披露していた『燃えよ』。
〈明日なんか来ると思わずに、燃えよ〉に続く、〈クールなふり、もうええよ〉。メッセージ性の強い歌詞に潜む遊び心に、ふっと力が抜ける。抜けるから尚更〈燃えよ〉という意志が、ストン、とまっすぐ胸に伝わる。
そして最大に好きなところはやっぱり、音。サビの〈明日なんか〉と〈クールなふり〉、そして〈汗かいても〉は6音で同じような流れだけれど、微妙に3つとも音階が違う。これ。ここ。チョ〜好き。好きすぎてギャルになる。ラスサビの〈クールなふり〉ではまた音が変わっている。何もう……最高に楽しいやんけ。
異国の銅像みたいに凛々しく艶やかな風貌から発される、ゆる〜い気の抜けた雰囲気。彼が多くの人に愛される所以はここにもあるのだろう。
次はこれを聴く・観る
ニューアルバムが出ますね。えへ、楽しみ。
これだけ語っておいて、まだ『燃えよ』のライブ動画を観ていない。過去の弾き語り動画も観たことない。ぶっ飛ばされそうだ。勢いで書きまくってそれこそ燃え上がった状態で観ちゃったら、とうとう後戻りできなくなりそう。まぁいっか! 観てきまーす!(沼に沈む音)
2.梅田サイファー 『トラボルタカスタム ft. 鋼田テフロン(prod. BACHLOGIC)』
きっかけ
バズっていたTikTok。「よくわからんけど横向いて両手を交互にぐるぐる回してる人」の動画をやたら目にした。そうしたら本家が流れてきて、これか、と。
〈柔よく剛を制す発想 急所脳天狙うぞ〉が好き。
身動きを面白おかしく真似したり替え歌したりする動画に関しては、思うところもあるけれど、それこそドにわかの出る幕ではない。この動画の流行によって私は彼らを知ったから、出逢わせてくれたご縁に感謝です。
数年前にどっぷりハマったヒプノシスマイクが、私の中のラップのハードルを下げてくれた。数回聞いただけじゃわからなかった韻に気付いたときのあの、ぞわわ……!! って肌が沸き立つ感覚が好き。素人ながら楽しさを少し知っていたから、すぐ『トラボルタカスタム』THE FIRST TAKE ver.をダウンロードしてみた。
特にここが好き 【〈俺らマジで頑張る〉】
以来、運転中ずっと聴いている。全員で入る合いの手の気持ちよさや、一人ひとり異なる声質が飛び交う楽しさがもう、ウキャー! ってなる。どこから魔球が飛んでくるのかわからないワクワク感。ストレートに見えて実はナックルだったとわかったときの参りました感。高速道路で聴くと若干危ない。楽しいあまり体が揺れすぎる。
楽しく聴いていた。
それなのに、あるリリックが放たれた瞬間、ほろ……と涙がこぼれた。〈俺らマジで頑張る〉と聞こえた。涙? え? 何かに胸を掴まれてしまっておろおろした。YouTubeを観てみたら、テークエムという人のパートだとわかった。(梅田サイファーのオフィシャルサイトを見ても名前がよくわからなくて、YouTubeのコメント欄にあるリンクから探し出した。ありがとうコメント欄。)
↑ちょうどそのパートから始まるように設定したよ。サムネ真ん中の人。ちなみに私は最初、ビジュアルが一番目立つ彼が「梅田サイファー」という人なのかと思ってた。
〈俺らマジで頑張る〉の歌い方に、車から高速道路に振り落とされそうな感銘を受けた。声が裏返っている。合間の息継ぎまで聞こえてくる。一生懸命だなと痛いくらいに伝わってくる。んー、突然涙が出てきた理由を探そうとすればいろいろあるけれど、とにかくもう、本能が震えた。意味わからんくらいかっけえなと感じた。
ここから先は素人がただただ舌を巻くゾーンなのですが、11:00から続く〈通すこの一念〉〈東スポの一面〉、からの〈most wanted〉〈dope spot〉、とどめに〈遠くむこう5次元へ〉。いやいやいや、ええ〜? ってなった。頭の中にどんな引き出しがどうやって配置されてるのか見たい。思わず笑ってしまった。12:07の〈深海のシーン変えるために進化する人材〉もすごすぎる。
彼らの生き方、これまでの悔しさ、今後の決意、それらをこんなにも巧みな仕掛けと圧倒的なパワーで描き出す音楽。コレガ……ラップ……って今宇宙人の気分。
みんなでかます〈俺らはやる〉も一緒に叫んじゃう。車の中でにやにやノッている危険人物がいたら私です。
次はこれを聴く・観る
流れで同チャンネルのCreepy Nuts『かつて天才だった俺たちへ』も観た。〈粗探しが得意なお国柄 シカトでかまそうぜ金輪際〉の表情に危うく惚れかけたので観てください。観てるか。
新情報がわかっておらず、YouTubeの説明欄を見ていたら新曲のリンクがあった。すごいねぇ、こうやって人はずるずると沼に吸い込まれていくのだろうね。
『トラボルタカスタム』だけでも、わかっていない面白さがきっと山ほどある。ラップに関して知識不足だから、もう少し用語や歴史を勉強してみたい。
3.春野 『21』
きっかけ
Twitterをぼけーっと見ていると、音楽ライター・矢島由佳子さんのツイートが流れてきた。彼女の書く記事が好き。とはいえ、欠かさずチェックしていたわけではない。お昼休みではなく10分休憩だったらスクロールしていたと思う。たまたま読んでみた。それがきっかけだった。
突然だが、私は阿部真央が好きだ。曲に生き様そのものが現れているから。春野のインタビューを読み、音楽に人生を投影している姿勢が共通している予感がした。ゾクッとした。まだ、曲を聴いてもいないのに。
誰かのために生きられる人を尊敬するけれど、私は「自分がしたいからやっているだけ」というスタンスが好きだ。“誰かに何かを伝えたいわけではない”という言葉が、深く、くっきり刻まれた。曲を聴いてもいない、3分前に知ったばかりのアーティストの記事を最後まで読み込んでしまった。吸引力よ。
yamaとコラボした曲があるらしい。なんだと?
ドアを開ける、靴を脱ぐ、コートを脱ぐ、くらい自然な、そうすることが決まっていたかのような流れでダウンロードまでたどり着いた。
サビに倣って踊りたくなる軽快なリズム。平行線を走る高低の歌声が心地良い。ちょっと危険な世界に足を踏み入れてしまった。けれどドキドキする期待を無視できない。そんなお洒落な世界観。「オシャレ」より「お洒落」って感じ。好きです。
特にここが好き 【静けさ】 【一撃の詞】
リリースされた『25』全8曲を聴いた感想を書きたい。他の曲は未視聴です。現時点での、という前提で読んでいただけたら。
春野の音楽には、静けさがある。……と、思う。(弱気)
集中したいときは彼の曲をリピートする。「静か」なわけではなくて、そこに佇んで粛々と音を奏でる、余計な念は何も生まない「静けさ」がある。その静けさのなかにすっと一本、儚くもたしかな芯が通っている。
曲のもつ静けさに油断して、うっかり歌詞を聴き入ってしまうと大変なことになる。なった。
たった一文から想起させられる苦しさに、打ちのめされた。
大人ぶって仮面をかぶせ、奥底に仕舞い込んだじゅくじゅくとした感情を、突然心臓のど真ん中でむき出しにされた。忘れたい、本当は忘れたくない、大切で悔しくて苦い部分。
“「その人より」という比較で強くあろうと”する、という上記のインタビューを思い出した。私なら見て見ぬ振りをしたくなる心のもがき。そうだった。それを“表現の大きなモチベーション”だと語る人が、作った曲。だからこんなにも、感情が抉られるのかもしれない。
『Angels』に続く言葉にも惚れ惚れする。〈熱病に浮かされ吹き抜けてしまった理性〉とか、美しさで酔う。あと、思わず恋してしまいそうな歌声も好き。〈本当に 好きだよ〉という歌詞を聴くたびドギマギしてしまう。照。『Love Affair』もめちゃくちゃ好き。うん、止まらないからこの辺にしておこう。
次はこれを聴く・観る
“誰かに何かを伝えたいわけではない” という本人の言葉を読んだことで、自分のまま、曲の世界に身を委ねられる気がしている。もっと聴き込みたい。
“希死念慮的なところを自分のスタイルのひとつとして大切にしていた” と述べる過去の作品にもとても興味がある。偶然なのか、運命なのか、出逢わせてくれた記事に大きな感謝を。ありがとうございます。(拝)
もう一回貼っておくね。
4.milet 『Ordinary days』
きっかけ
仕事の移動時間は、97%の割合で音楽を聴いている。しかしその日はラジオをつけた。気まぐれの3%。miletが、ステレオの中で歌っていた。
仙台でライブをするという。その日の予定はない。ちらっとチケットを見てみると、見切れる可能性のある席ならばまだ残っていた。行ってみようかな。
私にとってmiletは、『inside you』や『us』など、テレビ披露された曲をいくつか知っているレベルの認識だった。行こうと思ったのは、彼女の曲の中で一番好きな、『Ordinary days』を生で聴いてみたかったからだ。
なぜ『Ordinary days』を好きになったかというと、歌詞が、私の推しへの思い、そのまんまだったからである。改めて書くと恥ずかしい。
このファンレター私が書いたっけ? と思った。隣じゃなくていい。願いが叶ってほしい。泣きたいときに泣いてほしい。そう、そうなの……。miletの曲を聴きながら推しを思い浮かべて涙ぐむ。そんな大変気持ちわるく少々失礼な行為を、ライブという最高の場で味わうべく、会場へと向かったのである。
特にここが好き 【詞の本当の意味】
印象的だったのは、光の演出だ。
オープニングで会場が赤、青、緑の三原色に包まれたときの、宇宙映画の世界に入り込んだような臨場感を忘れられない。音楽のライブでもあり、映像作品でもあった。一般販売で購入した2階席の端っこ。それは、客席を含めた会場全体の演出を知れる特等席だったのだ。
最初に観たのが『inside you』だったこともあり、miletに対して精悍かつクールな印象を抱いていた。だから、トークでうふふ〜、変なの〜、と笑うかわいらしい姿に良い意味で驚いた。イントロが流れると、一瞬で纏う空気が変わる。鳥肌が立った。ギャップで風邪ひいた。
楽しみにしていた『Ordinary days』もまた、印象ががらりと変わった。
これは愛をもらう歌だった。陽だまりのなかで、抱えきれない花束を渡されるような。
miletが、miletを愛するファンたちへ贈る、あたたかく壮大なラブレター。
コメントを読んでから聴くと、より意味が響いてくる。
私が「推しへの歌だ!」と勝手に思ったものは、実はファンへ向けた大きな愛だった。それに気づいて、ぼろぼろと泣いてしまった。miletのファンの人たち、めちゃくちゃ幸せだろうな。こんなの、まごうことなき両想いではないか。
両手を掲げて大きな拍手を送る、愛を贈られた人々の姿も、曲をやさしく彩る花の一部となっていた。今日ここへ来てよかった。出逢えてよかった。あの日の気まぐれの3%と、milet、そして会場全てに、心から感謝した。
この曲はぜひTHE FIRST TAKEを観てほしい。ラストの彼女の視線、泣きます。
+++
実はもうひとつ、ライブで初めて聴いて、その瞬間に好きになった曲がある。当日に向けて最新アルバム『visions』ばかりを聴いていた私は、3月9日リリースの新曲『Flare』の視聴をすっかり忘れていた。
サビで爆発的に熱量が高まる曲が好きだ。まさにこれがそう。
〈一番に光れ〉という言葉のもと、miletが高らかに人差し指を天に掲げる。1階席頭上に浮く無数の指。みんなが力強く、まっすぐ指した先には、金色とオレンジ色の華々しい光が満ちていた。miletの重厚感のある歌声と、曲の振りと、会場の光線。それらがひとつに集まった瞬間を見た。希望とは、このことではないかと思った。
次はこれを聴く・観る
おもしろそうなプレイリストがあったからこれを聴いてみる。普段洋楽はあまり聴かないけれども。またここにも出逢いがあるかもしれない。あー、楽しい。
おわりに
熱意が気持ちわるめの厄介オタクとして生きている私は、それについて少ししか知らない状態で「好き」を語るのに抵抗があった。今もある。とか言いつつ8000字書いたのだけど。
気づいたことがひとつある。
アーティストの歴史を知ったり、曲ができた背景を知ったり、過去の曲との変化を比較したりすることは、見え方聞こえ方に深みを生む。この人が歌うから詞が余計に響く、とか、この曲はもしかしてあれのアンサーソングなんじゃない!? とか。知ることで、感動や「好き」は何層にも厚くなる。パイの実のように。
反対に、少ししか知らない状態で好きだと思える音楽は、考察の余地がない分、曲そのものの魅力を最も味わえているのではないだろうか。真っ白なキャンバスが、そこに落としたただ一色だけを濁りなく綺麗に映し出すように。「よくわからんけど好き」「なぜか好き」を、私はもっと大事にしていきたい。
知っているから理解できる、深い部分の面白さ。
知らないから味わえる、そのものの良さ。
欲張って両方! と言いたいところだけど、難しいからこそ、どちらも尊い。
一見さんには気付けない仕掛けに悶えられるようになりたいし、まっさらな状態で自分の感性だけにしたがって感動したい。どのみち楽しいんだ。最高じゃないか。
「好き」の気持ちと出逢いへの感謝と、アーティストと音楽への敬意を込めて書きました。でも、私にとっての褒め言葉が万人共通の褒め言葉とは限らないから、もし読んでくださった上記アーティストのファンの方に、不快な思いをさせてしまっていたらごめんなさい。
今日書いた4組に関して、的外れなところや、「何にも魅力わかってねーな!」なところがあると思う。でもはじめましての私はこのように聴いた。どれも最高の出逢いだった。これから深く知っていく上で「何もわかってなかったわ! ワロタ!」となったらそれはそれでおもろい。魅力も深まる。そのときはまた「すんません何もわかってなかったッスわ!」て書きます。
さ! 各章の「これから」を観てきまーす! 来月も出逢ったら書く!
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