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芥川龍之介『悪魔』を紐解く|#コルクラボ文化祭

2019年11月9日、コルクラボ文化祭にて。
想像以上に、面白く好奇心そそられる時間だった。
もともと高校で国語(高校は国語といっても、現代文、古文、漢文と種類がある...!)で教鞭をとられていた並木先生による、物語を面白く読む「こくごのじゅぎょう」。

題材は、芥川龍之介『悪魔』。先生曰く、とてもマイナーな作品らしく、A4用紙2枚ですっぽり収まってしまうほどの短編。だけど、そこにあったのは幾重にも構造が張り巡らされた、ストーリーだった。

※以下のサイトで、全文が読めるみたい。メモ。
‐ 青空文庫 『悪魔』

‐ 明かりの本
こちらのサイトには、色々と興味深い小説の名前がずらずらある...!読みたいメモ。”永久に不愉快な二重生活 芥川龍之介” ”メールストロムの旋渦 エドガー・アラン・ポー”とか・・・めちゃめちゃ好き。。。


さてさて、本題に戻りまして。

教室の入り口、黒板消しを挟んで、先生を待ちます。笑 (このいたずら、あるあるだよね・・・笑 誰が最初に始めたんだろかw

日直の号令で、「きりーつ、れい!・・・ちゃくせき!」
授業開始です。(楽しい)

ちなみに黒板消しのいたずらは、先生の目の前で仕掛けてたので特に何事もなく 笑


結論からいうと、
おもしろく読む=物語の構造を理解する、というのが肝とのこと。(詳しくは後述)
おもしろい、という感情を理論立てて説明する感じがまた興味深く、不思議な高揚感があった。

先生曰く、物語の解釈はひとつではないそうだし、私の感じたことが正しいとも言い切れないのだけれど、「じゅぎょう」での自分のメモをここに。


伴天連であるうるがん、私の中ではもはやザビエル。

この絵は、三段構造の世界を示したつもり。
①うるがん・信長(悪魔)・姫『悪魔)の織りなす物語

②うるがんの物語を伝える古写本(を読む老人 ← 白髭を蓄えたなぜか西洋風おじいさんになってしまった)

③『悪魔』という作品を作り上げた、芥川龍之介自身


物語の最後、
「うるがんよ。悪魔と共に我々を憐れんでくれ。我々にも亦それと同じやうな悲しさがある。」
この一節が、物語から独立して、作者・芥川の真意のように感じてしまう。一度そう感じたら、それのほかにとらえられなくなってしまって、③部分に芥川自身を据えた、というわけです。


家族構成とか色々比べてみたら楽しそう... というメモもチラリ。


『悪魔』を読んで、唐突にポルノグラフィティの『カルマの坂』が浮かんだ。旅人がとある街、とある少女に出会い、とある行動に出て、そしてまた去っていく物語。『鋼の錬金術師』レト教の話もこのパターン。(詳しくはGoogle先生に聞く or  ポルノ聴いて!& ハガレン1巻読んで!)

物語とかって、このパターンが昔からよくある気がしてて。そして、旅人は、どこまでも中立な存在として描かれて、街の人々と”本当の意味”では交わらない。その街に、空気に染まっていないから。

うるがんも、そういう中立な存在・客観的な視点のために作り出された存在なのでは?と思う。
信長と対立的であり、でも庇護もされる関係となり、
はたまた、悪に魅入られたらしい姫と向き合ったりと、それは「ばてれん」という異の存在であるうるがんだからできること?うるがんには、信長も、姫も、結局は同じように映って見える?
うるがんの置かれた立場、役割が気になってくる。またちょっと話題はずれるけど、信長が歴史的にみて(一応)キリスト教を受け入れたという史実。戦略的な意図はありはするけれど、その判断を下すってすごいよね・・・新しいもの取り入れるって、そりゃ反発くらうよね。(話題逸れる)


さて、ここで冒頭に書いた物語の構造について。
構造を知ることで何が楽しい?その問いに対して、以下の答えが挙げられている。

・物語の骨格やポイントを抽出して、シンプルに考えることができる
・物語の構造化=物語を一般化・抽象化してみること
- おもしろさ」「テーマ」を言語化できる
・他の物語や、物語ができた時代の文化と、構造を比較することができる
- その物語のもつ意味が、時代・文化・人間の普遍性の中で考えられる。

先生は、いくつかある、ものがたりの型について説明をしてくれた。
(一部、個人的なメモ含む)


①原質神話
例として、イザナギ・イザナミの話。
イニシエーション(=ある集団の中での儀式を意味する)という言葉に、なんだか懐かしさが。構造論からそれるけれど、いわゆる「ケガレ」とか、『つるの恩返し』的な”見るなの禁忌”の根本がこの物語だと思っている。(そしてイザナギ逃げ帰るのひどいだろ、、とかちょっと思ってしまう)

②行きて帰りし物語
「あちら側」と「こちら側」。映画・漫画ともに、この構造は分かりやすい。大好きな『千と千尋の神隠し』とか。個人的にその作品とモチーフが似ていると思う『君の名は。』も。
(両作品も、名前を呼ばれることがキーワードであったり、忘れる・覚えている、そういう互いの感覚値が物語を作っている。両作品ともに、日本アニメのNo.1、No.2を争う作品だと思うのだけれど、実はこの物語構造や、設定が特にこの国に受け入れやすく、創作意欲がわくモチーフなのかも)

関連して、昔ツイートした記事を。

こんなとこにも、青山剛昌先生の例をだしてる... 笑


あとね、このモチーフとして忘れちゃならんのが『ベイカー街の亡霊』ですよ・・・・ノアズ・アーク・・・(大好きすぎる)


ちなみに、映画公開当時、脚本家・野沢尚氏の記事...!(はい、大好きすぎるんです


③二項対立
光と闇、神と人、内と外、など。『進撃の巨人』おもしろいよね。マーレとエルディアの話が深堀されるようになったあたりから、本当に面白い。(また話それた)

④異界構造
境界から向こうは、異世界。『犬夜叉』の古井戸とかまさにコレだよね。『千と千尋の神隠し』は、トンネル。そして帰りは、川・・・(ハクと千尋の別れのシーン、二人の手のアップから千尋が去り、ハクの手だけ残るシーン、好きすぎてツライ)

※ こちらの画像はネット上より拝借いたしました


構造に関する説明、個々人での物語の解釈、グループワークを経て、最後に先生から物語の構造解説。ただし、この解釈が全てではないということ。(見聞きしたことをまとめたつもりだけれど、一部自分の解釈も少なからず入っている。)
うるがん=「堕落していない存在」
他の人が見えないようなものは実は見えてなかったのでは?(要は、部外者の視点、ということ)
姫はまだ堕落していないだけであって、その綺麗なものを堕落させたくない、けれど堕落させてしまいたい、きれいだからこそ閉じ込めておきたい、壊してしまいたい、、、
そんな相反する想いを、うるがんという部外者を登場させることで、表現したー・・・・
キリスト教 - 悪魔
この二項対立を壊す存在、堕落しない、唯一の存在 うるがん・・・


ここで、「二項対立」が出てくるのか。
先生によれば、構造を解き開かす際、登場人物を「敵」「味方」で分類してみたり、対立するであろうワードを書き出すのもひとつ、と言われていた。
たとえば、こんなかんじに。


確かに、ワードを拾うだけでグッと物語と近くなれる。

今回、久しぶりの芥川作品、しかも初めての作品を読んだのだけれど、もっとこの感覚を味わいたい欲求が出てきて。さっそく、こんな本を借りてきた。

芥川龍之介『奉教人の死』
‐ 芥川は殉教者の心情や、東西の異質な文化の接触と融和という課題に興味を覚え、近代日本文学に”切支丹物”という新分野を開拓した ——

『悪魔』、うるがんに触れたからこそ、今から読むのがたのしみ。




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