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記憶の地層

キックが得意な少年がいる。絵を描くのが得意な少女がいる。私たちは忘れる。多くのことを忘れる。底なしの沼のような深い沼に記憶を捨てる。ある男が沼で釣りをする。何かよくわからないものが釣れる。釣れたものがその後どうなるのか私は知らない。沼の泥は時々溢れ出す。びしょびしょでぐしょぐしょになる。歩くのもままならない。そこに覆いかぶさるように雨が降る。太陽が地面を照らす。地面が乾く。沼の周りの地面はそれらを繰り返し高くなる。沼の底は変わらない。立つ場所が高くなって見える景色はいい。キックが得意な少年と絵を描くのが得意な少女を今はもう見かけない。

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