ギリシャ神話の話2 ティタノマキア
前文
ギリシャ神話の世界では神クラスの戦争が二度ありました。
その一つ目は第二世代のティタン神族と第三世代オリュンポス十二神たちとの戦争を描いた『ティタノマキア』です。
クロノスの王位簒奪
元々ティタン神族の長であったクロノスは父であるウラノスの男性器を自慢の草刈り用鎌で切り飛ばして、王位を奪い取りました。
その際ウラノスは自らの股間を押さえ涙目でクロノス指しながら
「お前もお前の子供に王位奪われるんだからな!」
と呪いの言葉を吐きました。
呪いの言葉
王位を奪った後のウラノスの治世はとても穏やかなものでしたが、心の片隅には常に父の言葉が残っていました。
「いつか自分の子に王位を奪われる」
その言葉に不安がよぎり、クロノスはなかなか王位を満喫することが出来ません。
やがて妻のレアーに言われます。
「あなた、子供が出来たの」
クロノスはその喜びの言葉も悪夢の始まりになるのではないかと、言葉飲み込むことがなかなかできませんでした。
産まれるまでの間、苦悶の日が続きます。そして気付いたのです。
「子供産まれたら飲み込めばいいんだ!」
唐突過ぎてちょっと何言ってるか分かりませんが、クロノス本人は得心を得たようです。
意気揚々と過ごせたこの時代は永遠に春が続き、果実が年間を通して実りました。争いも無く、貧富の差もないこの時代は『黄金時代』と呼ばれました。
我が子を喰らう
やがてレアーは出産します。
「あなた!私たちの子よ!抱いてあげて」
と渡した瞬間ウラノスは生まれたばかりの子供を飲み込んでしまいました。
みんなビックリ、妻のレアーもビックリ。クロノスは一人喜び
「これで俺ずっと王様じゃん!!」
ヤバイ王の誕生です。
子どもに対してだけサイコパス。
そしてその後も子供が産まれるたびにクロノスは王位を奪われてはかなわんと子供を食べ続けました。ですがさすがにお腹を痛めて生んだレアーはも六回目にして堪忍袋の緒が切れました。
六人目の子供は庭で生み、部屋に戻る際に石を手に取り、それをクロノスに「産まれた子供よ」と言って渡しました。
赤子と石の取り換え作戦にすっかり騙されたクロノスは当然のように石を飲み込んだクロノスを見てほくそ笑むレアーの顔が浮かびます。
兄弟姉妹の救出
無事産まれることができた子はゼウスと名付けられ、クレタ島で牝の山羊に育てられました。
やがてゼウスが成長すると飲み込まれてしまった自分の兄弟姉妹たちを助けるために、どうしたもんかと悩みました。
悩んだときはおばあちゃんの知恵袋を頼ろう、ということで祖母のガイアのもとへ。
「ばあちゃん!親父が食べたの吐き出させたいんだけど!」
「腹殴れ」
ガイアは脳筋でした。
さすがにそれだけじゃと思い、知恵の神メティスに相談することに
「それならあーしが酒飲ませるから、酔ったところを襲えばいいんじゃね?」
ガイアよりは具体的だと思い、メティスの案を頼ることにしたゼウス。
作戦決行日、父クロノスが神の酒ネクタルで酔っ払ったすきにゼウスは物陰から飛び出しガイア直伝必殺の腹パンを何度もクロノスに叩き込みました。
ゼウスが腹パンをするたびにクロノスは子供を吐き出していき、とうとう六人の兄弟姉妹が揃いました。
ゼウスのあまりのヤンキーっぷりを恐れたティタン神族は王座を捨て逃げていきます。
*嘔吐薬を酒に混ぜた説のが主流だけど、腹パン説のが楽しい。
決戦はテッサリア
ゼウスは原初神のエロスパワーで自分の兄弟姉妹と子供を作り、玉座を確固たるものとすべく力を付けていきました。
ティタン神族も奪われた王位を取り戻そうと力をつけ、やがてゼウス軍団に挑みました。
その際ゼウス軍団はオリュンポス山に陣取り、ティタン神族はオトリュス山に陣張りを行いました。
平原を挟んで両軍団の戦いは始まります。
決戦と言うべく死闘が毎日毎日繰り広げられ、一進一退の攻防が続きます。
あるとき激しい闘いの最中に相対する相手と顔を見合わせ、ふと気付きました。
「あれ?今戦ってるコイツ昨日殺したやつじゃね?」
そうです。どちらの軍団も神なので不死の存在であり、殺しても次の日には復活するので文字通り一進一退となり、そしてそんな泥仕合が10年続いていました。
決め手に欠けることに気付いたゼウス軍団は孫可愛い期全盛だった祖母のガイアにまたも相談をしました。
誰でも孫は可愛い
ゼウスは祖母のガイアに尋ねました。
「ばあちゃん、戦争に勝てん。どげんしたらいい?」
そうするとガイアはこう答えました。
「あんたの叔父のヘカトンケイル三兄弟と一つ目巨人のキュクロプスがタルタロスにおる。味方につけろ。そして全てを破壊しろ」
と助言をもらいました。
脳筋を越えて破壊神みたいなこと言ってるガイアを横目に、助言に従い奈落にあるタルタロスから叔父達を救い出すと、叔父達はティタン神族との戦いに協力を申し出てくれました。
ヘカトンケイル達はオリュンポス軍のトップ3にそれぞれ武具を与え、そして新たな力を携えたゼウス軍とティタン神族の最終決戦が始まりました。
最終決戦
ヘカトンケイルからもらった新たな武具はまさにチート性能と呼ぶべき能力でした。
ゼウスは『雷霆』で天地を揺るがし焦がしつくし全てを破壊し、
ポセイドンは海と大地を支配する『三叉の矛』を大波と地震を起こし、
ハデスは姿を隠せる『兜』で敵の武器を隠しました。
ハデスだけオチ担当です。
主人公PTで三番手四番手が旅の道中主人公PTを裏切り敵につくが、その敵にも役立たずと切り捨てられ「俺だって、主人公なんだ、俺・・・だって・・・」と辞世の句を残すポジションの人がやる役回りです。
強大な力を持ったゼウスとポセイドン(とハデス)の力によって均衡は崩れ、そしてティタン神族はとうとうタルタロスの奥深くに封じ込められ、ゼウス軍団が勝利しました。
オリュンポス十二神の誕生
ゼウスはオリュンポス山で勝利したことを祝い、自らの軍団を『オリュンポス十二神』と名乗りました。(ハデスは入らない)
そしてクロノス治世の『黄金時代』は終わり、世は『白銀の時代』を迎えます。
この10年に渡る戦争を『ティタノマキア』と呼びます。
ハデス可哀想。
あとがき
ウラノスから始まり、その王位を惨劇とともに奪い取ったクロノス。
しかしその治世は永遠となることはなく、親子三代に渡り争いあいゼウスへと移っていきました。
ゼウスは兄弟、姉妹、そして家族とともに力を合わせることで強大な相手でも討ち果たすことができることを証明していきました。
一方人間たちは神同士が争いあうさまを見て、争うことを覚えてしまいます。
ティタノマキアを経てここからの時代は争いなど無縁の黄金の時代から、怠惰な白銀の時代を迎え、そして青銅の時代へ移り変わります。
青銅の時代は別名『英雄の時代』とも呼ばれ、世界中で争いあう人間たちが現れ各地に英雄と呼ばれる人達が現れます。
オリュンポス十二神は青銅の時代でさらなる強敵と争うことになるのですが、それはまた次回『ギガントマキア』で書くことにします。