ギリシャ神話の話3 ギガントマキア5
捜索
「こりゃあ一体なにが・・・」
南方に逃げていたヘルメスとパンは、ゼウスの戦いの結末を見るためにギリシャに戻って来ていた。
そこでは地平は焼き尽くされ海はところどころ蒸発し抉れ、雄大にそびえていた山々は瓦礫が積まれたかのように朽ち果てていた。
「あんなに綺麗だったこの地がここまで果てるとは・・・」
ところどころ言葉に詰まりながら、パンは見るも無残な大地を前に嘆いた。
この分だとゼウスの命も・・・と二柱は思ったが口には出せなかった。
「いいや!親父は生きてるハズ!あんなにスケベな神がベッドの上以外で死ぬはずがない!!」
少しでも事実であるように願う声は、叫びのように山々にこだました。
ーーーガララッ
遠くの方で岩の崩れる音が聞こえた。
ヘルメスの叫びによって崩れたのか、それとも・・・ヘルメスとパンは互いに顔を見合わせ音のする方に向かった。
パンのパニック作戦
岩が無造作に積まれたようななかに洞穴のようなものが見える。
ヘルメスはなるべく音を立てないよう気配を殺し、そっと洞穴の中を覗き込む。
そこでは鎖に繋がれた父ゼウスの姿と、下半身が竜となっている怪物デルピュネの姿があった。
父を見つけた喜びに一瞬浮かれるが、鎖に繋がれうなだれた父の姿に息をのむ。
チラリと傍らのパンを見たヘルメスは
「こんなことならアレスかヘラクレス連れてくればよかった」
とボソリと呟く。
「なんスか!?あっしじゃ頼りないって言うんスか!?」
「いやそういうわけじゃねーけども・・・」
「それ以外にさっきの「チラッ」て見る意味ないスよね!?」
「だってデルピュネめちゃ強そうだし」
「いいッスよ!そしたらあっしがゼウスおじいちゃん助けますよ!」
そういうとパンは立ち上がり身支度を始めた。
パンは「フンッ」と掛け声をかけると、全身山羊の姿となりヘルメスに振り返って
「メー、この姿でアイツを引き寄せるんでその間におじいちゃん頼みますメー」
パンはそういうとトコトコと洞穴を進んでいきデルピュネの前に姿を現した。
山羊と空腹の竜
デルピュネは上半身は女性の姿で下半身は竜の姿をしている半身半獣の怪物だ。
口元は人間なので食べ物は人間と同じものを食べる。
テュポーンの命令で重たいゼウスをかついで洞窟に入ったはいいものの、見張っている間の食料のことを考えるのを忘れていた。
そして朝ごはんも食べずに呼びだされたので丸一日兄も食べていない空腹状態だった。
そんななか目の前には丸々太った山羊が一頭。
空腹に耐えかねたデルピュネはゴクリと生つばを飲み込み、山羊を捕まえようと飛び掛かった。
これに驚いたのは山羊に化けたパン。
父ヘルメスに啖呵を切ったものの、まさかこんなに決死の形相で飛び掛かってくるとは露にも思わず、思わず立ち上がり逃げだした。
力なきゼウス
パンとデルピュネが洞窟を出た隙に、ヘルメスは洞窟に飛び込んだ。
「親父!」
と声をかけるとゼウスは力なく目だけを動かしヘルメスの方に向ける。
「早く復活してテュポーンにリベンジしてやろうぜ!」
ヘルメスは少しでも励まそうとするがゼウスは力なく首を振るだけであった。
「私には、もう、なにもないんだ・・・」
力なくつぶやくゼウスをなんとか元気づけようと
「そういうなって!早くあんな怪物倒して、また可愛いお姉ちゃんとレッツパーリーしないとだろ!?」
「私にはもう無理だ・・・」
そっと目を閉じゼウスは続けて答えた
「私にはもうあれがついてないんだ・・・!」
なにをばかなことを、とヘルメスが笑い飛ばそうと視線を落とすと、ゼウスが男性の象徴を切り取られているのを理解した。
「マジかよ・・・」
ヘルメスは言葉を失い、熊皮のクッションの上に腰を落とし手で顔を覆った。
眉間に皺を寄せどうにかならんものかと思索を巡らせてると、自身の尻の下に違和感を感じる。
「こいつはいったい・・・もしかして!」
熊皮のクッションをひっくり返すと、ボトッと音を立てて転がるゼウスの男根がそこにはあった。
「親父!あったよ!親父のアレ!」
「なにっ!?」
うなだれていた顔を上げ眉を吊り上げヘルメスの掲げた先の男根を見つめるゼウス。
「わああああああああああああああああああああ!!!」
突如叫び声が響き渡る洞窟。この声はパンの声だ、と声の先を見つめると短距離ランナーのように全力で走る山羊と、それを追うフォークとナイフを持った半身半獣の怪物の姿があった。
パンが逃げながらまた戻ってきたしまったのか、と気づいたヘルメスは
「親父ィ!こいつで、元に、戻れェェェ!!!」
と父の男根を元々あった場所目掛け投げつけた。
復活のZ
辺りは目も開けられぬほどまばゆい光に包まれた。
眩しさにヘルメスもパンもデルピュネでさえもうっすらと目を開けることしかできなかった。
薄めで光を見つめるとその光の中心には血色よく張りのある肉体のゼウスが満面の笑みで佇んでいた。
「完・全・復・活!!」
そうゼウスが言うと自身を繋ぎとめていた鎖を勢い良くちぎった。
「親父!」
「おじいちゃん!」
ヘルメスとパンはゼウスに駆け寄り抱擁を交わす。デルピュネはどうして良いかわからず、その場からナイフとフォークを放り出し逃げ出した。
ゼウスは高笑いしパンは解放された恐怖から安心し涙を流した。ひとしきり喜びを分かち合った後、ヘルメスはゼウスに尋ねた。
「んで、テュポーンどうすんの?」
ゼウスはニヤリと笑うとヘルメスの肩をバシバシと叩き
「今度こそ勝てる、MP回復したしな」
頼もしい父のそして祖父の一言にパンとヘルメスもニヤリと笑った。
後書き
なんで
これだけの内容で2000字越えんねんっていう。
話を膨らますの大好きだからなんとかなったけども、『騙して』だけって読者の想像頼りがずるい。
私が編集なら「ボツ」っていうレベル。
そろそろ最終決戦も近い。
ここまで来たら頑張って書き上げるわ、明日か、明後日か、そのうち・・・