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【長男と三つ子育児実体験】エピソード3〜長男が産まれた日〜


予想だにしていたなかった突然の帝王切開。
理解が追いつかず一瞬時が止まったようでした。


今すぐ手術をしなければ
この子は命を落としてしまう。
まだお腹の中の世界しか知らないのに。
あれだけ悩んで産む決意をしたのに。
10ヶ月間、命を育んできたのに!

当たり前のように選択の余地などありません。
私は看護師さんに言われるがまま
手術の同意書にサインしました。

帝王切開なんて、病気で手術を受けるわけじゃないし
世界中に帝王切開で出産して
普通に生活してる人なんて山ほどおるやん。


妊娠前の自分ならそんな風に思っていたことでしょう。
でもいざ今から自分が体験するとなると
ものすごい恐怖でした。


手術の説明を受けながら
同時に看護師さんが着々と準備を進めます。

帝王切開では全身麻酔をするので
術後もしばらくは麻酔が効いた状態で動けなくなるため
あらかじめ背中に薬を送るチューブや、
点滴、尿管にもチューブなどを取り付けられました。

当たり前ですが初めての経験で、
怖いし痛いしこの時点ですでに辛かったです。

そして手術着を着て手術台の上に乗ります。

私の通院していた病院はけっこう古かったのですが
先生や看護師さん達はとてもあたたかく優しい方ばかりでした。

でも設備はどうしても古めで、手術台もステンレスの台のようなシンプルなもので、本当に今から捌かれる魚のような気持ちでした…。

そんな手術台に乗るとすぐに手術が始まりました。
まずはあらかじめ背中に取り付けられていたチューブから、全身麻酔が打たれます。

人生で初めての麻酔。
最初だけチクっと痛みましたが、
その後は麻酔が効いて感覚がなくなります。

初めて経験したそれは確かに痛みは感じないけど
自分の身体が動かせない、
なんとも気持ち悪い感じでした。

麻酔が回るとすぐ切開が始まります。
帝王切開は、赤ちゃんが出てくるまでは早いです。
痛みはないけど、引っ張られたり
少し動かされている感じはわかります。

そんな状態で手術が始まって10分ほど経つと
先生が『もう赤ちゃん出るよ!』と。

え?もう!?思ってたよりかなり早い!
もう産まれるんや、もうすぐ会えるんや…!
そんな風にドキドキしていると
おぎゃー!おぎゃー!と元気な声が聞こえました。

助産師さんが私の顔の横に
赤ちゃんを連れて来てくれて言いました。


『元気な男の子ですよ、
 ちゃんと生きて産まれてくれましたよ!』



初めて我が子と対面して、
何かの糸が切れたように勝手に涙が溢れました。


緊急帝王切開と聞いて、選択の余地はないし
私はもうお母さんになるんやから!と思って
強がって気丈に振る舞っていたつもりでしたが
内心やっぱりめちゃくちゃ怖かった。

生きて産まれてくれるのか、
手術は成功するのか、
この出産が終わったあと、
私もお腹の子も無事でいられるのか…

短時間で目まぐるしく状況が変わっていく中
着いていくのに必死で感情が置き去りになってたけど
本当はそんな大きな不安に押しつぶされそうでした。

無事産声をあげて産まれて来た我が子は、
顔も身体も少し青白くて、
ああ、お腹の中、苦しかったんやな。
それでも生きて産まれてくれたんやな。
力強く泣いている我が子の姿を見て
とにかく安堵しました。


その後助産師さんが産まれたての息子を
別の部屋に連れて行って
身体を拭いたり、ケアをしてくれました。

私はまだ縫合が残っているので手術台の上です。
ここから手術がすべて終わるまでが、
とてつもなく長く感じました。
体感としては5時間くらいに感じましたが、
実際は2時間ほどで終わったと思います。

術後、タンカーで病室まで運ばれます。
手術室の前では夫、両親が待っていてくれて
私は運ばれながら無事終わった事を伝えました。


彼が産まれたこの日は、その年の母の日でした。
生涯忘れることのできない母の日となりました。


帝王切開だろうが、自然分娩だろうが、
出産は命懸け。母親も、赤ちゃんも。

偉そうな事は言えませんが
私自身も、今これを読んでくださっている皆さんも、
すべての人に共通して言える事ですが、
今普通に飯食って働いて生きていられるのは
母親が命懸けでこの世に産んでくれたからです。


自分が実際経験する事で、
世界中の歴史上のすべての出産には
きっとドラマがつまっているんだろうなぁ、
そんな風に思うようになりました。

ひとまず無事出産を終えることができましたが、
ここはまだまだスタート地点。

私はこのあと、
産後の大変さを経験することになるのです。


次回、エピソード4〜壮絶な産後〜


↓エピソード2〜20歳での妊娠生活〜↓

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