アバウトなはかり
私は、料理を作るのが
特に上手でも、特に下手でもない。
だいたいいつも、食べたいと思ったものを
自分のお腹を満足させるくらいのレベルには、
作ることが出来ているような感じだ。
今はそんな感じなのだけれど、
まだろくに料理を作ったことが
なかった頃、母のそばについて
作り方を教わっていたことがある。
料理上手で、どちらかというと
感覚派である母の作る料理は、
いつも全て目分量で作られていた。
また使う調味料も、毎回少しずつ
違ったりするので、見て真似はすれど、
なかなか同じようには作ることができなかった。
そんな時に母に
「材料を測って数字で教えて欲しい」
と伝えたところ、母からもらったのが
冒頭の写真のはかりだ。
実はこのはかり、
まったく正確に測ることができない。
実物を見せながらでないと、
なんとも説明がし難いのだが、
はかりの目盛りがすごく軽い力で
簡単にくるりと回ってしまう。
そのため、測っている途中に
目盛り部分に軽く触れてしまうと、
それがいったい何グラムなのか
わからなくなるのだ。
しかも、見る角度がすこし変わるだけで、
違う重さにも見えてしまうアバウトな目盛り。
その最小単位は20グラム。
結局このはかりは、
デザインは素敵だけれど、
あまり役に立つことはなかった。
その後、私はデジタルのスケールを買い、
ネットでレシピを見ながら
料理をするようになった。
それからしばらく経った今、
私はデジタルのスケールどころか、
このアバウトなはかりすら使っていない。
ネットでレシピを検索していたはずが、
いつの間にか母の作るものと
比較的似た味の料理を、適当に作っている。
不思議なもので、
結局は私も、気付けば母のように作っているのだ。