将来の目標や自分のやりたいことが明確でない無職の人、非正規就労者など社会的に弱い立場の層は、データ的にも正社員に比べ、総じてキャリア意識が低く、特に自尊感情が低い傾向が見られるそうです。
その理由をキャリア心理学の古い学説は、自尊感情が高い者は、自分とあった職業を自信を持って選べるが、自尊感情が低い人はそれができないためだと述べています。
つまり、自尊感情の低い人は、いわば捨て鉢になっており、そのため自分にあった職業を選ぶことに関心が向きません。
自分の生活をコントロールしている実感が持てず、自分がなすべき指針が立てられない傾向になりがちです。
結果的に、就労行動をはじめ生活全般が自暴自棄になりやすくなるようです。
しかし、逆に言うと、これらの層のキャリア支援を考えた場合、
「エンパワメントの具体的目標を、ひとまずクライアントの自尊感情の向上に定めることが有効である可能性が高い」と下村氏は述べています。
自尊感情を高めることにより、自分の生活をコントロールしているという感覚を高める。それが、結果的に自律的な就労行動などに波及することが期待できるからです。
キャリア支援により自尊感情(または自信)が高まったという研究はたくさんあるようです。
これらの研究の共通点は、適切なキャリア支援により将来の指針が得られたことが、自尊感情を高める結果につながったという点だそうです。
一般的に、将来の目標や自分のやりたいことが明確であるほど、自尊感情が高いそうです。
これは正社員、あるいは一時的に無職で何もしていない状態にあるかで違いは無いそうです。
むしろ現在、無職であっても将来の目標や自分のやりたいことが明確である場合、将来の目標や自分のやりたいことが明確でない正社員よりも、自尊感情は高いくらいだそうです。
つまり、自尊感情が低い状態でも、適切なキャリア支援を行うことで、将来の目標を見つけたり、見つけさせたりすることで、自尊感情を高めることが出来るのです。