地域おこし協力隊への憧れから公務員の憧れに変わっていった。
そうですね。大学時代はずっと思いつづけていましたね。
大学卒業後は、地域おこし協力隊になりたい。
実際に地域のために動くことができるという漠然としたイメージがあり、地域に住む人たちと仲良くできるという単純な志望動機でしたが。
だからこそ、大学卒業後からのただの公務員として過ごした1・2年目は辛い日々でした。
地域おこし協力隊のように柔軟に動ける立場になく、与えられた仕事を淡々とこなす毎日がつまらなくて。
それが、2020年度を迎えた3年目に入ってから、ぼく自身の思いや考えの風向きが変わりはじめたのです。
今回はそのような事柄を綴っていきたいと思います。
***
風向きが変わった1つのきっかけ。
ぼく自身が"ただの公務員"の存在価値に目を覚ましたのは、一昨年6月のよんなな会だった。
対馬のお隣・壱岐島の元公務員兼フリーランス公務員の柴さんとよんなな会のパブリックビューイングを開催した。
よんなな会は全国各地の国家公務員・地方公務員の集まりで、「公務員が1%でも良くなれば、世の中はもっと良くなる。」をモットーとしている。
そして、公務員ピッチでは、全国各地の公務員が各々やりたいことをプレゼンし、仲間を募っていく。
その姿を見て、組織内での公務員像には限界があるけれど、組織内外で動き回る公務員の輝かしさに共感して、「公務員だから。」という呪縛から少しずつ解かれていった。
それから、よんなな会のパブリックビューイングを開催したり、壱岐島の花火大会を手伝ったり、長崎県平戸市の職員研修に他自治体職員として参加したり、B1グランプリに同行したり、島外で離島スナックを開店したり。
2年目からは、業務外での公務員としての動きが加速していき、どんどん公務員としての世界は広がっていった。
そして、業務外で動けば動くほど、"ただの公務員"の存在を面白がってくれる人たちに恵まれた。本当に何もない一人の地方公務員の価値を認めてくれ、それがぼくの業務へのモチベーションの維持につながっていった。
かつては一人の地方公務員と地域おこし協力隊の立場の違いに気付かされた夜があった。けれども、立場が違えど動き回ることができると実感したのだ。
結局は、動く人は、どこでも動くのだ。
一方で、知り合いの地域おこし協力隊員が悩みを打ち明けていることを聞いた。
職場で自分の思うように動けない。
どうして、周りは理解してくれないの?
そこで、一人の公務員として、ぼくかこの悩みに対して、以前にこんな感じに返答したことがあった。
仕事外で得た知識や経験、人とのつながりは仕事内でも活かせます。直接仕事につながらなくても見方や考え方を活かしたりはまずできます!
そして、これはぼく自身にも言い聞かせていますが、「仕事だからできない。仕事だから動けない。」は協働隊ではなく単なる頭の固い公務員が言うことです。
"動ける立場にある人"には地域で動いてほしい。
自分自身が動けば、それを周りに伝え続ければ、周りも少しずつ変わると思います。
ほぐも同じです。自分の感覚や考えを上司に分かってもらうには、動くことと伝えることを続けるほかないのです。ぼくも職場で経験のなさでもがいています。
当時のぼくも、自身に驚くような発言だったと思うが、これこそぼくの今の立ち位置や公務員として目指している姿を表しているのだ。
つまり、仕事であるか否かという次元を超えて、動き回れるか・そこで得たことやその姿勢を周囲に訴え続けることができるか、試されている時期だと思う。
そして、どこに行って、何をしようが、動く人は組織に属していても動くのだ。
出ずっぱりは打たれないんだ。
そして、迎えた2020年。
コロナ禍で島内外飛び回ることができず、ストレスを溜めている中、また異なるコミュニティに出会うことに。
それが、オンライン市役所とよんなな離島会だった。
オンライン市役所では、オンライン上で課を立ち上げることができる。そこで、地域包括ケア推進課を立ち上げてみたところ、全国各地で活躍する多数の公務員の方々に賛同いただいた。
課の活動は、毎月1回の定例ミーティングのみとなっているが、自治体同士の情報共有の場になるとともに、公務員1人1人のモチベーションの維持につながっているのだ。
そして、よんなな離島会は、ぼく自身が離島に生きる公務員として立ち上げたコミュニティーである。「離島という日本本土からは遠く離れた地域から公務員の価値を高めていきたい。」「公務員の離島ファンを増やしたい。」という思いから生まれた。
離島会では、毎週木曜日のスナックアイランドを開店しはじめ、これが離島公務員の距離を感じさせない雰囲気となっている。ここでは、新たな人との繋がりができたり、コロナ禍が明けたら離島ツアーをする企画が生まれた。
さらに、これらの活動を通じて、全国各地の公務員が対馬に足を運ぶ機会や長崎市内で離島スナックを開店する機会に恵まれた。
実際に、ここまで動いてみて、改めて思うことが1つあった。それは、
出ずっぱりは打たれない。
ということ。
オンライン上でもリアルな場でも、出る杭に打たれることはほとんど無かったし、むしろこの動き方を面白がってくれる人の方が多かった。
だからこそ、出る杭ではなく、出ずっぱりであれば怖いものはないんだなと思うようになった。
ある意味、注目されつつあるのかも。
そして、3年目に入ってから、感覚にすぎないので何とも言えないが、ぼくに対する風向きが変わりつつあるように思えている。
「出る杭は打たれる」けど、「出ずっぱりは打たれない」に近い感覚で、一匹狼に見えるぼく自身の動き方や考え方が少しずつ浸透してきているように思えるのだ。
市役所の外で、業務外で、やっている事は市役所内で評価しづらい(業務に対する成果との直結度が見えづらい)のだが、多分どこかの誰かが、地域に生きる誰かが、ぼくの動く姿を見てくれているのだ。
それが、今年の夏に、自主視察ツアーや研究視察に帯同した際に出た部分として実感した。
3年目で、よくもこんなに色んな人とつながっているね。相当すごいことだよ。
ツアー後、とある地方自治体の先輩公務員に言われたこの一言がぼくの出ずっぱりさやフットワークの軽さを評価してくれたものだった。
業務という枠組みでは、まだ羨ましさはある気ようだ。
とはいえ、地域おこし協力隊に羨ましく思う部分はあり続けている。ぼく自身はただの公務員として動き回っているから、もう憧れではない。
だからこそ、一人の地方公務員として決められた業務内で動く中、裁量権が広く動き回れる地域おこし協力隊はやっぱり羨ましい。
1人の地方公務員から地域おこし協力隊になろうとしている方もこんな風に呟いている。
公務員としても地域活性化はできなくないが、その行動には制限が多い。
法律のもとにおいて仕事をすること、対応に追われることが多く即座の対応が困難であることが多いとみられる。
本当にこの通りだと思う。地域おこし協力隊とぼくみたいな"ただの公務員"はやはり違う立場や役割があるのだ。
ただ、そんな立場の違いを羨ましく思っているのは誰だってできることだ。羨ましく指を加えて見ているくらいなら、業務内で動けなくても業務外で動き回ればいい。
そういう姿勢を欲しているなら尚更だ。
公務員像はどんどん変わっていく。
縁の下の力持ちが公務員の役割だという人も少なからずいる。出しゃばると良くない部分もあり、いわゆる「行政主導」とも揶揄される。
だが、それは目の前の市民の方々を、あるいは地域のある姿を知っているから発揮できる縁の下の力持ちである。
地域を支えている現場を、そこに生きる人々の姿を、我々公務員が知らないから、新たな価値や動きが生まれない。
従来の公務員という人材の強みは、事務作業が迅速かつ適切に行えることだった。
しかし、社会が多様化している今、改めて現場を知る・目の前の市民に向き合える、そして、新たな価値や動きを生み出せる公務員が必要だと考えている。
そして、ぼく自身はこのスタイルを追求しつづけている最中だ。
社会が変われば、公務員の姿も変わっていく。
このことを肝に銘じながら、また公務員人生をおくっていこうと思う。
***
縁の下の力持ちでもある、ただの公務員という立場。
「地域おこし協力隊だったらな。」という気持ちが薄れていく自身の変化をやっと言葉にできたと思います。
注目されづらい、ただの地方公務員ですが、これからも公務員旋風を巻き起こしていきたいです!
それに、離島に生きる公務員として、行政ソーシャルワーカーとして、何らかの情報発信をしながら、公務員の価値を上げていきたいと思います!