老いと闘う水道橋博士
お笑い芸人の水道橋博士氏が還暦を過ぎて老いを感じつつあるとの心境を語っていました。以下の博士氏の言葉は事の重大さを伝えています。
水道橋博士氏は飲酒と美食(?)の習慣が身についてしまっているようです。博士氏にとって、人生のささやかな愉しみであることは間違いないでしょう。
2024年9月に逝去した文芸評論家の福田和也氏は10代から30代まで食と酒飲を派手に繰り返し、美食三昧の生活を送ってきました。ただ「暴食」といえるほどの食べっぷりが徐々に福田氏の体を蝕んでいくことになったのでしょう。
福田和也氏のゼミの門下生だった作家の鈴木涼美氏は現代ビジネスのコラムで福田氏との想い出の中で、日本の伝統料理店と食文化を守るべきだと主張する恩師の言葉に胸を躍らせたと言います。
鈴木氏は「保守論客」としての福田和也よりも「美食の店」を「保守」する福田和也の方が印象深かったそうです。晩年の福田氏はやせ細った姿で最期となる書を書き終えていました。美食巡りは人生の至福の時間を充実なものにさせていたことでしょうか。それだけ日本の料理文化を守ることに想いを馳せていたのです。
好きなものを食べたい時に食べる。それは構いませんが、暴飲暴食が命を縮めることは誰でも理解しています。ほどほどにしたくてもできないのは人間の宿命なのかもしれません。
タモリさんに学ぶ「僕はまだ若造だ!」の心意気
水道橋博士氏もまだまだ食文化を応援したい一心であるはずです。食べたいものややりたいこともたくさんある。それならば、「博士!老いるのはまだ早すぎますよ!!」と申し上げたいです。
人は誰しも「老い」から目を逸らすことができません。若者たちもいずれ必ずやってきます。それでも、身体も心も若々しくありたい、と願う人は多いでしょう。そんな時は「オレはまだ若造だ!」「オレはまだ、はなたれ小僧の一人だ!」と自己暗示をかけるのです。この言動は心理学的に正しいとされています。タレントのタモリ氏(森田一義)も「僕は大人じゃないんですよ。」と口癖にしています。
心理学者の内藤誼人氏は『タモリさんに学ぶ「人生のたたみ方」(廣済堂出版)の中でタモリ氏の言葉を例に出し、次のような提言がなされています。
内藤氏の見解は説得力があります。「俺ももう老けたなあ…。」と口癖にしてしまうと、身体も心も思うようにいかなくなります。逆に「オレはまだまだ若造だ!やりたいことはたくさんあるんだ!!」と自己暗示をすれば、身も心も軽くなるのです。水道橋博士氏はやりたいことがあるのであれば、「僕はまだまだ若い!」と暗示していただければよいと思います。博士氏の弟子たちも「おおお!!」と喜ぶこと間違いなしでしょう。
現役バリバリのささきいさお
私が思い出すのは『宇宙戦艦ヤマト』の主題歌を披露した歌手で声優のささきいさお氏の言葉です。あれは確か2012年4月12日のNHKのど自慢で、ささき氏がゲストとして出演した頃です。ささき氏のファンである出場者の一人の男性が熱唱を終えた後のインタビューでこう語っていました。
司会は元NHKアナウンサーの徳田章氏でした。
82歳を迎えた今も現役を続けています。コロナの影響下で音楽活動は自粛ムードが広がっていました。けれども、それを乗り超えた今、元気に歌を披露しています。最近でも2024年5月19日の生放送に出演し、見事な熱唱ぶりだったそうです。
水道橋博士氏は周りの老いにまつわる悲観的な話に右顧左眄せず、思う存分に楽しんでいただきたいです。そうなれば、若林凌駕氏(放送作家・22歳で古本興業を開く代表取締役社長)をはじめとする若者たちは博士氏のマインドに大いに共感することでしょう。
タモリ氏やささきいさお氏のような明朗快活な芸能人であることはエンタメを愛する私たちにとって「生きる勇気」を与えてくれるものではないでしょうか。
是非、寄る年波を「老い」返していただければと思っています。
<参考文献>
内藤誼人『タモリさんに学ぶ「人生のたたみ方」』廣済堂出版 2024
<参考写真>
※ 写真は借用させていただきました。この場をお借りして感謝を申し上げます。ありがとうございました。