風吹ケイは本屋に着いたら1万円で何を買うのか
実は読書人口が増えているグラビア界
私は出版区が主催する『本ツイ』(本屋についていって1万円くれたら何買うの?の略)というコンテンツ企画動画をよく観ている。このチャンネルではエンタメ界や文化界で活躍する有名人・著名人をメインターゲットとし、実際に本屋で買い物についていき、彼らの頭の中を覗くという企画である。著名人や有名人がどんな本に影響を受けて、仕事や人生の糧にするのかを知ることができる。
グラビアアイドル界では積極的に読書を行うモデルたちが増えているというのが私の実感である。特段、アイドルを推しているわけではないことをお断りしておく。
俳優としても活躍している鈴木ふみ奈氏は主にビジネス書を中心に読んでいる。書評コラムのActive Health Club『鈴木ふみ奈の道は拓ける』で本職に活かすための方法や時間術、お酒の飲み方などについて紹介している。
かくいう鈴木氏はそれほど本を読むのが好きでなかったそうだ。しかし、星新一の「ショート・ショート」という小説を読んだことがきっかけとなり、読書に親しむことになった。映画やテレビドラマなどのコメントやトークショーでの会話において適切な言葉選びや品格のある言葉を発することができる。それはひとえに小説などの文学作品で獲得した表現力を徐々に高めていったことの証左であろう。(以下は有料記事)
俳優の故・階戸瑠李氏は文学作品にどっぶりと浸かってきた読書家だった。自身が執筆した小説を発表する予定だったが、惜しまれつつも天国へ旅立ってしまった。貴重な文才を喪ったことは芸能界や文学界にとって、深い悲しみに暮れた日だったことを忘れるはずがない。
2023年に「脱ドル」した俳優・楽器奏者の桜井木穂氏は故郷の北海道を舞台にしたテレビドラマや演劇で活躍の幅を広げている。かつてバラエティ番組でマキャベリの「君主論」の一説を引用した学術的知見に基づくコメントを披露したことがある。いわば、演劇界では「知の達人」として知られている。
コスプレイヤーの伊織もえ氏は電子漫画を5000冊所有する「マンガ愛好家」として知られている。それ以外にカーネギーの「道は拓ける」や哲学書も読みこなし、仕事に生かすこともあるという。
グラビアアイドルを生業とするモデルの方々は単にグラビアだけでは生き残ることができないことを承知している。芸能界で生きていくための戦略的思考を駆使している。仕事の傍ら、積極的に読書を行うのだ。
今回の「本ツイ」で登場した風吹ケイ氏はグラビアで目覚ましい活躍ぶりを見せている。さらに、俳優としてのデビューも果たした。テレビドラマや映画に出演する回数を増やすことを目標に掲げている。芝居の勉強にとことん励んでいるようだ。
風吹氏はどんな本を選択したのか。いくつかの注目点をピックアップしていこう。
航空の世界の醍醐味
風吹氏はグラビアアイドルになる前、キャビンアテンダント(CA)の職に就いていたことを以下の記事で赤裸々に明かした。
今回の「本ツイ」で気になる本を見つけた。タワーマン氏の『航空管制 知られざる最前線』(KAWADE夢新書)だ。出版区のカメラマン担当の青木氏の聞き込みに対し、本書について次のように答える。
航空マニアにとっては耳より情報であろう。
「女性の品格」を勧められる
キャビンアテンダント養成学校に在学していた頃、風吹氏は授業を担当する元CAの講師から一冊の本を薦められた。教育者の坂東眞理子氏の『女性の品格』(PHP新書)である。
風吹氏は本書を人生の座右の書と決めている。当時の記憶を振り返りつつ、坂東氏の本の凄さについて次のように語る。
また、本編とは別のインタビュー動画でも『女性の品格』について触れている。
確かに『女性の品格』は客室乗務員や新幹線乗務員、ホテルスタッフなどのサービス型の職業において備えなくてはならない作法が盛りだくさんの内容だ。当然のごとく、芸能界でも求められる要素はある。本職のグラビアアイドルは応援するファンに向けて極上のファン・サービスを提供することを念頭に入れている。長々と売れ続けるためには肉体美を鍛え上げるだけではない。高貴な品格を保つことも必須だ。そうでなければ、本当の意味でファンへの「おもてなし」を行ったとは言えない。
また、風吹氏が語った通りに言葉の品格を磨くことは芸能の仕事でも活かすことができるはずである。美しい日本語を使いこなせるようになれば、今以上のレベルの高い仕事を獲得できる。坂東眞理子氏は『美しい日本語のすすめ』(小学館101新書・絶版)で品格ある言葉の作法を会得することを勧めている。
地上波テレビドラマ・大河ドラマへの出演や映画でのデビューをタスク(課題)として掲げている風吹氏はなおさら言語表現力を鍛えなければならない。品格ある女優としての才覚を発揮するには、映画監督や脚本家などの芸能関係者たちも彼女の才能を開花できるように育成するための手立てを打たなければならない。
最近、坂東氏は『人は本に育てられる』(幻冬舎新書)を上梓した。70代を迎えた今でも、昭和女子大学総長として職務を担っている。本書では子供時代から現在に至るまで読書を活力源として人生を切り開いていったことを教えてくれる。物語から歴史物まで幅広い分野の書物を読んできたそうだ。
坂東氏は自身の歩みを振り返りながら、読書とともに実り豊かな人生を歩んできたと述懐する。
坂東氏の激励のメッセージは多くの女性たちを勇気づける言葉である。風吹氏だけでなく、多くのグラビアアイドルの方々は彼女の心優しく温かい言葉に共感を覚えると思う。私たちもその言葉を嚙みしめなくてはならない。
MEGUMIをリスペクト
風吹氏は店内を回っている最中、MEGUMI氏の新刊を発見した。「あ、あ、あ!これはもうマストバイで!!はい決定!」と即断即決した本は『心に効く美容』(講談社)だ。本書は美肌を保つ秘訣だけでなく、「心の免疫力」を上げるための処方箋を指南する。
風吹氏は「このお年頃は皆MEGUMIさんリスペクトですから。」と満面の笑みを浮かべた。小池栄子氏だけではなかった。
MEGUMI氏はタレント業の傍ら、実業家としての顔を持つ。映画プロデューサーとして自ら開拓したこともある。マルチな才能を発揮している。多忙な芸能生活の最中、MEGUMI氏は美容と肌のケアに事欠かない。『キレイはこれでつくれます』(ダイヤモンド社)は様々な美容法を試用してきたゆえに辿りついた結論を本書に込めている。累計60万部を超えるベストセラーとなっているから驚きを隠せない。
多くの日本の女性たちはMEGUMI氏の方法を学習し、美を保つ努力を行っている。身体だけでなく内面も徐々に変わっていく。次第に自己肯定感を取り戻すようになった。美容品は常に若々しさを保つ効能だと考えられる。
風吹氏をはじめとするグラビアアイドルたちだけではない。俳優、お笑い芸人、バラエティタレントなどの女性芸能人たちはMEGUMI氏と同様に弛まぬ努力を重ねている。美容を極めることで生き延びようとしているのかもしれない。男性陣も負けず劣らず、闘志を燃やすに違いない。
風吹氏の「本ツイ」で紹介した書籍は人生に弾みをつけるきっかけになると思う。
<引用文献>
坂東眞理子『人は本に育てられる』幻冬舎新書 2024