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吉田豪と宮田愛萌の書物愛

 プロインタビュアー・書評家の吉田豪氏とタレント・作家の宮田愛萌氏のYouTube動画を見た。面白い内容だ。二人の本への愛が視聴者に伝わってくる。

蔵書について

 序盤の話で宮田愛萌氏が吉田氏に対し、蔵書で床が抜けないのかという直球質問を行った。吉田氏は次のように答える。

宮田 「これだけ本がいっぱいあって、床が抜ける心配とかはしますか?」

吉田 「あの、これがですね。実家は普通の木造建築なんですけど、実家を書庫にしているんですよ。三部屋くらい占拠して、どんどん本を増やしていったら、明らかにちょっと色んな扉の閉まり方がおかしくなってきて。

宮田 「やっぱり、そうなんですね。」

吉田 「絶対家が歪んだんですよ。これやばいと思って、木造建築に本をいっぱい置くのはダメ!マンションとかなら一応鉄骨なので、大丈夫だろうと思ってんですけど、たぶん良くない使い方をしてる気もする。」

宮田 「そうですね。私、家に本二千冊くらいあるんですけど、それで母親から『床が抜けたら、あんたの責任だからね!』って毎日のように言われています。」

 やはり、蔵書の保管問題は二人とも悩みどころである。

 宮田氏は古典文学・短歌・小説などの文学を中心に二千冊程の蔵書を所持している。他方、吉田氏はプロレスからアイドルまで数々の書評を行ってきた。インタビューした人数も多々経験している。有名人や著名人とインタビューする際に文献資料による下調べを綿密に行い、人物像を徹底的に研究するのだ。インタビューの対象者はプロレスラー・俳優・アイドルなど多岐にわたる。保有する蔵書のほとんどは「タレント本」となる。

 現在では、4万冊以上の蔵書を2つのマンションで管理しているという。

 宮田氏は幼少期から読書に親しんでいた。母親に読み聞かせをしてもらううちに、母自身が面倒くささを感じるようになった。それで絵本の漢字にひらがなのルビを全部ふったそうだ。結果、宮田氏は自然に文字を読むスピードが速くなり、たちまち読書家に育った。あまりネットを見ることは好まず、家で本を読んでいると心が落ち着くそうである。文学作品のほかに漫画も愛読するが、母親は読むスピードが速い宮田氏を見て、家に漫画があふれていくのを懸念し、なるだけ文字の多い本を読むように規制していったのである。

 また、宮田氏は純粋に本そのものが好きであり、背表紙を見ても楽しいという。休日に書店に足を運んで、晩飯前まで店内の書棚を回っている。いわば「読書狂」といっても過言ではない。

 一方で、吉田氏は相当の本好きであっても、最大1時間で店内を回って帰途につく。比べ物にならないほどだ。

 宮田氏は次のように語る。

宮田 「私、興味ない棚でもとりあえず全部見るんです。だからって言うのもあって、興味なくても一回、『装丁がいいな』ってみたりとかもするので。短くて3時間とか。」

吉田 「短くて3時間!? だからYouTube「出版区」とか、あんなふうになるんですね。」

宮田 「はい!そうなんです!ありがとうございます!はい、どんどん長くなって、収録時間が押して押してって感じで。」

 ここで出てきた「出版区」とはYouTubeで配信している出版業界のコンテンツ企画であり、「本屋ついていったら1万円で何買うの?」というテーマで著名人・有名人の頭の中を覗くという番組である。宮田氏は2回参加したのである。

なぜアイドルに!?

 宮田氏は元々本への愛が非常に強く、大学では日本文学を専攻していた。卒業したら、図書館司書か出版社で働くことを夢見ていた。偶然、知り合いからアイドルのオーディションがあることを聞き、応募したところ、見事に合格した。後に日向坂46のメンバーとなる。その経緯について宮田氏は次のように話す。

宮田 「元々本に関わる仕事に就きたかったんですけど…」

吉田 「それは野心というか、それは元々持っていたわけですよね?」

宮田 「めちゃめちゃ持ってて、あの、少しでも名前を覚えてもらいたくて、漫画雑誌とかに毎月毎月ハガキを送ったりとか。」

吉田 「ん!?それはいつぐらいに?」

宮田 「高校生の時から大学4年生までずっと送り続ければ、名前を覚えてもらってワンチャンで就職できるかもと思って。」

吉田 「就活でやってたんですか?それ!?」

宮田 「それも含めて、なんか、名前を覚えてもらえたいので、毎月感想を書こうと思って。」

吉田 「それは少女漫画誌とかじゃなくて。」

宮田 「少女漫画なんですかね?」

吉田 「どの辺?」

宮田 「『ゆり姫』です。」

吉田 「おお!元々そういう趣味の持ち主で。」

宮田 「はい、可愛いのが大好きだったので。」

吉田 「そこに就職したくて頑張ってた?」

宮田 「はい、なんかワンチャンあるかなと思って。少しでも何か足がかりができるといいなと思って。漫画は何回か当たりました。(笑)大学生になってからも司書の資格を取ったりとか、大学には出版社に行く人が多いと聞いたので、ワンチャンあるかな、インターンあるかな、みたいな。OG・OBいないかなと思って生きていました。」

吉田 「出版社に潜り込みたいなと思ったりしてました?」

宮田 「そうですね、出版社に入って本を売りたかったです。」

吉田 「売りたかった、なんだ。」

宮田 「はい。元々図書館司書になるか出版社で本を売る側になるか。広告や営業、そっち系であるものをみんなに読んでほしいと思っていました。」

吉田 「一貫して分かったんですけど、何でアイドルやってたんですか?

宮田 「受かっちゃったんですよ。

吉田 「ハハハハハ!」

宮田 「大学1年生の時にオーディションがあって、その時に色んなアルバイトをしていたんです。パン屋さんとピザ屋さんと塾講師とをやってて、その応募の流れでオーディションがあったので。応募するだけタダだろうなと思って。元々アイドルが好きだったので。応募してみよっかなと思って。」

吉田 「可愛い女の子好きみたいな、そのハートあるしで。」

宮田 「でも、なんか経験になるだろと思って。受かるとは思ってなくて。送ってみようみたいなノリで。アルバイトしてるから、オーディション受かったとしても、交通費あるから行けるわと思って、東京なので。で、送ってみたら意外と通ってしまって。アイドル受かったので、『じゃあ、やるか。』と思ってアイドルになりました。」

吉田 「やって損はないですしね、いい経験ができるはず。」

宮田 「選ばれたので、選ばれたからにはやるしかないかなと思って。」

 宮田氏はその後アイドルとして活躍する。やがて、読書好きや文学好きが高じて出版社から小説の依頼を受け、作家デビューを果たしたのである。日向坂46を卒業した後、タレントとしてテレビやラジオに引っ張りだこになる。『きらきらし』(新潮社)や『あやふやで、不確かな』(幻冬舎)が代表作となる。

 動画では二人の本にまつわる話が充実している。将来的に読書人口の低下を防ぎ、出版不況をものともせず、日本人の本好きを増やすことを目標に掲げている。日本の読書文化を復権させることを構想している。

 二人の活躍から目が離せないものとなるだろう。


<読書案内>

宮田愛萌 『あやふやで、不確かな』(幻冬舎)

吉田豪 『聞き出す力 FINAL』ホーム社


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ハリス・ポーター
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