新型コロナ(食品衛生法)


新型コロナウイルスの影響を受けて、お店の食事メニューのテイクアウト販売を始める飲食店が増えています。

「はろとくわ」に登録されている飲食店の中にも、食事でのリターンを設定しておられる方々が多くいらっしゃいます。

そこで、この記事では、飲食店の方々が食品のテイクアウト販売を始めるにあたってご留意いただきたい食品衛生法等の規制について、解説いたします。

新たに許可を取得する必要があるか

飲食店営業許可に加えて新たに許可を取得する必要があるか否かは、テイクアウト販売をする食品の種類によります。

例えば、以下の食品を製造してテイクアウト販売をする場合には、飲食店営業許可に加えて、それぞれ以下の許可の取得が必要となります。

食品関連

上記の他にも、テイクアウト販売する場合に新たな許可が必要となる食品が多くありますので、注意が必要です。

また、新たな許可が必要か否かは、客へ直接販売するものか否か、客の注文を受けてから調理するか否かなどの事情も考慮され、個別具体的に判断されますので、テイクアウト販売を始めるにあたっては、事前に保健所にご相談ください。

なお、飲食店営業許可の範囲内でテイクアウト販売をする場合の食品は、飲食店営業の許可を得た店内で製造されたものでなければならず、別の場所で製造したものを店舗に持参して販売することは認められませんので、ご注意ください。

次に、在庫のビールなどの酒類のテイクアウト販売をする場合に、飲食店営業許可とは別に許可を取得する必要があるかですが、酒類の販売をしようとする場合は、通常、販売場所の所在地の所轄税務署長から、酒税法に基づく酒類小売業免許を受ける必要があります。

もっとも、今回の新型コロナウイルスが飲食業の事業者に多大な影響を与えていることを受け、免許の申請手続の簡素化・免許処理の迅速化を図る観点から、一般の酒類小売業免許とは別に、新たに「料飲店等期限付酒類小売業免許」が設けられました。

この料飲店等期限付酒類小売業免許の付与の対象となるのは、2020年6月30日(火)までに提出のあった免許申請書に限られていますので、酒類のテイクアウト販売を考えておられる場合は、速やかに所轄の税務署へご相談ください。

テイクアウト販売における表示義務

店舗で作った食品を容器に詰めて店頭で販売する場合、加工食品品質表示基準に基づく表示は必要でしょうか。

加工食品品質表示基準とは、加工食品の品質に関し、製造業者又は販売業者等が加工食品の容器又は包装に表示すべき事項を定めた基準です。

具体的には、加工食品の名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法などを表示しなければならないとされています。

ただし、飲食料品を製造又は加工し、一般消費者に直接販売する場合には、加工食品品質表示基準に基づく表示は不要とされています。

そのため、小売店の店内で弁当を作って容器包装に入れて販売する場合や、店舗と同一敷地内の施設で作って容器包装に入れて販売する場合は、製造又は加工をした者が一般消費者に直接販売していると考えられるため、表示の必要はありません。

もっとも、加工食品品質表示基準に基づく表示が必要でない場合であっても、客の身体の安全を確保する観点からは、アレルゲン、消費期限や保存方法などの安全・安心に関する情報は伝えるようにしておくことが望ましいといえます。

テイクアウト販売で食中毒が発生した場合は

テイクアウト販売をした食品により食中毒が発生した場合、客に対しては、食中毒により被った身体的ないし財産的な損害につき、製造物責任法又は民法上の損害賠償責任を負うリスクがあります。

また、人の健康を損なうおそれがある食品を販売したとして、都道府県知事により、飲食店営業許可の取り消し、又は営業の停止処分が下される可能性があります。

以上のとおり、飲食店がテイクアウト販売を始めるにあたっては、食品の種類や販売方法に応じて、新たな許可や加工食品品質表示基準に基づく表示が必要かをご確認いただく必要がありますので、判断に迷うケースがあれば、事前に保健所にご相談ください。


また、テイクアウト商品を購入したお客から、食中毒が発生したなどのクレームが入った場合は、実際にその食品により食中毒が発生したといえるか、飲食店営業許可に影響がないかなどについて検討が必要となりますので、弁護士にご相談されることをお薦めいたします。
                                                                                     (弁護士 平野悠之介)