LILIUMをこじらせている人のうめき
先日、LILIUMとマリーゴールドをリピッた感想を書きましたが、あまりにこじらせているので、LILIUM終盤のことだけ書きます! 書くんだ! 当然ネタバレフェスティバルなので、LILIUM - 少女純潔歌劇 -をご覧になったことのない方は読まないでください。(シリーズの他の作品への言及はないよ)
※先日のnoteで各キャラへのお気持ちを軸に終盤以外のことも含めて書いています(一万字くらい)。狂ったオタクの呻き声がもう少し聴きたければそちらもどうぞ。
※LILIUMからinした鞘師里保さんのファンなので、そういう意味でもこじらせてます。あしからず。
●死が正しい
自分達が過ごしていたクランが、実は地面にたくさんの少女達の死体が埋まっている血の匂いがする花園だという真実を知るところから、怒涛の勢いで「死が正しい」理由を積み上げるの端的にいってヤバ。
・身体が勝手に作り変えられ不老にされている、薬を飲むのをやめると急激に老いて死ぬ
・全員ファルスのイニシアチブに握られていて記憶を支配されており、逃れることもできない
・ファルスは不老不死のため自然に死なないし、殺すこともできない
・永遠を生きることを一度は選んだスノウが死を選ぶ
・マリーゴールドがファルスに燃やされることで、生死も掌の上だと見せつけられる
倫理観も逆転しますよ…そりゃ、「生きるのが正しい」ではなく、「死ぬのが正しい」になってしまう。
ファルスの花園にいる自分達は、イニシアチブで記憶や人格を支配され、身体すら勝手に作り変えられて、肉体と精神の尊厳を失っている。皆の尊厳を守るためには、未来永劫操り人形としてこの血の匂いのする花園に閉じ込めず、この場で死なせてやることしかない。だからそれを唯一できるリリーが、「純潔の少女」であるリリーが、「みんなを解放する」しかない。解放の手段は死だけ、だから「死は正しい」っていう風に。
皆がファルスのイニシアチブの元にあるので、誰の自由意志の存在も保証されないんですよね。真実に心から紫蘭と竜胆がファルスに従ってたのかわからない。現にファルスは二人からもLILIUM劇中の一連の記憶を消してますし。なので、真実を共有して話し合って今後を決めるという選択肢は存在しえないんだなぁ…。スノウが生きていたら、みんなのイニシアチブを握っているのが三人になるから、もしかしたら違う選択肢もあったのかな。
でも、スノウもマリーゴールドの手による自死を選んだ今、死しかこの花園から逃れる術は考えられない。
リリーは「みんなを死なせる」ことが正しいと確信してますよね。それは、「君は仲間を殺したんだぞ!」「私はみんなを救いたかっただけ」というファルスとリリーのやりとりも、みんなを殺した後に「夢の中で夢を見てはいけない、現実にこそ夢の花は咲く」と劇中で悪夢と称され続けた花園の終わりこそが正しいとリリーが歌ってることからもわかる。
こうやって「死が正しい」という倫理観の逆転して、その通り実行した末にたどり着く場所がすごいよね…。ちなみにあの時流れていたBGMタイトルは「永遠の繭期の始まり」だそうですよ。『繭期音源蒐集』っていう劇判を集めたCDに入ってるから聞こう。Amazon musicで配信もされてるから、アマプラ会員の皆は聞けるよ。
仲間全てを自死させて、自も死を遂げる、で終わっていたら、まぁこう…ある意味で「主人公は望みをかなえ、悪の望みは砕かれた」なので、「重たかったけど面白かったな」て感じたかも知れない。でもそうはならなかった。リリーは「仲間を全て自死させる」→「自殺する」のあとに、「自分は死ねない」という結末を迎える。この一連のシーンへのね、痛さが半端ない。
●仲間を全て自死させるところ
仲間を自死させてるとき、リリーはもの凄く辛そうに眼を閉じてますよね。みんなのことを見ないようにって目を固く瞑って、泣いているようにくしゃくしゃに顔を歪めて。「やめてくれ!」て叫んで縋り付くファルスの言葉通り、本当は自分だってやめたい、だけどこれしかない、ていう悲愴な想いを滲ませる顔で。でも、ファルスの呪いからみんなを確実に開放するために、絶対にまかり間違っても誰一人生き残らないような死なせ方してるんですよね。まず最初に自分で自分を刺させてから、互いに殺し合わせて、最後にもう一度自分に刃を立てさせるっていう。そのエグさがまた来るんだわ…、後ろで喉とか刺してるんだよ…。
それに加えて、劇中でマーガレットがマリーゴールドに操られてる時、スノウに向かってマーガレットが「違うの」て呟くじゃないですか。あれってイニシアチブは「意識は操らずに身体だけ操る」ことができるっていう証左じゃないですか…。リリーはみんなを死なせる時、少女達の意識をどうしているんだろう…震える…。他人を噛んでイニシアチブをとることは禁じられていて、リリー自身誰を噛んだこともなければ、誰もこれまでイニシアチブで操ったことがないと思うんですけど、その「自死させる時の皆の意識」に気が回っているのかどうかわからなくて怖いよ。悲鳴をみんながあげないのは、リリーが目を瞑ってるのと同様、声を聞きたくないから上げさせてないだけかもしれないのがまた。
でも、舞台の中央に一人で立つリリーと、その足元に座り込むファルスの元に、純白の少女達が無言で歩いてくるシーンは美しく恐ろしいよね。手に剣だけ握って。何でこんなに残酷なのに美しい感じがするんだろう、わけがわからん。みんなが美少女だから? いや本当にみんな顔が可愛いだけじゃなくて、歌もダンスも芝居もしてくれてありがとう。感謝しかない。
●リリーの自死
リリーが苦しみながらも仲間を皆殺しにした後。「お前の花園は終わりだファルス」って言って近づいてくる時の、確信に満ちて、白い光が映り込んだ目が怖くて、取り憑かれたようで……ゾッとする眼差しなのに、だからこそ目に焼き付いてしまう。ううぅ…好きだ…。
そして自分で自分の心臓を突き刺した後、顔にかかった髪の間に覗くリリーの顔はうっすら笑ってますよね。あの仄暗い微笑み、あの場面で微笑むことが、あのシーンを完全にしている様に思います。あの微笑みこそ、「みんなを開放した」「最後に自分も解放される」笑みだから。自分も死ぬことを喜んでる…。永遠の繭期は終わり、御伽噺は結末を迎えるから。
●永遠の繭期の始まり
でも「永遠の繭期の始まり」がリリーに訪れてしまう…のが、なんていうか……、言葉を失ってしまう。この時のリリーの様子が、目を背けたいくらい痛ましくて。もう言葉の輪郭もわからないくらいにめちゃくちゃに叫びながら何度も何度も胸を突き刺すリリーを見てられない……と思いつつ瞳孔を開いて何度も見ちゃう…のはなんでなんだろう。この二時間の舞台を、最後の全身から迸る絶叫を聞くために見てるようですらある…。
「死ぬことが正しく、生きることは苦痛」という構図が完成するうえに、永遠の命を得てしまうので最悪なんですけどね…。でもTRUMPシリーズを見ていると「たとえ短い命でも誰かに愛されて生きたなら幸せ」という考えがずっと貫かれているように思います。シルベチカもキャメリアとの愛情を抱いて生を終えるので。
●永遠に枯れない花
十代の少女達に「時よ止まれ、君に永遠の美しさを」と望む舞台をアイドルにやらせるの、業が深い。でも正直、最初はそうなの?って感じでわからなかったんですよね。だって自分はアイドル応援したこともなかったし、LILIUMからハロプロを知って、鞘師さんのファンになったというプロセスなので。演者にどんな気持ちを持たせたいんだ脚本家は?とは不思議に思ったけど。
(脚本家さんは本業のアイドルに持って帰るものがあるようにって思ってやってくれたらしいですね。実際、キャメリアの中西香奈ちゃんとか当時あんまりお歌上手じゃないメンバーだったそうですが、歌姫としてモーニング娘。に加入してきたシルベチカの小田さくらちゃんと二人で歌う曲、すごいインパクトありますもんね。マリーゴールドの田村芽実さんもこの舞台がとても大切なものだという趣旨のことを仰ってるし。)
何だけど、その……最近、わかるんや。「時よ止まれ、君に永久の美しさを」と望んでしまう業が…。いや、もう本当はLILIUMから入って鞘師オタになってしまった時にわかってたんだ。だって、鞘師が演じるリリーが永遠に枯れない花になったことを、喜んでいたから。この十六歳の美しい少女が、永遠に枯れない花になったんだ、て……喜んだんだ…。
そしていまも、あの時のリリーのような様で鞘師に黑世界の舞台に立って欲しいと思ってる。もう六年も経ってるのに、永遠の少女でいて欲しいと願ってしまっている、LILIUMのせいで…。ぎぃぃ~~~~!
(LILIUMを離れて、ハロプロも離れての鞘師ももちろんめちゃくちゃ大好きです。BABYMETALの大阪城ホで初めて鞘師を見た二日間の感動と言ったらなかった。心の旅、そしてべしょべしょの涙。しかしそれとは別の業なの、LILIUM。)
永遠に枯れない花。
本当に、鞘師がその一輪の花になってくれて、うれしい。
黑世界たのしみ。
●おまけ
LILUM終盤を演じている時、役者である鞘師はどんなお気持ちだったんだろう。「仲間を全て自死させる」→「自殺する」→「自分は死ねない」という感情と行動の劇的な変化を3度しかも短い間にするの、想像がつかないや…。
ハロオタの間では時々「鞘師は憑依系」っていうのを聞くんですけど、なんかこう…ほんと憑依系って言葉ハマるなって。ええ、いや、ハロオタになる前にLILIUMから「ステーシーズ」とか「ごがくゆう」とかをいろいろ見てる時の自分も思ったので、あながちただのオタクのうめき声じゃないと思ってるんだけど、どう?
意味不明なオタクのうめき声を最後まで聞いてくれてありがとう。
ほとんどリリーのことしか触れてないけど、冒頭で触れた通り前回のnoteだと他のキャラのことについても、もっと熱くうめいてるよ。