《絵本レビュー》PIHOTEK ピヒュッティ 北極を風と歩く
TikTokを何気なくみてたら、お腹を空かせたシロクマが獲物を探している動画が流れてきました。
シロクマの目線の先には、アザラシ親子が氷の上で、のほほんと休んでたんですよ。もちろん、シロクマには見えない距離なのに美味しい匂いがプンプンしたんでしょうね。(野生の鼻はすごいね)
走ってって、それに気づいた親アザラシは、海の中へと急いでドボン、子アザラシにオマエも逃げろと合図を送るんですが、うねうねと休んどる訳です。
どーなっちゃうの?どーなっちゃうの?とハラハラしながら見てたら、間一髪のところで子アザラシも海の中へ逃げることができたという、そういう動画でした。
わたしは、〝少年アシベ〟世代なので、問答無用で子アザラシをゴマちゃんと重ねてしまう。
これってわかんない、シロクマにも家族がいたかもしれんし、食べられても逃げられても、どっちかは残念なんだけれど、ゴマちゃん(子アザラシ)応援してまう。
なんのこっちゃと、お思いでしょうが、今日はそのシロクマも、アザラシも登場する北極が舞台の絵本【 PIHOTEKピヒュッティ北極を風と歩く】のレビューをしようと思います。
パチパチパチ。
前置き長うなってしもた。
〔作〕荻田泰永
〔絵〕井上奈奈
〔発行所〕講談社
〔初版〕2022年8月
《ストーリーについて》
北極をたった1人で歩く〝僕〟の1日を描く。
氷の上では、ホッキョクグマが食糧を探し、ジャコウウシやホッキョクウサギがそれぞれ身を寄せ合って極寒の中、春を待ちます。
空が暗くなり、自然を感じながら眠り朝を待ちます。
北極に通い始めて20年の北極冒険家が自然を通じて〝自然環境問題とは何か〟ということを美しい情景や思想と共に語りかける命の物語です。
《10コの視点》
【キャラクター】
・北極冒険家
・ホッキョクグマ
・ジャコウウシ
・ライチョウ
・ホッキョクウサギ
・ホッキョクオオカミ
・カリブー
・アザラシ
【舞台】
・北極
【構成】
たった1人で北極を歩きながら北極を全身で感じながら生きる。
↓
ホッキョクグマが獲物を探し、ジャコウウシやライチョウ、ホッキョクウサギが極寒の中、耐え忍びながら生きる。
↓
ホッキョクオオカミがカリブーを追いかけながら生きる。
↓
夜になりテントで寝床を作りながら、命の音(風)を聞きながら眠りにつく。
【文】
まるで、詩を読んでいるかのような美しい文体。
北極の厳しい寒さや、そこに生きる生き物の在り方が自然に書かれてある。
それはまるで、生態を学んでいるような現地にいるような、そんな感覚さえする。
【絵】
全ページ銀刷の部分があったり、青の青さや赤の赤さが表現され、すごく美しいし個人的に贅沢な気分になる。(製本に使う糸もグレーという圧巻のこだわり)
特に、北極冒険家の頭の中を可視化させたような抽象度が高いページは、食物連鎖が頭をよぎった。
【ハッピーエンド】
今日もまた、冒険に出かけながらのハッピーエンド。
【カバー表表紙・裏表紙】
銀刷の北極の地が描かれ吹雪の部分がニス加工されてあり、テカテカしている。ほんとにステキ!みているだけで、寒い。
カバーの裏にも違う絵が描かれているし、表紙自体にも違う絵が…これだけでも3パターン。(そんな描ける?豪華すぎん?)
【見返し】
青の青さと言わんばかりの紺色の用紙。
地球の色なのか、海の色なのか、夜空の色なのか。
はたまた、澄んだ空気の色なのか。
【題字の文字】
吹雪が文字にかかっているようなデザイン。
〝PIHOTEK〟とは、作者がイヌイットの友人から与えられたイヌイットネームだそうな。
《読み聞かせをしてみて》
『ホッキョクって、さむそうねー(8)』
『いや、さむいどころじゃないよ!ゲキサムよ!(10)』
『わたしだったら、ここでは生きられない(母)』
2回、なぞるようにして読み聞かせしました。北極の寒さや物語の深さを感じるために。
《おしまいの言葉》
巻末エッセイにて、印象深い言葉が書かれてありました。
〝北極を冒険することは、生きることだ。そして、死を感じることだ。その死とは、誰かの命であり、いつの日か自分の体も分解されて、空に舞い、風に吹かれて誰かの命にたどり着く〟
毎日、何気なく生きている中で死を感じることって、むつかしいですよね。
死ぬことを感じることが出来れば、生きることを感じることも出来るんでしょうが、人間というものは、まったく楽したい生きもんで、良いところだけツマみたいんですよな。
自然も、自分の命も、地球も全部つながってることなんて、イヌイットの人たちにとっては、あくびをするくらい当たり前のことなんでしょう。
今年の暖冬も、いつか当たり前になるのかな。
☆彡梅の蕾を見つけたコボシより
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