ギネス記録へのロマンが災いする不幸の充満
チームを鼓舞するゴール
2020年1月1日
あけましておめでとうございます。
師走から新年にかけて、「商戦」に情熱を注いでいる方、携わる方、かなり多くいらっしゃるでしょう。
購買意欲、休日の多さ、節目感など、販売する側としては、イベントやセールを装飾全開にして取り組むべき期間となります。
今回は、通例的商戦の落とし穴について。
まず、店舗のマネージャーが、会社と約束した売上げ目標があって、仲間であるスタッフたちと協力して達成を目指すことでしょう。
もっと意識が高いマネージャーは、会社と約束した数字に、さらに乗せた数字を設定して、「やってやろーぜー!」と息巻く場合もあります。
過去最高の売上げ記録を叩き出して、最高の達成感を味わい、会社からの良い評価も頂いてやるというロマンみたいなのも、社内で生まれているでしょう。
これらが、「狂気」になることで、後の破滅を呼んでしまうことがあるのです!
「後の破滅」と「残念な結果」の2パターンあります。
果たしてこの2パターンは自分には関係ないだろうか?
これを考えられてない、特に若くて勢いのあるマネージャーは必見です。
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「三方よし」を基軸とした「道徳経済合一説」
「三方よし」をご存知だろうか?
三方よしとは、“売り手よし”“買い手よし”“世間よし”の3つのよしの精神のことです。 売り手と買い手が共に満足して、さらに社会貢献もできることが、よい商売のありかたであるという近江商人の心得です。
この心得を考えもせずに、こちらが売りたい商品を、こちらのタイミングのみで、ズカズカお客様の領域に踏み込んで、気合い販売の連続により増えていく売上げに喜びを感じるレベルで仕事している人が令和になった今も多く居てしまう現実があります。
いや、上記で増えていく売上げに喜びを感じるレベルで仕事している「組織」も多いことでしょう。
「なんだかんだ言っても結果(売上げ)が全て」という短期的な観点で評価をしている組織は正に狂気です。
「自分がお客様だったら、今この商品を提供されると喜ぶだろうな」という感受性など、どこかに置き忘れてしまい、お買い上げ頂いて「ありがとう」と言ってお帰りになったお客様に「いいことしたなー」なんてほとんど考えずに、「今販売したので、どのくらい売上げ上がったか?」の方が気になる。
正に狂気!道徳などない。
チームを動かすには、「強制」と「共感」があります。
この売り手目線のみのチームは、全て「強制で動かされた結果」だけのチームではありません。
「てめーもっとやれよ!」「はっ?今日これしかやってないのに帰んの?」と強制的にスタッフを恐怖で動かして、売上げを重ねていくマネジメントスタイルの店もあれば、とてもチームの結束力が高く、マネージャーが「この高い売上げ目標をみんなの頑張りで達成しようぜ!」と発信して、みんなが一丸となり気合いで販売していくマネジメントスタイルの店も狂気になり得るのが難しいところです。
しかも、チームの結束力が高い「共感」のチームのスタッフに商品の提案をされると、店の雰囲気が生き生きとして好感が持てるので、必要とかではなく買ってしまうという「お客様の為」が無い売り方になってしまうケースもあります。
「強制」でギネス達成したら達成感なんてマネージャーだけかもしれないし、「共感」でギネス達成したら「オレこの店で働けて良かったです。みんなで頑張ったギネス記録は一生の思い出です」という売り手目線のズレた感動を呼ぶこともあるのです。
当然お客様もバカではないので、「売られたな」と感じるでしょうし、お会計のとき「現金になさいますか?クレジットになさいますか?」の問に、「売られた」という雰囲気で、ムスッとした表情でクレジットカードを出してきてるのに、スタッフは気づきもせずに、売上げが上がったことを喜んでいるレベルの仕事をしているチームがあるのです。
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この手法で売上げのギネス記録を達成したら、その時は、達成感に酔いしれ、会社からも評価されるでしょう。
出世なんかしちゃって、その店から離れるかもしれない。
残された店はどうなるだろうか?
①売られたと感じたお客様が離れる
②前年対比を基軸に売上げ目標が決まる
③高すぎる目標に楽しく仕事ができない
こんな感じになる可能性が高いです。
①は当然、売り手目線の賜物(または、来店はするがこちらの思う通りに買ってくれない)であり、②は会社側は、無理やり売ったかどうかは数字だけではわからないので、なんなら去年より高い目標を推奨してくる場合もあります。
③は、②で上がった目標を、お客様が離れた状態で追いかけなければいけないので、結果の悪さに楽しく仕事ができず、不幸なスタッフを増やしてしまう。
このような道徳のない経営を実現してしまうことは、渋沢栄一が「道徳経済合一説」を、あんなに昔から唱えてるのに、会社からの評価や、上長から売上で文句言われないためなどの、我欲による取り組みなので破滅します。
当然、どんなに意識が高くても長期的な観点のない売上げは、実力に値しません。
それを評価している会社には疑問を持つことが主体的な人生を送るためには不可欠です。
「でも、こっちだって売上げ上げないと給料下がったら嫁、子供もいるし・・・」というレベルのマインドで、売り手目線を続けながら生きているのであれば、自分の人生を生きることを辞めているのと同等です。
豊かなマインドは手放さないで頂きたいものです。
「三方よし」の心得を忘れずに商売しているマネージャーも、心得た上で、お客様に価値ある商品を最大限提案した結果の目標はどのくらいかをしっかり考えないと、正しく仕事しても達成感を味わえないで終了してしまう危険性があります。
それだけ「三方よしを実現する目標設定」を描ける分析力が、マネージャーに必須なのです。なぜならみんながハッピーになるマネジメントを創造できることが真のリーダーだからです。
みんなが喜ぶ社会性のあるwant toのゴールを設定して、ゴール達成のイメージと臨場感を深めて、スタッフに伝えて「共感」して頂きましょう。
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働き方はエフィカシー次第
みなさん働いていらっしゃるでしょうし、ある程度結果を求められるでしょう。
100%子会社なんかは、「親会社の商品を販売する使命」が強く、売上げ数字の他に「何を何個売ったか?」みたいな結果も求められて、従業員のキャパシティを超えていることに上は気づきもせずに「あれもやれ、これもやれ」という状況もあるでしょう。
しかし、求められた結果を達成することを繰り返す人生は、ただの「精神のすり減らし」に過ぎません。充実した人生を送る可能性は低いです。
まず、自分が主体的に決めた社会性のあるゴールを設定するのが一番最初です。
その上で、誰かに求められた結果は、「自分のゴールにとって達成すべきものなのか?」という物差しで捉えます。
自分のゴールに合致していたら、want toですので、ワクワクしながら相手の期待を超えるパフォーマンスを発揮するでしょうし、自分のゴールに合致しなかったら、上手く離れなければ危険です。
所属している組織の臨場感が強すぎて、求められてる結果を達成しなければならないという生き方をしてしまうと、「今日の目標達成してないから残って働こう」とか「これくらいのことするのは達成のためには仕方がない」などの働き方を招いてしまいます。
究極的には「働き方改革」が声高に叫ばれているのも、上記のような働き方をしてしまうビジネスパーソンが後を絶たないためです。
自分のゴールがないので、エフィカシー(自己のゴールに対する自己の達成能力の自己評価)という概念も芽生えません。
だから「自分以外の価値観」が基軸である受動的な働き方により、身体や精神が壊れていくのです。
エフィカシーが高ければ、「自分の価値観」が基軸ですので、良い働き方になるわけです。
当然「仕事のゴール」以外にも「健康のゴール」も設定しているので、「やりたい仕事の為に寝ないで没頭する」といった働き方は健康に悪いのでしません。
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・自分のゴールに基づいた働き方をする
・「三方よし」を心得て長期的に経営する
・正しい達成感をスタッフに体感して頂く
購買意欲、休日の多さ、節目感など、販売する側としては、イベントやセールを装飾全開にして取り組むべき期間ですが、上記が無いと、「三方不幸」の始まりになってしまいます。
エフィカシーの高い商戦が街中に溢れることにより、より多くの人に商品の価値が届いて、みんながハッピーになることを願って終わりにしたいと思います。
three S coachingブログより転載