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進路指導に関わる基礎理論

進路指導に関わる基礎理論には大きく分けて3つの考え方がある.1つは特性・因子理論と呼ばれるものである.これは1909年にアメリカのパーソンズが唱えた考え方で,生徒の適材適所により進路先を決定することを勧める進路指導論である.個人の持っている特性や固有の能力が,その分野で成功するのに必要な資質や能力に結びつける指導を行う.これは現在でも通用する理論であるが,必ずしも.それに従うとは限らないようなことも考えられる.就職当初は嫌だと思っていた仕事であっても続けているうちに好きになり成功をおさめるようなこともあるからである.資質や能力にあった職業選択をすることは理にかなっているが,それだけで判断することは難しい.
 2つ目は構造(精神分析)理論である.精神分析的な手法により,個人の適職を求めていく理論である.構造理論の中にはフロイトの流れをくむものもある.人間の深層心理的なものが職業選択の動機に結びつくとしている.
 3つめは職業的発達理論である.特性・因子理論や構造理論が個人の特性や心理的な側面に焦点を当てているのに対して,この理論は社会学的な側面からのアプローチを行う.職業選択はある時期のみの一度だけの決定ではなく,小さな前後の連鎖関係からなるとの仮説が立てられている.人間の職業的な発達は生涯を通じて行われ,様々な段階がある.進路指導を,進路選択という限定された枠にとらわれず,生き方の指導にまで広げている.代表的な研究者にはギンズバーグやスーパーが挙げられる.ギンズバーグは調査の結果から,職業選択は10年以上もかかる発達的で非可逆なプロセスであり,個人の欲求とその障害となる現実との妥協をもって終わると指摘した.のちになってから,労働障害の全期間を通じての職業選択と非可逆性は当初考えていたより強くはないこと,現実との妥協ではなく最適化と考えることを提示している.また,空想期,試行期,現実期の3つの発達段階があるとしている.ギンズバーグの研究チームの一員であったスーバーは12の命題を示している.職業的発達は後戻りができず,類型化し予想ができるような過程であると主張している.また,キャリアレインボーなどが有名である.現在では職業的発達理論の考え方が重要となっている.変動の激しい現代は1つの技能を身につければ良いというわけでもなく,また雇用の流動化も起きているからである.例えば,学校を卒業して,職業に従事すると,また仕事を通して新たなキャリアを得て,別の職務に対する動機を持つようなことも少なくないからである.

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