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「第九」200周年 大晦日コンサート
明けましておめでとうございます。
昨年中は、私の思い出話や独り言にお付き合い頂き、ありがとうございました。
また、たくさんの素晴らしい記事を読ませて頂き、心が揺さぶられる瞬間がたくさんありました。本当にありがとうございました。
2025年も、皆さまが健康で素晴らしい日々を過ごされますようご祈念申し上げます。
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2024年はちょこちょこコンサートに出かけたが、大晦日にもコンサートに足を運んだ。
日本でベートーヴェンの第九と言えばクリスマス時期だが、こちらでは大晦日。
合唱付きの第九の初演はウィーンで、1824年5月7日だったそう。
つまり、2024年はちょうど200周年。
今まで私の記事を読んで下さっている方々には既にバレてしまっているだろうが、私はこういった〇〇周年という言葉に弱い。
毎年デュッセルドルフのTonhalleで行われている大晦日コンサートに、早速申し込みをした。
場所は、メンデルスゾーンホール。
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指揮者Christoph Spering。
コーラスと演奏は、Musicus KölnとDas Neue Orchester。
大晦日らしく、綺麗に着飾った人々が集う。
キラキラのジャケットや、スパンコールのドレスのかたもいらっしゃった。
私も、しまい込んでいたハイヒールを引っ張り出し、大切にしている(大切にし過ぎて、ほとんど身に付けない)一粒ダイヤのネックレスで胸元を飾った。
やはり特別な日には、精一杯おしゃれしたいのだ。
さて、第九の演奏時間は74分と言われているのだが、この時間があるシステムの基礎になっているそうだ。
それは、CDの収録時間の長さだ。
60分案と74分案の二つがあったそうだが、当時カラヤンと交流のあったSONYの大賀氏が彼に助言を求めたところ、彼の指揮する第九が一枚に収まるようにと希望があったとか。
発明王エジソンも、いつか第九が一枚のレコードに収まる日が来るだろうと、妻に語ったとも言い伝えられているそう。
この第九にはこのように色々なお話が残っているほど、多くの人に大切にされてきた証拠なのではないだろうか。
第九は四楽章から成り、それぞれのテーマがある。
第一楽章 世界の創造
第二楽章 ディオニソスの世界観
第三楽章 自然の美しさ
第四楽章 喜び
第一楽章は、世界の創造。
混沌とした状態から、何かが生まれる。
モヤっとした音の集まりから、爆発的なメロディーが始まり、それが天地創造なのだろうかと想像できるのだ。
第二楽章は、ディオニソス。
神々と人間の共存の時代を描いたとも言われている。
第三楽章は、自然。
緩やかで美しいメロディーは、人間たちの造り出した悪とは掛け離れた、自然が持つ美しさを表現しているのだそう。
ベートーヴェンの思う自然とは、こんなにも清らかなのだ。
そしてやはり第四楽章、喜びには感動する。
驚愕のファンファーレの後に、第一楽章から第三楽章までの短いフレーズが繰り返される。
それぞれを打ち消す音楽が流れ、第四楽章の
あのお馴染みのメロディーが聞こえてくる。
バリトンの独唱から、歌が始まる。
シラーの詩の前に、ベートーヴェン自ら書き出したこの三行。
O Freunde, nicht diese Töne!
Sondern laßt uns angenehmere
anstimmen und freudenvollere!
おお友よ、このような旋律ではない!
もっと心地良いものを歌おうではないか
もっと喜びに満ち溢れるものを!
やがて、大音量で混声合唱が始まる。
喜びを讃える歌は、なんと心地の良いものだろう。
人の声が楽器と交わり、歌詞はダイレクトにその意味を私に伝えようとやってくる。
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喜びの歌の歌詞のうち『Freude喜び』が『Freiheit自由』に変えて歌われた、バーンシュタインの指揮するコンサートを思い出す。
壁の崩壊と、その自由と喜びを表現するには、この歌しかなかったのではないかと思う。
EU連合が、欧州の歌としてこの歌を定めた事にも、深く納得する。
31歳で自殺を考えたベートーヴェン。
しかし、音楽家としての使命を果たすため、思いとどまったと言われている。
聴力を失い、生きる喜びを失ったベートーヴェンが、二十年の月日を経てようやく見つけた喜び。
そして、その喜びは、分け合わなければならない。
何百万もの人々と共に。
それが、ベートーヴェンのメッセージ、「喜び」と「兄弟」なのだと思う。
人類みなきょうだい。
しかし今、戦争や紛争が沸き起こり、更には移民排除の動きもある中、それは絵に描いた餅かもしれない。
しかし、今だからこそ、この言葉がずっしりと胸に突き刺さってくる。
今一度、この幸せと喜びを、皆で分け合えたらいいのに。。。
第九の歌詞のように、何百万もの人々が抱き合えたらいいのに。。。
私がドイツ語を習い始めたばかりの頃、まだアルファベットでドイツ語の発音を覚えていた頃、私は必死でこの第九の歌詞を丸暗記したのだった。
あれからもう、35年もの月日が経ってしまったなんて。
そしてまさか私が、このドイツという国で暮らす事になるなんて、あの時は想像もしていなかった。
合唱に合わせて、私も心の中で歌う。
歌詞も音楽も、高鳴る胸の鼓動を加速させる。
喜びとは、なんと甘美な響きだろう。
そして、会場の皆さんとその喜びを共有できるのは、なんと幸せなことだろう。
いつの間にか私の視界は曇り、涙がこぼれ落ちた。
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コンサートが終わる頃には、ライン川沿いで花火が上がり始めた。
新年を待ちきれない人達が、花火を上げ始めているのだ。
私は喜びを胸に満タンに詰め込み、デュッセルドルフの旧市街と、その反対岸に打ち上がる花火を見つめる。
来年もきっと良い年になる。
2025年も喜び溢れる日々が過ごせますようにと願い、もう一度花火を見上げる。
コンサートのお陰で、最高な一年の締めくくりを迎える事ができた。
難聴と戦いながらも、このような素晴らしい曲を最後に残してくれたベートーヴェンに、深く感謝した。
そして今一度、世界の平和を心から願った。
その瞬間、大きな花火の音が暗闇に響き渡った。
まるで、私の希望をその音に乗せ、遠くへ飛んで行くかのように。。。
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こちらは、私の好きな第九の動画の一つです。
演奏している方々、そしてそれを聴いている市民の方々、皆さんの笑顔を見ていると、自然と心が温かくなり、私もこの場にいたかったと願ってしまうほどです。
音楽って、本当に素敵なものですね。
ベートーヴェンの生まれた街ボン
最近出かけたコンサート・バレエ。