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アンメット

毎年、毎シーズン、ドラマやバラエティ番組を試聴するほどの気力は、備わっていない。
社会人になってからは、特に番組表などの確認もしなくなった。
好んで視聴するのは、YouTubeぐらい。
さらには、面倒な思考回路をしている自分にとっては、先々を予想できてしまうドラマや、旬の芸能人達が楽しそうに話すバラエティが、時として息苦しい作品に感じてしまうことがある。
いつしか、自分の心に負担がかかりそうな番組視聴は止めてしまった。
矛盾は承知だが、だからと言って、全く視界に入れないわけではない。

つい先日まで、実家に帰省をしていたのだが、最近、父がYouTubeにどハマりし、TV 機器に繋いで視聴できる、万能アイテムをゲットしたとのこと。
ついでに、そのアイテムはドラマなども見られるようで、母が今シーズンのドラマを渡り歩いているところに遭遇。
特にすることもなく、床に転がっている自分。
そんな我が子の姿を横目に、母は
「お母さん、ドラマ見るね。」と、
小さなリモコンを取り、再生ボタンを押した。
ふと、画面に視線を向けると、
(あっ。この女優さん知ってる。)
可愛らしくて小柄な女優さんが、白衣姿で患者さんに病状説明を行なっているシーンが映っていた。

『アンメットーある脳外科医の日記ー』

今シーズンの医療ドラマ。
(⚠︎原作はまだ続いているようです。ネタバレ厳禁な方は、この記事を閉じることを、おすすめします。)
話数は、かなり進んでおり、ドラマとしては最終章に突入していた。
相変わらず床に転がりながら、視線と耳だけは映像に集中させる。
ちょっとだけ、(懐かしいなぁ)なんて、感情が湧いてきた。
看護師の端くれであった自分も、半年前までは、こんな疾患や病態を目にして、少なからず向き合っていた。
しばくして、母は、我が子の視線が映像を捉えていることに気づき、お決まりの解説を始めた。
一話からの内容をさらりと、教えてくれる。
主演女優が演じている女医さんは、どうやら記憶障害。
1日しか持たない記憶。
昔、読んだ本の中でも、そのような内容が何冊かあったなぁ〜と、考えながらドラマを見続けた。
希望と絶望。
明暗。
光と影。
まるで、相反する物事を天秤にかけて、もがき苦しみ、それでも生きていくために、答えを追い求める。
このような考えさせられる作品は、大好物だ。

参ったなぁ。
こりゃ、沼る。

全話を詳しく視聴することは叶わなかったが、ありがたいことにダイジェストというものを発見した。

そして、最終話のシーンの言葉達。
(一部省略してます。)
「世の中も僕達も、兄のためって言いながら、見えないところに遠ざけただけなのかもしれません。そういう想いが消えないんです。
光を当てると影ができます。
アンメット、直訳すると『満たされない』という意味です。
できた影に光を当てても、また新しい影ができて、満たされない人たちが生まれる。
どうすれば、くまなく照らして、アンメットを無くせるのか。その答えを探しています。」

「こうすると、影が消えます。なんかお腹空いてきましたね。日本に帰れたら、ご飯に行きませんか?」

「不安じゃないんですか?」

「不安です。
でも、自分の中に、光があったら、暗闇も明るく見え  るんじゃないかなぁって。だから、お腹が空きます。」

沼る。
繰り返し、繰り返し、自分の中に内容を落とし込む。
どうしようもない感情は、満たされない。
外側に灯した光の先には、影ができる。
なるほど、内側なる、自分の中に光を灯す。
そうして、お腹が空く。
難しいけど、シンプルな考え。

生まれる影全てに、答えを探せなくても、
思いが、うまく満たされなくても、
『私の今日は明日に繋がる』
この言葉を、自分もからだに染み込ませておきたい。
心が憶えていられるように、生きていたい。



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