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湯気

陶器のカップを
両の掌で静かに包む
温かい

立ちのぼる湯気
遠くには灰色の雪雲

柔らかな湯気は
今をケムに巻き
とどまらず

妖艶な現実
温度の幻影

やがて湯気は
窓を白く曇らせる

水滴となり
空を写す
今の実体

掌が
徐々に冷えていく
魂の抜けがらのよう

鼻腔に残る珈琲香は
飽くなき性をさがし
冷たいガラス窓を超え
世界を埋めようとするが

降り始めた雪は
窓にあたっては溶け
あたっては溶けて

溶けていく






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