【 鉄道 】202107 共同制作した小説 【 小説 】
こんにちは。
はれのそらと申します。
今回実在の鉄道をテーマにした創作を上げて見ました。
ですが、字数とか実力的なアレそれの関係でなんかポエムっぽいなにかができました。この鉄道については、必ず後日別テーマで書きます。
今回の分は自戒としてひっそりと出します。
原作 熊右衛門さん
本編 「レール」
レールにのった人生は愉快だ。
1駅目に停車。
レールとホイールが擦れ、軋む。いい音だ。
合図をし、出発する。
2駅目に停車。
少し余裕ができる。
車窓からの景色。
何度も乗って、特定区間の時に車両と車外の緑と重なる。
頭の中で像が結ばれた。
いつのまにか、カメラを手にしていた。
続き
三駅目。人生とか、日常が嫌いだ。でも、鉄道は好きだ。
私は何度も何度も。
シャッターを切り続けた。
わけもなく、心が震える。
退屈な毎日の中で、この瞬間だけは。
カメラを通して、ささいな自分を現像できた。
四駅目。鉄道写真を撮り続け、生きていく。そう決めた。その為に仕事に就いて、休暇にとってとって撮りまくる。
そのつもりだった。
ガガガッガガガッ。
急停車した。
揺れた。
止まった。
周りを見た。
悲鳴。おそれ。
2011年3月11日。
東日本震災。
立っている場所。
未来。
何もかもが急に暗くなった。
レールにしっかりのっていたから。
走っていたからわかる。
大きな大きな支えをなくすと、心ともなくなる。
でも。それでも。
みんながレールを作り始めた。
不器用ながらも。ひたすら前を見て。
叫びにも似た明日への行進だった。
私は…私も、乗り換えをした。
人生をもっと先に。
自分と大切な存在と…そして、大事な列車を運行する為。
みんなを未来の終着駅へ止める為。
私は一つの決意をした。
乗り換えをした。
鉄道マンになる為だ。
それから。
幾度の季節が巡る。
芽吹く。咲く。実をつける。枯れる。
何度も何度も。
路線の復旧も。
人々の面差しも。
首を上げ。
明日を向く。
あっという間ではなかった。
苦労もした。
でも、高校の制服を脱ぎ、鉄道社員の制服に袖を通す瞬間。
あっけなかった。
鏡に敬礼する。
思い描いた夢が実を結ぶ。
鏡から離れ、ふと後ろを振り向く。
自分ではない、昔見た像が掘り起こされる。
白い息。
頼もしい背中。エナメルが光る帽子。
気付けば私は涙ぐんでいた。
誰も知らない、秘匿する思いだった。
次の瞬間。
私は鉄道マンとして、生きていく覚悟を決めた。
終着駅。
私は広報確認をする。
つんざくような警笛。
出発。
始発から。
2駅目に向けて。
(了)