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【色エッセイ#2】私が「白」から思い出すもの1〜10

旅先で出会い、心に残った景色や食べ物、
日常で心動かされたものたちを「色」から捉え直す試み。
私が「白」から思い出すのは、こんなもの。


1.        知床の流氷
冬の知床はどこを見ても眩しい。雪に覆われた大地も、流氷に覆われた海も、太陽を反射して白く明るく輝いていた。
雪の中、トレッキングをしてたどり着いたのは、オホーツク海を望む断崖絶壁。地平線まで流氷が漂う光景は圧巻だった。私は眩しさに目を細めながら、そこに立ちすくんで眺めた。

2.        琵琶湖の真珠
大学生最後の1年は、コロナ最初の年だった。大学には行けなくなり、卒業旅行などもってのほかだった。
そんな大学4年の3月、私は一人で大津を訪れた。地元の方に教えてもらい、訪れた「神保真珠店」のおしゃれな店内には、素敵な淡水パールが並んでいた。
来月から社会人になる、不安でいっぱいだった当時、次はお金を貯めてネックレスを買いに来よう、そんな風に決心して、何とか4月を迎えたという感じだった。
その1年後、私は自分の約束を果たした。

3.        ドーバー海峡のホワイトクリフ
イギリス、ドーバー海峡にそびえるホワイトクリフ。駅から50分程歩いて、ホワイトクリフに登る。途中、白い壁に飲み込まれそうに建つ、カラフルな家並みもあった。
登り切って見た、石灰質の白い壁が続く光景は素晴らしく、青い海、白い壁、壁の上の緑の草木は、どれも優しい色をしていた。

4.        夜桜
闇夜に白く浮かび上がる夜桜。思い浮かぶのは、昔住んでいた家の近くの駐車場の夜桜や、友達と深夜の上野公園で見上げた夜桜、そして井の頭公園でひとりで眺めた雨の夜桜。思い出し、過去はもう二度と戻ってこないのだと、不意に寂しさを覚える。来年も夜桜を見たいなと思う。

5.        陸奥湊の海鮮丼
青森県、陸奥港駅のすぐそばにある「みなと食堂」は海鮮丼で有名だ。小さな町にできる行列に並び、海鮮丼を頂いた。ごはんの上にぎっしりと、名産のヒラメやイカ、ホタテなどが乗せられていた。待ち時間に、種差海岸まで足を伸ばせたほど並んだ甲斐のある、これまでで一番おいしいと思った海鮮丼だった。

6.        雲の中を抜ける飛行機
揺れる機内。雨のロバニエミからヘルシンキに向かって高度を上げていく。さっきまで、灰色の空の下に針葉樹の森が見えていた窓の外は真っ白になった。ちょうどイヤホンからはジョンレノンのCold Turkyが流れていて、今でもこの曲を聞くと、この光景が思い浮かぶ。
雲の上は快晴だった。

7.        シーサイドドライブインのクラムチャウダー
ひょっとすると、今はもうないかもしれない。20年以上前から家族で通った沖縄恩納村のシーサイドドライブイン。でも最後に訪れたのは、10年前だ。
いつも注文するのはクラムチャウダー。美味しくて、今でもたまに食べたいと思うことがある。
また家族で行ける時は来るのかな。

8.        タンペレで見た雲
フィンランドを一人で旅行していた時に訪れたタンペレは、2つの湖に囲まれた街。私は白樺の木陰の湖畔で、ただ湖を眺めていた。湖は、きれいに浮かぶ雲を映している。
その後、湖畔を歩いて岩盤をよじ登って見つけたのが、岩の上の特等席。私はそこに寝そべって、タンペレの湖、岩、空、風を感じながら、流れる雲を眺めた。

9.        テートモダンの白い壁
ロンドンのテートモダンで特に心に残った作品が、白い壁にいくつも書かれたメッセージだ。
“It’s easy to remember your power.”
“It’s easy to do the work you want to do”
“It’s easy to be in bed all day”
“The world I want is filled with ease”
心がふわっと温かくなる。

10.     呼子のイカ
呼子で滞在した宿の豪華な夕食のメインは、イカの活け造り。ごめんなさい、と言いながら、まだ透明に近い、動いているイカを口に運んだ。
翌朝、あの有名な朝市に行くと、至る所でイカが干されていて、イカは赤味がかった色をしていた。「生」の色は、何とも美しいのだと、このとき思った。


白はたくさんの思い出があって、まだ書ききれない。青、赤、緑など、他の色からも捉え直す予定だ。


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