【超短小説】年雄とパンクロック

年雄はパンクロックが好きだ。

理由がある。

15歳の時、救われたからだ。

好きといっても、詳しい訳ではない。

聴いてる頻度も、恐らく人並み。

「だったら好きだとか言うな!バカ!」って言われたら、「バカは言い過ぎ!」としか返す言葉がない。

でも好きには変わりないから仕方ない。

年雄15歳。思春期。

年雄は何かと、自分と人とを比べるようになっていた。

人と比べると、"自分は人より劣る"と思うようになり、毎日敗北感を感じていた。

そんな時、耳にした音楽がパンクロックだった。

"彼らは戦っている"そう感じた。

何と戦っているのか?

"敗北と戦っている"

そう思った。

「全然違うよ!バカ!」って言われたら「バカは言い過ぎ」としか返す言葉がない。

でも、年雄の心の霧が晴れたのは間違いない。

年雄は救われた。そんな気がした。

それから年雄は、落ち込むとパンクロックを耳に流し込む。

浜本年雄40歳。

朝起きると膝が痛む。

朝からパンクロック。

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