【超短小説】年雄、ハンバーグを食べる

お昼はハンバーグの気分だ。

年雄はそう思って、お店を探した。

個人でやってる雰囲気のあるお店。

年雄はそんなお店を見つけた。

しかしお店に入った瞬間、"しまった"と思った。

お昼時なのに、お客が1人もいなかったからだ。

一瞬入るか迷ったが、店員さんがすぐに接客を始めた。

「ここの席どうぞ」

昔派手に遊んでいたかのような雰囲気のあるおばちゃん店員。

「ここのおすすめは、デミグラスハンバーグよ」

年雄がメニューを見る前にそう言われた。

年雄はデミグラスハンバーグを頼んだ。

しばらくすると、店員が「ほーら、聞こえてきたよ。本物の音」と言ってきた。

なんの事か分からなかったが、どうやらハンバーグを調理する音の事らしい。

出来上がったハンバーグを店員が持ってきて「どうぞ。本物のハンバーグ」と言って年雄の前に置いた。

「ウチのハンバーグは本物だから、まずはソースをかけずにそのまま食べて」と言われた。

年雄はデミグラスハンバーグを頼んだのに、デミグラスソースをかけずに食べる事に違和感を感じたが、言われた通りにした。

年雄が一口食べるのを見て、店員は「本物でしょ?」と聞いてきた。

年雄は「はい」と答えたが、偽物を食べた記憶がないので、よく分からなかった。

ハンバーグを食べ終わりお会計をして店を出た。

食べてる最中の質問攻めに、食べた気がしなかった。

浜本年雄40歳。

年雄は思った。

ハンバーグは本物でも、店員は偽物だったんじゃないかと。

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