【超短小説】年雄は運がいい
仕事がお昼で終わった。
運がいい。
このまま帰る気にはなれなかったので、現場近くの知らない町を散歩する事にした。
緑の多い町で、ぽかぽか陽気。
運がいい。
こういう時の散歩のルール。
携帯で地図を確認しない事。
行きたい方向にふらふら散歩。
どこに行き、何を発見するかは運次第。
角を曲がると、大セール中の服屋を発見。
運がいい。
ダウンジャケット50%引き。
最後の1着を発見。
運がいい。
サイズは大きめ・・・まぁいいでしょう。
これから暖かくなるから、今年は着る事はないかな・・・まぁいいでしょう。
買いで。
なんたって半額。
運がいい。
来年着るさ。
年雄の家に近づく頃、辺りはすっかり暗くなっていた。
気温もグッと下がる。
昼間暖かかったせいで、年雄は薄着。
でも、年雄は運がいい。
さっきダウンジャケット買ったから。
早速着る事になるとは。
運がいい。
今日はずっと運がいい。
朝、自転車盗まれた事以外は。
浜本年雄40歳。
運が良くても、自転車を盗んだ犯人は許さない。