【超短小説】年雄、賛成と反対
賛成したはいいが、時間がたち状況が変わると反対したくなる時がある。
年雄はその悩みを抱えていた。
会社で、新しい清掃器具を買う事になった。
とても高い最新の清掃器具だ。
でも、現場の作業員のほとんどは「そんな物いらない」「逆に効率が悪くなりそう」と反対の声をあげていた。
新しい物は、最初は使い方も分からず、慣れるまでは効率悪く感じる。
なんでもそう。
普通は今の環境が変わる事は好まれない。
でも年雄は違った。
良かろうが悪かろうが、使ってみない事には分からないと思っていた。
年雄は説得した。
「新しい物を怖がってはいけない。使ってみないと何も分からない」
会社と年雄、賛成派は説得に成功し、新しい清掃器具を買う事になった。
でも、買うちょっと前に状況が変わった。
買う予定の物より、2ランクグレードを下げた物を買うと会社が言ってきた。
安いからだ。
年雄は"それなら反対"と思ったが、皆んなを説得した手前、言いづらくなっていた。
反対を賛成にした男。
今度は反対したい男。
年雄は悩む。
浜本年雄40歳。
文句言われたら、「ごめんにゃしゃい」と可愛く謝ろう。