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中谷宇吉郎「イグアノドンの唄」
今日は雪が降るぞと騒がれていたこともあり、今朝は中谷宇吉郎の随筆集「雪は天からの手紙」を本棚から引っ張り出して家を出た。
中谷宇吉郎は世界で初めて雪の結晶を人工的に作った実験物理学者で、氷雪学の父。学者としての研究活動に留まらずたくさんの面白いエッセイを残している。
無数の中谷宇吉郎作品の中でも、代表作は「雪の十勝」だと思う。今日の寒々としたJR青梅線のホームで電車の待ち時間が長かったこともあって、仕事を少しだけさぼって雪の十勝を読むことにした。結局のところ雪は降らなかったけれど、すごく冷え込んでいたし、朝からの目論見に近いことはできたように思う。
今日持っていた随筆集の最後に収録されている「イグアノドンの唄」はまだ読んでいなかったみたいで、初めて読んだ。
イグアノドンの背中に ゴリラが乗ってった 乗ってった
(イグアノドンの唄より)
6節に分かれるエッセイの内容としては、中谷宇吉郎が三人の子どもたちにイグアノドンが登場する架空の物語(小説 ロスト・ワールド)を読み聞かせする話だ。そこで描かれる情景もまた厳しい冬の北国で、こういう寒い日に読むのにもってこいだと思った。
思い返せば中谷宇吉郎を知ったきっかけは、娘の中谷芙二子の作品展だったのだけど、このエッセイに出てくる幼い次女が中谷芙二子なわけでなんだか胸が熱くなった。
娘さんは霧の彫刻家で空間に人工霧を作る作品群を発表している。この父あっての娘ありみたいなところもまた嬉しくなる。
すっかり忘れていたけれど、そういえば学生の頃から20世紀の物理学者や数学者が書くエッセイの時代感や雰囲気が好きだったように思う。この歳になった今の方が読んでいて味わい深いと感じる冬の寒い日だった。