【敗北の意味を知るため】
決して傑作ではないが、妙に心に残るシーンがあって嫌いになれないという作品がいくつかある。私の中でその筆頭が「仮面ライダーBLACK SUN」(注1)だ。
仮面ライダーBLACK SUNは2022年にAmazonプライム・ビデオで配信された映像作品で、1987年から放送されていた特撮ドラマ「仮面ライダーBLACK」(注2)のリブート作品である。
特撮ファンの中でもそのシリアスな作風の評価が高い仮面ライダーBLACKのリブートであること。西島秀俊氏や中村倫也氏をはじめとした豪華出演陣。
そして「孤狼の血」シリーズや直近話題となった「極悪女王」などのバイオレンス色の強い作風で知られる白石和彌氏が監督を務めることが発表され、特撮ファンのみならず映画ファンを配信前は沸かしていた。
しかし配信後は賛否両論の感想が分かれる作風になった。私も全話視聴したが、どちらかというと非よりの感想だ。詳細はリンク先の記事(注3)などを拝見してほしいが、特定の政治思想の風刺が強く、「それ必要か?」という唐突な監督の過去作のオマージュ、そして展開に関しても「え?何故急にそういうことになったの?」と描写不足を感じてしまうようなところも多く結末も含めてなかなか切ない仕上がりのように感じてしまった。
原作の仮面ライダーBLACKを視聴していないこともあるかもしれないが、これは、、、という評価を持ってしまった。
しかし上述しているように私はこの作品を嫌いになれない。妙に心に残るシーンがあるためだ。それは最終盤、連戦で瀕死の主人公が最後の戦いに赴こうとし、それをヒロインが止めようとするシーンがある。
「自分が戦う、自分は今まで亡くなった周りの人の意思を受け継いでる」というヒロインに対して主人公がこう返す「俺も受け継いでいる、過去の自分が今の自分を見張っている。敗北の意味を受け継いでいる」
このシーンがとても印象に残っている。「敗北の意味って何?」と理解できなかったからだ。正直今も作り手が意図した内容として理解できている気がしない。
だが、この言葉は私の中で残り、過去の失敗を思い返したときに思い出す。何かに挑んで負けたり、失敗したり苦しい想いをしただけだったのに
何故過去の自分はそんなことをしたのか?と。そこにある初期衝動こそが「敗北の意味」なのかと。
これは個人的な解釈でしかないし、恐らく全く異なる感じ方や理解をした人もいるだろう。そういうものだと思う。
作品そのものは個人的にはまらない部分も多かったが、この言葉を私にくれた仮面ライダBLACK SUNを決して私は完全否定することはできない。白黒つける事が求められる時代だが、灰色なものは個人の中で持っても良いと思う。
(注1)
https://www.kamen-rider-official.com/blacksun/
(注2)
https://www.kamen-rider-official.com/riders/31/
(注3)
https://dic.pixiv.net/a/仮面ライダーブラックサン