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たった「6分の1」を楽しむだけでは、もったいない(3分間クラシック#3)

3分間で、カップラーメンが出来上がるのを待つ時間で、クラシック音楽のすそ野を広げることはできるのか?
今回は、あの名曲が含まれる作品を、もう少し楽しむために、3分間だけ聴いてみる。


スメタナの「モルダウ」。
恐らく多くの方はご存知であろう。それだけ有名。その理由は多くの人の心を打つものがある作品。私も間違いなく、これは名曲だと思っている。

「モルダウ」は、「わが祖国」という6つの曲が集まった作品の中のひとつである。

では「わが祖国」に集まっている、「モルダウ」以外の5つの作品は?
と問われたら答えが出て来ないだろう。「モルダウ」が単独で演奏されるコンサートもあるが、「わが祖国」全曲が演奏されるコンサートへ行くと「モルダウ」は第2曲目に登場する。

「ああ、やっぱり素晴らしい曲だ」

と深い感動を覚えながら、ふと感じるのは
「あと残り4曲もあるけど、知らない曲ばかりだぞ」ということ。
そして、その所要時間は約50分もある。

待ち構える苦難の道。いつの間にか眠りの国へ旅してしまって。。。コンサート終了時には、あの感動的な「モルダウ」の印象がすっ飛んでしまうかもしれない。

でも「わが祖国」は「モルダウ」以外の作品も素晴らしく聴きどころあるのだ。最初の「ヴィシェフラド」も美しいハープの冒頭が印象的。ただ「モルダウ」が上に突き抜けてしまっているだけだ。「モルダウ」が終わってしまって迎える苦難の道ではなく、もう1曲だけでも、お楽しみを作っておくのはいかがだろうか。

ということで、

スメタナ/連作交響詩「わが祖国」 第3曲「シャールカ」

37分から40分まで、3分間お聞きください。

演奏:WDR交響楽団
指揮:セミュヨン・ビシュコフ

静から徐々に高まる、なかなかカッコよくて勇壮な音楽は、とてもワクワクするのではないだろうか。

①舞曲風の音楽が徐々に弱まる(37分)
②ファゴットが「ブォー」という調子外れの音を吹く(37分10秒から3回)
③ホルンのファンファーレ(37分32秒から2回)
④クラリネットの悲しげで哀愁ある旋律とそのバックに流れる弦の小刻みな音(37分45秒)
⑤弦の小刻みな音が徐々に高まり勇壮な音楽になる(38分22秒)
⑥テンポが更に早まりフィナーレへ(39分06秒)

そもそも、「わが祖国」は6つの交響詩が集まっている。交響詩とは、物語を音楽で表現したもの。「モルダウ」もモルダウ川(現地チェコ語ではヴルタヴァ川)が小さな雫からはじまり、だんだん大きくなって雄大に流れていく様を表している。だから、他の作品も同じように物語が背景にあるのだ。

では、第3曲「シャールカ」はどんな物語なのか?

アマゾネスの中の「シャールカ」が、自らの体を木に縄で縛り付けて泣いていると、そこを通りかかった、自らの部族の敵軍隊長「ツチラド」とその部下がシャールカを助ける。そのお礼にシャールカは彼らに酒をふるまう。そして

・楽しい酒盛りが行われ、シャールカは踊りを踊る。
  →①舞曲風の音楽。
・次第にツチラドたちは酔って眠り、いびきをかいて寝てしまう。
  →②ファゴットが「ブォー」という調子外れの音を吹く(いびき)。
・シャールカは角笛で仲間に呼びかける、仲間も角笛を返す。
  →③ホルンのファンファーレが2回。
・シャールカの積年の想いがシャールカの心をよぎる。
  →④クラリネットの悲しげで哀愁ある旋律と弦の小刻みな音。
・シャールカの仲間たちが遠くから近づき、そして急に現れる。
  →⑤弦の小刻みな音が徐々に高まり勇壮な音楽になる。
・シャールカとその仲間は、寝ているツチラドとその部下に襲い掛かり皆殺しにしてしまう。
  →⑥テンポが更に早まりフィナーレへ

※上記は、私独自の解釈も含まれる。

「シャールカ」は、なんとも恐ろしい物語の音楽だったのだ。コンサートで、うかうか居眠りしてはいけないのだ。

「モルダウ」が終わっても、次のお愉しみである「シャールカ」をワクワクしながら聴いてみていただきたい。もちろん、あとの3曲も素敵な作品。各作品の背景を事前に勉強いただいてから聴くと、きっと楽しいと思う。

(SusbanyによるPixabayからの画像)

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