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「客席にピンポン玉が飛んできます」という注意アナウンスで開始された日本初演の作品を聴いた(コンサート鑑賞記)
「演出上、客席にピンポン玉が飛んできます。あらかじめご了承ください」
という開演前アナウンスはだれも聞いたことはないだろう。
そのアナウンスの後、演奏されたアキホ作曲「ピンポン協奏曲」の日本初演を聴き、そして見た。
今回聴いたコンサートは
ピンポン・コンチェルト・コンサート
・A. アキホ:ピンポン協奏曲
卓球/上江洲光志(琉球アスティーダ)、卓球りんちゃん(インフルエンサー)
打楽器/関 聡、ヴァイオリン/高松亜衣
・W.A.モーツァルト:ピアノ協奏曲第12番イ長調 より 第1楽章
ピアノ/Anar Galt
▪︎ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調 より 第4楽章
S)根本真澄、A)十合翔子、T)岸野裕貴、B)田中雅史 Cho)コーロ・オラシオン
指揮/岡本陸、管弦楽/タクティカートオーケストラ
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今回、日本初演されたアンディ・アキホによる「ピンポン協奏曲」。
アンディ・アキホは2022年と2023年のグラミー賞現代クラシック作曲部門にノミネートされたという若手の作曲家。通常の打楽器だけでなく鉄パイプや空き瓶などを取り入れた打楽器作品をメインに作曲しているようだ。
「ピンポン協奏曲」はすでにYouTubeにも動画がUPされていることは知っていたのだが、敢えてそれは見ず、生演奏でこの変わった音楽を見て聞くことにした。
ステージ上に卓球台がドン!と置かれているのはいつものコンサートとは違い、さすがに違和感を覚えたが、これから演奏される日本初演の作品への期待感に変わった。
![](https://assets.st-note.com/img/1735469234-UYpZwaOvW8dbIyRKtM5eqJs9.jpg?width=1200)
今回のコンサートのチケットであるが、1階中央前方席はVIP席として販売されていた。何がVIPかというと「ピンポン玉が飛んでくる」席だからということである。まさにこの作品を見て聴くだけでなく「体感できる」席ということだ。
卓球選手のもの凄いスマッシュを直に受けられるかもしれない、という魅力も感じたが、やはり全体を俯瞰して見てみたいということの方が優先だったので、きっとピンポン玉は飛んでこないであろう2階の席を選択した。
演奏が始まった。
最初から卓球選手は登場しておらず、数分してから卓球選手が下手と上手から卓球台を挟むように登場した。
いよいよラリーが始まる。
そう言えば、わたしはこれまで卓球選手の素晴らしいラリーを生で見たことが無い、ということに気が付いた。
テレビでは何度も見ているが、あんなに綺麗に正確によく打ち返せるものだと、初めて聞く音楽とは別の初体験に感動を覚えた。
素晴らしいラリーは適当ではなく、開始と終了、そして速さがちゃんと指定されていてスピードが場面によって異なる。ラケットやタンバリンなどで打つ音もそれぞれ音色音程が異なるものであり、大太鼓にスマッシュを打ち込んだりして卓球台とは違う音を出したりと、音楽作品の見事なソリストであり、併せて視覚的なパフォーマンスでも楽しませてくれるという意味になるのだ。
あれこれ説明するより動画を見たほうが伝わるとは思うが、生演奏でしか感じることができないのは、あのピンポン球が発するコツコツという硬質で乾いた音の響きとリズム、ステージ上や客席に落ちたピンポン球はバウンドを小さくしながらリズムが早くなり無くなっていく。
最後は数百のピンポン球がぶちまけられ、それもピンポン球によってさまざまなリズムで重なり合い消えていく。その響きがホール中に響き渡ることで、まさに現代音楽の大きな要素であるミニマルや偶然性という要素も含んだものであった。
それにしても卓球選手は普段やらないようなプレイを行うわけだから試合以上の緊張を持って卓球台に向かったことだろう。
ピンポン球だけでなく、ものすごいテクニックで様々なものを叩き続けたパーカッション・ソロ、そして複雑なリズムと旋律を奏でたヴァイオリン・ソロも素晴らしいものだった。
使用された大量のピンポン球であるが、休憩時に回収され、終演後に投げ銭をしたお礼としてひとつ頂戴することができた。
アキホ/ピンポン協奏曲の初演時の動画はこちら
別のピンポン協奏曲も発見した。こちらはなんと卓球のゲームがステージ上で行われているのが面白い。
鐘耀光(チュン・イウクォン)Yiu-Kwong Chung 作曲
HeungSoonによるPixabayからの画像