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読書メーター 2024/6

6月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:3802
ナイス数:13

近代美学入門 (ちくま新書 1754)感想
近代以降から現代を取り除いた範囲。美と崇高と絵になる風景を並列。西洋美術(観)のみを題材にしているが、それは現在の美への価値観は西洋で、ここ300年で形成されたものにすぎないと相対化するためだという。随所にある要約が端的かつ明快で、文章に力強さを感じた。ただこれは、コトバにしやすい内容を中心に「美学」としているということかもしれないとも思った。


読了日:06月01日 著者:井奥 陽子



処女懐胎: 描かれた「奇跡」と「聖家族」 (中公新書 1879)感想
カラー口絵が23個、モノクロ絵は30、18、24、24と豊富。第二章の無原罪の御宿りはあまり聞いたことが無く、新しく知れて良かった。聖書解釈や神学的な立ち位置と、社会の中の家族の形態が結んであった。 この結び付けを量的な観点からも見せて欲しかった。絵画のモチーフの種類としては社会の変遷と連動してそうだが、伝統的な描き方がどのくらい並行して残っていたかが分からないので。


読了日:06月06日 著者:岡田 温司


Chatter(チャッター): 「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法感想
ネガティブ思考がループして袋小路に陥らないためには、ズームアウト、試練だと捉えなおす、書くか喋って客観視、大きな世界の小さな自分を想像、お守り、儀式(慣習or自身での組み立て)。他者のを鎮めるには、感情面と認知面(同調と具体的な解決の提案)のバランスを整える、間接的な支援(目の前以外で家事を手伝ったり、第三者に悩める人の困難に類似する質問をする)、愛情をもって触れ合う、ヒーローだと思い込むよう伝える。


読了日:06月10日 著者:イーサン・クロス


「論理的思考」の文化的基盤 4つの思考表現スタイル感想
目的(技術⇔価値)と知識(体系的⇔経験的)の2つを二分して、思考法を4象限に区分している。パラグラフライティングの特異さを節々で思い知らされ、学術的な文章以外との相性の悪さを感じた。結論でも長所・短所を超えた比較や、思考法の使い分けを示唆していて、しっくりきた。このレビューも日本式だろう。 テレビCMの構成とも関連してそうな気がする。また、文化人類学が西洋で生まれ、中立進化説が日本人から提唱されたのもある種の必然性を感じる。


読了日:06月11日 著者:渡邉 雅子


能力はどのように遺伝するのか 「生まれつき」と「努力」のあいだ (ブルーバックス)感想
0か100かで語られやすい遺伝か環境かは、ほぼ全ての能力において両方関係していて、その内訳も様々なことが確率や統計分析を介して示されている。生まれは育ちを通じて。「能力」とは社会的な要請や個々人の価値観が色濃く反映される点や、環境と遺伝の影響は単純な足し算ではないという「交互作用効果」、ひいては環境と遺伝もまたその発言度合いを互いに影響し合うという知見を得た。現状を肯定しつつも、一元的な能力測定に否定的な議論で結び。 文末がやや冗長気味だったが、おそらく著者が英語に慣れ親しんでいるせい。段落の取り方も変。

読了日:06月13日 著者:安藤 寿康


日本人の英語 (岩波新書)感想
p19「日本語で考えるときにも「a+名詞」と「名詞」とは異なる単語であることを認めるのがもっとも現実的だと思われる」。一つの固形物を思い浮かべるときは、(名詞ではなく)aが先に出てくるそう。14章では関係詞だけでなく、前置詞の感覚も養われた気がして良かった。19章では論理を大切にする英語の感覚と、日本語と英語での繋ぎの言葉の入れ方の違いを知れた。
読了日:06月21日 著者:マーク・ピーターセン



東洋医学はなぜ効くのか ツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム (ブルーバックス B 2261)感想
鍼灸漢方薬。基本的には神経を刺激することで過剰なフィードバックを抑えたり、炎症反応を軽減することで、中庸を目指す。サイエンスライター的な人が書いているので、全体的に読みやすいだけでなく、つまずきやすいところの再確認や、飛びし気味でいいとこも教えてくれている。ただ載っている具体的な生理学的な機構はかなり本格的。
読了日:06月21日 著者:山本 高穂,大野 智


文庫 フランス革命の代償 (草思社文庫 セ 3-1)感想
原著者は「修正派」という、革命の最初期の理念は良いが、1793年の革命を民衆の介入と恐怖政治として評価しない立場という。しかし、そこまで否定的な立場とは思えなかった。イギリスに対するこの時期の遅れを強調しすぎだとは思ったが、恣意的なデータの引用などは無いように見えた。革命の(数値に出ない)質的な功績にあまり触れられていないのはそうだが、人材や文化財の流出や、この頃の地方民の中央の情勢への無関心など、一般民衆に寄り添った目線というのを意識しているように思う。
読了日:06月21日 著者:ルネ・セディヨ



ナポレオン――最後の専制君主,最初の近代政治家 (岩波新書)
読了日:06月23日 著者:杉本 淑彦





図解・天気予報入門 ゲリラ豪雨や巨大台風をどう予測するのか (ブルーバックス 2181)
読了日:06月24日 著者:古川 武彦,大木 勇人





Sleep: A Very Short Introduction (Very Short Introductions) (English Edition)感想
睡眠の生理学的な話から社会的な話へ。I am especially interested in the topic of shifting circadian rhythms to adapt jetlag.
読了日:06月26日 著者:Steven W. Lockley,Russell G. Foster




気候変動を理学する【新装版】感想
時間スケールを多彩かつ丁寧に扱っている。11年の太陽黒点サイクルや間氷期氷期などが出てくるが、温度、海流、氷床、気候との関係を一つ一つひも解いてくれている。p276「地球表層は様々なサブシステムから構成されていて、ある特定の信号に対して敏感なサブシステムが存在すると、たとえその信号が微弱であっても、そのサブシステムが持つ正のフィードバックにより増幅されて大きな信号になり、別のサブシステムにも伝わっていく」が一番の発見。取り扱う話題も多く、一章の数式に面食らうかもしれないが、広く読まれてほしい本。
読了日:06月29日 著者:多田 隆治



科学史の逆遠近法: ルネサンスの再評価 (講談社学術文庫 1163)感想
勝利者史観とそれを回避していると標榜する人の一部を否定する。過去の科学者は未来の科学のための準備をしていたのではなく、各々が(当時の)最新の知見を掛け合わせていた。それを汲み取る作業を「正面向き」と表現し、中世から近代にかけて追っている。本書もまた、著者が否定する「遡及主義」をキリスト教、魔術、異教、錬金術、数秘主義のアマルガネーションにおいて行っているようにも見えるが、各時代の著名人を、現代科学への寄与度を度外視して取り上げることで「正面向き」の流れを担保している。
読了日:06月29日 著者:村上 陽一郎

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