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東京を歩く#4 下町の谷中、秘境の上中里

今回の目的地は昔ながらの街並みが残る下町の谷中やなかと、23区の秘境と言われる上中里かみなかざと。都内を歩くのも4回目なので、ちょっと渋い行き先にも足を伸ばすことにした。

前回は新橋駅をスタートして都内一等地である銀座を抜け、そのまま北上して上野公園まで歩いてきた。JRの山手線や京浜東北線に沿うように歩いて来たが、今回はこれらの路線をさらに先に進むことになる。

前回はこちら↓

2024年7月後半の今日は夏真っ盛りで、日中はかなり気温が高くなる予報であることを踏まえて朝の早い時間帯から歩き始めることにした。今回のスタート地点はJR上野駅。公園口にある駅舎はかなり新しい見た目だが、これは2020年にリニューアルしたものなのだそうだ。

JR上野駅 公園口

駅のすぐ前から上野公園に入ることができ、歩いていくと左手に国立西洋美術館が見える。本館はル・コルビュジエの設計。
まだ開館前の時間なので人はおらず、前庭に並ぶオブジェを遠めに眺めて通りすぎることにした。

両脇はカレーの市民(左)と弓をひくヘラクレス(右)

国立西洋美術館のすぐそばには国立科学博物館。科学の本でしか見たことのないものを、答え合わせをするように実物を見ることができるこの博物館は、いつ来ても楽しい。建物の外にあるシロナガスクジラの実物大モニュメントもとても印象的だ。

シロナガスクジラのモニュメント

上野公園の中央方向に歩いていくと、大きな通りとその中に大噴水。その先に見える東京国立博物館は日本最古の博物館であり、所蔵されている国宝の数も日本一。大噴水との位置関係は完璧で、大噴水越しの東京国立博物館はとても絵になる。

大噴水の向こうに東京国立博物館

上野公園がある一帯の土地のほとんどは、もともと寛永寺というお寺が持っていた土地だった。寛永寺は徳川家の菩提寺なので、鶯谷駅の近くまで足をのばすと、5代将軍綱吉のお墓8代将軍吉宗のお墓がある。

さらに北西方向、日暮里駅のある方向に向かって歩く。東京芸術大学のキャンパスを両脇に見てしばらく歩くと、広大な谷中霊園に到着する。ここには15代将軍の慶喜のお墓がある。

両側に見えるところすべて谷中霊園

徳川慶喜のお墓は、案内もたくさん出ているのでそれに従って歩いて行けばよい。案内の先に、石が円形に積まれた独特な形のお墓がある。

15代将軍 徳川慶喜の墓

谷中霊園は有名人のお墓がたくさんあることで知られており、新しく一万円札の顔になった渋沢栄一のお墓もある。周りのお墓と比べるとかなり大きな区画に渋沢一族のお墓は並んでいる。明るくて広々した感じは、徳川慶喜のお墓よりもいい立地かもしれない。

渋沢一族の墓。真ん中が渋沢栄一

谷中エリアには、谷中銀座と呼ばれる商店街がある。谷中霊園の方から歩いて行くと、商店街に入る手前で階段を下ることになるが、この階段には夕焼けだんだんという名前がついている。視界が開けており夕焼けが綺麗に見えることからついた名前で、映画やドラマの撮影場所にもなっているようだ。

夕焼けだんだん

谷中銀座は昔ながらの街並みが残る商店街として知られているところで、最近は外国人観光客もたくさん訪れているようだ。
また、谷中は昔から猫が多く住みついていた所のようで、猫の街としても知られている。商店街の脇や屋根の上には、七福猫と呼ばれる7匹の木彫り猫が隠れている。

七福猫の1匹。商店街ののぼりにも猫

谷中銀座を抜けると、よみせ通りという別の商店街に出る。ザ・地元の商店街という印象で、これはこれで谷中銀座とは違ったなつかしさがある。

田端駅の近くまで来ると、東覚寺があり、入り口付近には赤紙仁王と呼ばれる石でできた2体の金剛力士像がある。石像にたくさんの赤い紙が貼られていることからこのように呼ばれているわけだが、この赤い紙は体の悪いところと同じ場所に貼ることで治癒を祈願したものであって、日によっては全身が真っ赤になるほど貼られていることもあるようだ。

2体の赤札仁王

東覚寺の右側の坂を上っていくと、JRの山手線と湘南新宿ラインの線路にぶつかる。近くに踏切の音が聞こえるが、これは第二中里踏切。山手線唯一の踏切であるが、近くで工事が進んでいる陸橋が完成したらこの踏切は撤去される予定になっているそうだ。

レア踏切。渡るなら今!

今回の目的地である上中里までもう少しだが、すぐ近くに旧古河庭園があるので寄っていく。庭園の中に建つ洋館はジョサイア・コンドルの設計で、明治時代の政治家陸奥宗光も住んだことがある。庭園の方はバラの名所としても知られており、洋館に貼られた黒めの本小松石とバラの相性は良さそう。是非ともバラが咲くシーズンにまた来てみたい。
入園料は150円だが、建物の中を見るにはそれとは別に見学料金と予約が必要になるので注意。

旧古河庭園の洋館

蝉坂という名前のついたカーブした坂を下ると上中里駅がある。JR東日本が2023年に開催した秘境駅スタンプラリーのスタンプ駅に選ばれた5駅のうちの1つであり、2023年の統計では、1日あたりの乗降客数は23区のJR駅の中で少ない方から2番目となっている(1番目は越中島駅)。知る人ぞ知る駅と言え、私も来るのは今日が初めてだ。

23区の秘境駅、上中里駅

駅舎の隣に見える歩道は上中里駅の北側につながっている。上中里駅は南側と北側の高低差が大きく、北側へ行くには歩道の突き当りでエレベータに乗るか、長い階段を下っていく必要がある。

駅の北側につながる長い階段

こうしてたどりつく駅の北側は上中里2丁目。このエリアは、南側に京浜東北線や東北新幹線の線路が通り、北側に宇都宮線や高崎線が通るため、鉄道路線に挟まれた状態になっている。線路を川に例えるならば、上中里2丁目は中洲のような場所になる。

上中里2丁目は閑静な住宅街。歩いていると車が通る音よりも電車が通る音の方が身近に感じる気がするのは、周囲を線路に囲まれていることのほか、車でこのエリアに来るための出入口が限られているために車通りが少ないためだろう。そのような出入口の一つが梶原踏切であるが、すぐそばにJR東日本の尾久車両センターがあり車両の出入りの際には遮断機が閉まりがちとなることから、近くに歩行者と自転車専用の上中里さわやか橋もある。

梶原踏切と上中里さわやか橋

上中里さわやか橋の上からは尾久車両センターを眺めることができ、遠くにはスカイツリーも見える。

夏の尾久車両センター

車両センター沿いを歩いていくと、タイムカプセル平成ロードというすごい名前の地下通路が現れる。この地下通路も歩行者と自転車専用であり、線路をくぐって反対側の尾久駅まで行くことができる。

タイムカプセル平成ロード

地下通路を抜けて地上に出ると、目の前には明治通りがある。上中里の静寂さから離れて、久しぶりに大通りに来た気がする。この久しぶり感がタイムカプセルなのかもしれない。

帰りは尾久駅から上野東京ラインに乗る。
今回のルートは大都会東京において決してキラキラしたエリアを巡るものではなかったけれども、また違った東京の一面を見ることができた気がする。東京の中にも訪れたことのない場所はまだまだたくさんあるようだ。

尾久駅も乗降客数は23区内で下から4位(2023年)

旅のスタンプ
[訪問:自治体]東京都北区


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