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チームの心理的資本が新製品開発チームの適応性をどう高めるのか:論文レビュー

こんにちは、原田です。
今回は、チームの心理的資本と新製品開発チームの適応性の関係についての論文です。

心理的資本(PsyCap)とは:
希望(hope)、自己効力感(self-efficacy)、回復力(resilience)、楽観主義(optimism)という4つの要素から構成される、個人やチームの肯定的な心理状態を指す概念。この概念は、従業員やチームのパフォーマンスを高める重要な心理的リソースとして広く研究されている

【参考文献】

  • Luthans, F., Youssef, C. M., & Avolio, B. J. (2007).
    Psychological capital: Developing the human competitive edge. Oxford University Press.
    この著書では、心理的資本の概念が体系的に提示され、希望、自己効力感、回復力、楽観主義が一体となって、個人の成功を予測するポジティブな心理状態を構成することが説明されている

  • Avey, J. B., Luthans, F., & Jensen, S. M. (2009).
    Psychological capital: A positive resource for combating employee stress and turnover. Human Resource Management, 48(5), 677–693.
    この論文は、心理的資本が従業員のストレス軽減と離職防止に役立つことを実証的に示している。特に、職場における心理的資本が従業員の行動にどのように影響するかを検証している

  • Stajkovic, A. D., & Luthans, F. (1998).
    Self-efficacy and work-related performance: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 124(2), 240–261.
    この論文は、心理的資本の1要素である自己効力感(self-efficacy)が仕事のパフォーマンスにどのように影響するかをメタ分析によって示している

今日の論文

Psychological Resources and New Product Development Team Adaptability: A Moderated Mediation Model
心理的資本と新製品開発チームの適応性: モデレーション付きメディエーションモデル
Small Group Research, 2024
Dominic L. Marques, Caroline Aubé, Vincent Rousseau, Eric Brunelle

サマリ

  • 新製品開発(NPD)チームのパフォーマンスにおける適応性の重要性にもかかわらず、NPDチームの適応力を促進する要因に関する実証研究は限られている

  • 本研究は心理的リソース理論に基づき、チームの心理的資本(PsyCap)がNPDチームの適応性をどのように、またどのような条件で高めるかを検討する

  • 198の学生チームから収集したデータによると、チームPsyCapと適応性の間の正の関係はチームの創造性を介して進み、その関係の第一段階がアウトカムフォーカスによって調整されることが示された

方法

  • カナダのビジネススクールの大学生および大学院生1,016名を対象に、プロジェクト管理シミュレーション「Pegasus Simulation」を実施

  • チームPsyCap、創造性、適応性、アウトカムフォーカスを評価し、心理的資本が創造性を介して適応力にどのように影響するかをパス解析で分析

わかったこと:

チームの心理的資本(PsyCap)がチームの創造性を通じてチームの適応性に正の影響を与えるという仮説が支持された。具体的には、心理的資本が高いチームほど創造的な行動を促進し、それがチーム全体の適応能力を向上させることが確認された。

  • チームの心理的資本(PsyCap)と創造性の関係
    チームのPsyCapは創造性を高める要因として機能した(正の影響)。PsyCapが高いチームは、メンバーが新しいアイデアを生み出す動機づけが強く、創造的プロセスに積極的に関与していたことが明らかになった

  • チームの創造性と適応性の関係
    創造性が適応性に影響を与えると仮定されているが、結果からもこの関係が支持された(正の影響)。創造的なチームは、より多様な適応戦略を考案し、環境の変化に対して効果的に対応できることが示された

  • アウトカムフォーカスの調整効果
    アウトカムフォーカス(成果志向)は、心理的資本と創造性の関係を弱める調整効果を持つことが確認された。アウトカムフォーカスが高いチームでは、心理的資本が創造性に与える影響が抑制される一方、アウトカムフォーカスが低いチームでは、PsyCapが創造性に強く影響を及ぼすことが明らかになった

論文から得た学びと活用場面

心理的資本は、チームメンバーが創造的行動をとるための動機と認知能力を提供し、それにより適応性が向上することが分かりました。また、アウトカムフォーカスはPsyCapと創造性の関係を抑制するが、高い成果志向が創造性を促進する代替手段として機能することも示唆されました。
成果よりもプロセスを重視することで、チームの創造性を高め適応性を高めることができるかもしれません。

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