ダブルループコーチングによるリーダーシップ開発:論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は、ダブルループコーチングによるリーダーシップ開発に関する論文です。
ダブルループ学習:
自己や状況に対する根本的な仮定、価値観、信念を問い直し、それを修正することで学習と成長を深めるプロセス。エラーを修正する際に表面的な行動や結果だけでなく、その背後にある考え方やフレーム(枠組み)そのものに焦点を当てることが求められる。シングルループ学習が特定の行動を改善することであるのに対し、ダブルループ学習は、状況に対する認識の仕方や、行動の裏にある前提自体を見直し、持続的な変化を促すことを目的としている。
参考論文:
Argyris, C., & Schön, D. A. (1974). Theory in Practice: Increasing Professional Effectiveness. San Francisco, CA: Jossey-Bass.
ダブルループ学習の概念を初めて紹介し、人々がエラーを検出し、修正する方法に関する理論的基盤を構築した基本文献
Argyris, C. (2004). Reasons and Rationalizations: The Limits to Organizational Knowledge. Oxford, England: Oxford University Press.
ダブルループ学習が組織内でどのように適用され、知識の限界を克服する手段として機能するかについて論じた書籍
Edmondson, A. C. (2003). "Framing for Learning: Lessons in Successful Technology Implementation." California Management Review, 45(2), 34-54.
ダブルループ学習と関連するフレーミングの役割を、技術実装の成功事例を通じて説明している
Argyris, C., Putnam, R., & Smith, D. (1985). Action Science: Concepts, Methods, and Skills for Research and Intervention. San Francisco, CA: Jossey-Bass.
ダブルループ学習に関する応用と、実践的な介入方法についての詳細が含まれた研究書
今日の論文
Double-Loop Coaching for Leadership Development
ダブルループコーチングによるリーダーシップ開発
The Journal of Applied Behavioral Science, 2014
Robert Witherspoon
サマリ
リーダーが自身の思考過程を見直し、パフォーマンス向上とリーダーシップの発展に活用するための独自のコーチング手法「ダブルループコーチング(DLC)」を提案
このアプローチは、特にリーダーが状況をどのように「フレーミング(枠組み)」しているか、そしてそのフレーミングが行動や結果に強く影響を与える方法に焦点を当てている
クリス・アージリスによって考案されたシングルループとダブルループ学習の概念に基づき、DLCでは、リーダーが自分の考え方を深く理解し、より効果的な行動につなげる方法を支援する
方法
DLCは「3つのR」(リフレクト・リフレーム・リデザイン)に基づくプロセスで、リーダーの思考と行動の改善を目指す
リフレクトは、リーダーが自己の反応と枠組みを見直すことを促し、リフレームは状況の異なる解釈や新しい視点を探求させ、リデザインでは行動実験を通じて自己の行動を変化させる方法を模索する
わかったこと:
ダブルループコーチング(DLC)の実践と効果
定義
ダブルループコーチング(DLC)は、リーダーが自身の思考や行動のフレーム(枠組み)を見直し、パフォーマンスとリーダーシップを深く向上させることを目的とするコーチング手法基本的な考え方
クリス・アージリスによる「シングルループ」と「ダブルループ」学習理論に基づく
行動の背後にある仮定や信念自体を再評価し、根本的な思考や枠組みの変革を促進する
「3つのR」プロセス
DLCは、次の3つのステップを通じて実践される:リフレクト(Reflect)
自己の反応や枠組みを見直し、状況に対する新たな洞察を得るリフレーム(Reframe)
問題や状況に対する解釈や視点を変え、新たなフレームを発見するリデザイン(Redesign)
新しい行動計画を立て、フィードバックや実験を通じて行動の質を改善する
目的
リーダーが自己の思考を再評価し、既存の価値観や信念に依存しない柔軟な思考と行動を獲得する
他者との関係や成果を改善し、複雑な状況でのリーダーシップの効果を高める
応用例
パフォーマンスレビュー、リーダーシップ移行期、組織変革時など、重要な意思決定や関係性の構築が求められる場面で活用される
従来の行動コーチングとの違い
DLCは表面的な行動の改善だけでなく、行動を引き起こす思考プロセスや内的な枠組み自体に焦点を当てる
成果
リーダーの行動や意思決定の質が向上し、長期的なリーダーシップの成長が期待できる
DLCの実践により、リーダーは短期的な洞察から長期的な行動変容まで多様な結果を得られ、ステークホルダーの多様な視点に応じた行動ができるようになる。具体的には、フィードバックを活用したリーダーが行動を反映・改変し、結果的にリーダーシップ効果を高めている事例が示されている。
論文から得た学び
多くの従来型のコーチングが行動に焦点を当てるのに対し、DLCはリーダーの思考過程や価値観を見直すことに主眼を置いています。