職務設計に関するメタ分析と理論的拡張：論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は、職務設計に関するメタ分析と理論的拡張に関する論文です。
今日の論文
Integrating Motivational, Social, and Contextual Work Design Features: A Meta-Analytic Summary and Theoretical Extension of the Work Design Literature
動機付け的、社会的、文脈的な仕事設計の特徴の統合: 職務設計文献のメタ分析的要約と理論的拡張
Journal of Applied Psychology, 2007年
Stephen E. Humphrey, Frederick P. Morgeson
サマリ
本研究では、職務設計理論を拡張し、動機付け的特徴、社会的特徴、文脈的特徴を統合したメタ分析を実施した
結果、14の仕事特性が19の労働者の態度や行動の分散の平均43%を説明することが示された。特に、動機付け的特徴は、主観的パフォーマンスの25%、離職意図の2%、仕事満足度の34%、組織コミットメントの24%、役割認識の26%を説明した
さらに、社会的特徴は、動機付け的特徴を超えて、主観的パフォーマンスの9%、離職意図の24%、仕事満足度の17%、組織コミットメントの40%、役割認識の18%を追加的に説明した
また、文脈的特徴は、動機付け的・社会的特徴を超えて、仕事満足度の4%とストレスの16%を説明した
方法
本研究では、PsycINFO（1887–2004）とWeb of Science ISI（1970–2004）のデータベースを用いて、職務設計に関連する研究を検索し、259の研究をメタ分析に含めた
分析対象の職務特性は、動機付け的特徴（自律性、スキル多様性、タスク多様性など）、社会的特徴（相互依存性、社会的支援など）、文脈的特徴（物理的要求、作業環境など）の3つに分類された
わかったこと：職務設計の拡張モデル
動機付け的特徴（Motivational Characteristics）、社会的特徴（Social Characteristics）、文脈的特徴（Work Context Characteristics） の3つの要素を統合したフレームワークを提示。
動機付け的特徴（Motivational Characteristics）:
自律性（Autonomy）
スキル多様性（Skill Variety）
タスクの意味（Task Significance）
タスクのアイデンティティ（Task Identity）
仕事からのフィードバック（Feedback from the Job）
情報処理（Information Processing）
問題解決（Problem Solving）
社会的特徴（Social Characteristics）:
相互依存性（Interdependence）: 他の仕事や同僚との関連性
他者からのフィードバック（Feedback from Others）: 上司や同僚からの評価
社会的支援（Social Support）: 同僚や上司からの助け
外部との関わり（Interaction Outside the Organization）: 顧客や取引先との関係
文脈的特徴（Work Context Characteristics）:
身体的要求（Physical Demands）: 仕事における身体的負荷
作業環境（Work Conditions）: 職場の騒音、温度、健康リスク
人間工学（Ergonomics）: 仕事の姿勢や動作のしやすさ
媒介変数（Mediators）:
心理的状態（Critical Psychological States）:
経験的意味（Experienced Meaningfulness）: 仕事の価値や意義の認識
経験的責任（Experienced Responsibility）: 成果に対する責任感
結果の認識（Knowledge of Results）: 自分の仕事の影響を理解する度合い
仕事の成果（Work Outcomes）:
行動的成果（Behavioral Outcomes）: パフォーマンス、離職意図、欠勤率
態度的成果（Attitudinal Outcomes）: 仕事満足度、組織コミットメント
役割認識（Role Perception Outcomes）: 役割の明確性、役割の対立
ウェルビーイング（Well-Being Outcomes）: ストレス、バーンアウト
ポイント:
職務設計において、動機付け的特徴だけでなく、社会的・文脈的要因も重要な役割を果たすことを示している
心理的状態（例: 仕事の意味や責任感）が、職務特性と成果の関係を媒介していることが確認された
仕事満足度やパフォーマンスを向上させるためには、単なるタスク設計ではなく、職場の社会的環境や作業条件の改善も必要である
論文から得た学び
これまでの研究は、主に動機付け的特徴に焦点を当てていましたが、本研究は社会的・文脈的要因の重要性を主張しています。特に、社会的特徴（例: フィードバックの機会、同僚からの支援）が、仕事満足度や組織コミットメントを向上させる要因であることが明らかになりました。さらに、作業環境がストレス軽減に寄与することも確認されました。