
ジョブ・キャラクタリスティクス・モデル(JCM)の妥当性:論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は、ジョブ・キャラクタリスティクス・モデル(JCM)の妥当性に関する論文です。
HackmanとOldham(1975, 1976, 1980)によって提案されたジョブ・キャラクタリスティクス・モデル(JCM)は、ジョブの充実度(エンリッチメント)や複雑さが、仕事満足度、モチベーション、業務パフォーマンスを向上させるという概念に基づいています。
今日の論文
THE VALIDITY OF THE JOB CHARACTERISTICS MODEL: A REVIEW AND META-ANALYSIS
ジョブ・キャラクタリスティクス・モデルの妥当性:レビューとメタ分析
Personnel Psychology, 1987年
Yitzhak Fried、Gerald R. Ferris
サマリ
本研究では、HackmanとOldhamが提唱したジョブ・キャラクタリスティクス・モデル(JCM)の妥当性を評価するため、約200件の関連研究の包括的なレビューと、メタ分析手法を用いたデータ解析を行った
その結果、得られた相関結果は、一定の妥当性を持つことが示された
ジョブ特性の多次元性が支持されたものの、正確な次元の数に関しては意見の一致が見られなかった
方法
データ収集: 76件の相関研究データをメタ分析に使用し、追加の研究を含めて約200件の研究をレビュー
分析手法:
ナラティブレビュー(対象: ジョブ特性の構成概念の妥当性、測定方法、モデルの次元性など)
Hunter-Schmidtメタ分析手法を使用し、サンプリングエラー、測定誤差、範囲変動を統制
わかったこと:
ジョブ特性と心理的・行動的成果の関係
ジョブ特性と心理的成果(仕事満足度、モチベーション、成長満足度)の間には中程度から強い相関があった
行動的成果(パフォーマンス、欠勤)との関係は比較的弱いが、一定の関連性が確認された
各ジョブ特性の影響
仕事満足度と最も強く関連するのは「フィードバック」
成長満足度と最も強く関連するのは「自律性」
内発的動機付けと最も強く関連するのは「スキルの多様性」
パフォーマンスとの関係が最も強いのは「タスクの同一性」(90% 信頼区間で0.13の相関)
欠勤率と最も強い負の相関を示したのは「動機付けの可能性スコア(MPS)」
ジョブ特性の多次元性
JCMの5次元構造は一部の研究で支持されたが、他の研究では異なる因子構造が示唆された
特に「スキルの多様性」「タスクの重要性」「自律性」が統合される可能性が示された
調整要因の影響
成長欲求の強さ(GNS)は、ジョブ特性とパフォーマンスの関係を調整する役割を持つことが示唆された
知識とスキルのレベルが低いと、ジョブ特性の影響が小さくなる
職場環境の満足度が低いと、ジョブ特性と仕事成果の関係が弱まる可能性がある
論文から得た学び
JCMの構成要素の多くは支持されたものの、モデルの完全な適用には注意が必要であると主張されています。特に、ジョブ特性とパフォーマンスの関係は、成長欲求の強さなどの調整因子の影響を受ける可能性があることが示唆されています。また、ジョブ特性の測定方法に関する問題(例: 自己報告バイアス)も指摘されています。