見出し画像

計画的偶然性理論:論文レビュー

こんにちは、原田です。
今回は、計画的偶然性理論を提唱した論文です。

計画的偶然性理論は、企業のキャリア研修で頻繁にみられる理論です。先日の授業にて、この理論を誤解していたことがわかり、原文を拝読するに至りました…

今日の論文

Planned Happenstance: Constructing Unexpected Career Opportunities
計画的偶然性:予期しないキャリアの機会を構築する
Journal of Counseling & Development, Spring 1999, Volume 77
Kathleen E. Mitchell, Al S. Levin, John D. Krumboltz

サマリ

  • 従来のキャリアカウンセリングは偶然性を排除する傾向があるが、現代の不確実で急速に変化する労働環境では、偶然の出来事をキャリア形成に利用する必要があるとされている

  • 本論文は、キャリアカウンセリングにおいて予期しないイベント(偶然の出来事)を積極的に活用する「計画的偶然性理論」を提案し、顧客が偶然の出来事をキャリアの学習と機会に変える方法を探る

計画的偶然性理論(Planned Happenstance Theory)

  • キャリアカウンセリングにおける新しいアプローチとして提唱され、予期しない出来事(偶然の出来事)をキャリア機会として積極的に活用することを目的とした理論

  • この理論は、John D. Krumboltzらによって発展された学習理論に基づき、偶然の出来事をキャリアに組み込むためのスキルを身につけることを重要視している

  • 計画的偶然性理論は、クライアントが偶然の出来事を積極的に捉え、キャリア機会として利用できるよう支援することを目的としている

  • キャリアカウンセラーは、クライアントが自身の興味や好奇心を育て、計画されたキャリアの枠を超えて新たな学習や機会を生む行動を取るよう導く

5つの重要なスキル:

計画的偶然性理論では、以下の5つのスキルが偶然の出来事を活かすために不可欠とされている

  1. 好奇心(Curiosity) - 新たな学習の機会を探求し、未経験の分野にも積極的に興味を持つこと

  2. 粘り強さ(Persistence) - 困難や失敗にも負けず努力を続けること

  3. 柔軟性(Flexibility) - 自分の態度や環境の変化に対して適応できること

  4. 楽観性(Optimism) - 新たな機会を可能で達成可能なものとしてポジティブに捉えること

  5. リスクを取ること(Risk Taking) - 結果が不確実な状況においても行動を起こす勇気を持つこと

理論の具体的なアプローチ

計画的偶然性理論に基づくカウンセリングでは、クライアントが次のようなプロセスを経て成長できるよう支援。

  • 偶然性の認識を深める
    クライアントが過去に経験した偶然の出来事がどのようにキャリアに影響を与えたかを振り返ることで、偶然の役割に対する認識を高める

  • 好奇心を行動に変える
    クライアントが持つ好奇心を学びや探求の機会として捉え、それを具体的な行動に移す方法を考える

  • 望ましい偶然の出来事を生み出す
    偶然の出来事を増やすために、ネットワーキング、インフォーマルな面接、興味のある分野のクラス受講など、積極的に機会を創出する方法を学ぶ

  • 行動の障害を克服する
    行動を妨げる自己制約的な信念や環境的な要因を克服するために、クライアントに柔軟性や粘り強さ、リスクテイクの姿勢を促す

※計画的偶然性理論の実用性には、顧客自身の性格やスキル、価値観に依存する面があり、全ての顧客に効果的であるとは限らない

蛇足:

私は、もともと計画的偶然性理論について苦手意識を持っていました。理由はキャリア教育にて「企業における配属や異動を受け入れるべき」という根拠として用いられる場面が多かったからです。なんて企業都合過ぎるんだと思って聞いておりました。笑しかし、改めて授業で、そういう意図ではなく「ノリがいい人」になることで機会を作り出す行動を起こせるという主旨であることを知り、理論の利用方法にズレがあることを学びました。今回、このnoteは、上記のモヤモヤを私以外にも抱えている人がいるだろうと思っての記事です。また、きっとこのように誤解している理論がたくさんあるのかもしれないなと反省しました。勉強して正しく発信できるようになりたい!


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集