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オーセンティック・リーダーシップに対する批判的な視点:論文レビュー

こんにちは、原田です。
今回は、オーセンティック・リーダーシップに対する批判的な視点に関する論文です。

オーセンティック・リーダーシップ(Authentic Leadership、以下AL):
「真の自己」を基盤とし、リーダーが自己認識を深め、自分の価値観、モラル、信念を組織やフォロワーに反映させることを重視するリーダーシップモデル。ALは、リーダーが誠実さ、透明性、倫理的行動を実践し、フォロワーとの信頼関係を構築することで、組織全体のパフォーマンスとウェルビーイングを向上させることを目指す。主な要素として、自己認識(Self-awareness)、自己規制(Self-regulation)、モラルな価値観(Moral perspective)、透明性(Transparency)が挙げられる。

主要参考論文:

  • Avolio, B., & Gardner, W. (2005). Authentic leadership development: Getting to the root of positive forms of leadership. Leadership Quarterly, 16, 315–338.

  • Bass, B., & Steidlmeier, P. (1999). Ethics, character, and authentic transformational leadership behavior. Leadership Quarterly, 10(2), 181–217.

  • Gardner, W., Avolio, B., & Luthans, F. (2005). Can you see the real me? A self-based model of authentic leader and follower development. Leadership Quarterly, 16, 343–372.

今日の論文

The Impossibility of the 'True Self' of Authentic Leadership
「オーセンティック・リーダーシップにおける『真の自己』の不可能性」
Leadership, 2011年
Jackie Ford, Nancy Harding

サマリ

  • オーセンティック・リーダーシップ(Authentic Leadership、以下AL)は、リーダーの「真の自己」を実現するモデルとして広く注目されているが、本研究では客体関係理論を用いて、このモデルの根本的な欠陥を検討

  • 特に、ALが個人の不完全さを無視し、組織全体の価値を優先するため、リーダーとフォロワーの主体性を阻害し、潜在的に破壊的なダイナミクスを引き起こす可能性があると指摘

方法

精神分析学の一分野である客体関係理論、特にジェシカ・ベンジャミンの理論を適用し、ALのモデルにおけるリーダーとフォロワーの相互関係を分析

論文における主張:

  • オーセンティック・リーダーシップ(AL)の理論的矛盾
    リーダーとフォロワーの主体性を犠牲にし、組織の価値観を優先することで、ALモデル自体が「真の自己」を否定する結果を招く

  • 組織と個人の同一化
    ALはリーダーとフォロワーの双方に、自己と組織の価値観を完全に同一視することを要求し、個人の自由や主体性を損なう

  • 心理的影響
    リーダーとフォロワーの間で、主体性を奪われた結果として心理的な苦痛や支配的なダイナミクスが生じる可能性が高い

  • 客体関係理論からの批判
    ALモデルではリーダーがフォロワーを「客体」として扱うことで、相互の認識が欠如し、支配と従属の関係を強化する

  • 破壊的な組織ダイナミクス
    リーダーとフォロワーが「組織の価値」に完全に従属することで、主体性が否定され、組織内に破壊的な効果を引き起こす可能性がある

論文から得た学び

ALは、リーダーとフォロワーの両者が自己の主体性を犠牲にし、組織の価値観を内面化することを要求する構造的な矛盾を含むと指摘されています。また、このモデルの実践は、リーダーとフォロワー双方に心理的な負担を強いる可能性があることが主張されていました。

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