経営・心理学におけるGTA評価基準の検討:論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は、GTAの理論的特徴に関する論文です。思いっきり研究に振ります。笑
GTA(Grounded Theory Approach):
社会的相互作用プロセスを説明し、現実の問題解決を目指す理論構築の手法。これに基づいて生成された理論は、特定の分野における行動や意思決定を理解・予測する助けとなる
今日の論文
Some criteria for GTA evaluation in business administration and psychology
経営・心理学におけるGTA評価基準の検討
Japanese Journal of Administrative Science, 2021
Hiroshi Takeshita
サマリ
多くの論文がGTAを使用していると主張しているが、組織行動や心理学の経験的研究では、参加者の経験に意味を与える認知概念やカテゴリーの図示は、理論とは呼べない
従来、異なるGTAバージョンは認識論の観点から分類されてきたが、生成されたGTは社会科学の観点から理論的に評価されていなかった
本稿では、代表的なGTを選び、「社会的相互作用」と「理論」の観点から各バージョンを評価
その結果、オリジナル版とM-GTAの有効性が示された
方法
オリジナル版GTAと修正版M-GTAを中心に、いくつかの代表的なGTAバージョンを取り上げ、それぞれの理論的特徴を比較
具体的には、GlaserやStraussが提唱したオリジナルのGTA、Corbinによる修正版、さらに日本で普及している木下のM-GTAを評価対象とした
わかったこと:M-GTAの評価基準
対人的相互作用の抽象化
人と人との相互作用が、1対1で抽象化され、思考・感情・行動の三要素を含むことが求められる。これにより、対象となる社会的プロセスが明確に理論化される理論的飽和の範囲と節倹性
範囲は、対象となる現象がどれだけ広くカバーされているか、節倹性は、可能な限り少ないカテゴリーで理論を構築できるかを指す。これらの要素がバランス良く達成されることが、理論的飽和の条件とされる反証可能性
理論は、他の研究者がデータに基づいて検証し、反証できる構造を持つ必要がある。これにより、理論の客観性が確保される有用性
実践的な場面での応用において、効果的な介入方策を提供できるかどうかが評価される。特に介護や心理的支援の現場で役立つことが重要である明確な伝達
理論や結果が視覚的かつ明確に表現されているかどうかが評価基準となる。読者や実践者にとって理解しやすい形での伝達が求められる
少人数で理論的飽和が達成できる条件
データの質や主要なカテゴリー間の関係性が十分に明らかにされた時点。
仮説的概念がデータで確認されること
これは、少人数の調査協力者から得られたデータが主要な概念を支持する場合を指す。たとえば、二人以上の協力者の語りが同じ概念を示した場合、その概念は理論の一部として認められる。このようなデータが繰り返し得られ、新たな語りを追加しても変化がない時点が「飽和」となる
主要なカテゴリー間の関係性が固まること
概念が明確に定義され、主要なカテゴリー間の関係がデータに基づいて論理的に整理されると、これ以上データを追加してもカテゴリー間の関係に大きな変更が生じない段階が飽和の目安となる
論文から得た学び
M-GTAの評価基準について整理されていました。この評価基準は、理論の有効性や飽和状態を判断するための指標として活用できそうです。