トランザクティブメモリーシステム(TMS)の発展とコミュニケーションの役割:論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回はトランザクティブメモリーシステム(TMS)とコミュニケーションに関する論文です。
トランザクティブメモリーシステム(TMS)は、グループメンバーが情報のを共有し、各メンバーの専門知識に対する共有認識を持つ、グループレベルの知識共有システムです。
TMSの研究は、心理学的な「グループマインド」に対する反応として1985年に提案され、その後、多くの研究者によって異なるグループにおけるコミュニケーションとTMSが探求されてきたそうです。
↓過去にトランザクティブメモリーシステム(TMS)を取り扱った記事
今日の論文
Communication in Transactive Memory Systems: A Review and Multidimensional Network Perspective
トランザクティブメモリーシステムにおけるコミュニケーション: レビューと多次元ネットワークの視点
Small Group Research, 2021年
Bei Yan, Andrea B. Hollingshead, Kristen S. Alexander, Ignacio Cruz, and Sonia Jawaid Shaikh
サマリ
トランザクティブメモリーシステム(TMS)に関する64の実証研究を統合し、TMSの形成と利用におけるコミュニケーションの役割を分析
主な発見として、以下3つが挙げられる
(a) TMSは専門知識についてのコミュニケーションを通じて形成される
(b) TMSが発展するにつれて情報の割り当てと検索の調整のためのコミュニケーションが増加し、情報交換が促進される
(c) グループはコミュニケーション学習を通じてTMSを更新するしかし、直接的な対人コミュニケーションは、TMSの発展や利用に必須ではなく、発展したTMS内で常に高品質の情報共有が行われるわけではない
方法
このレビューは、Web of Science、SSRN、Scopus、PsycInfoの4つの学術データベースで検索された64の実証研究を対象とし、TMSとコミュニケーションの次元を分析しました。研究のコーディングは、4人の訓練を受けたコーダーによって行われ、コーダー間の高い一致度が得られました(Cohenのκ=0.84〜1.00)。
わかったこと:
トランザクティブメモリーシステム(TMS)の発展と利用におけるコミュニケーションの役割
専門知識の交換がTMSの発展を促進する
グループメンバー間での専門知識に関する情報交換が、TMSの発展を促進することが確認されている。特に、頻繁なコミュニケーションや対面でのやり取りがTMSの形成に有効である多様なコミュニケーションチャネルを介したTMSの形成
TMSの形成には、対面コミュニケーションのみならず、コンピュータを介したコミュニケーション、書面でのフィードバック、非言語的な専門知識の手がかりが効果的であることが示されている高品質なコミュニケーションの重要性
助け合いやオープンな対話、タイムリーな情報交換など、高品質なコミュニケーションがTMSの発展にプラスの影響を与えることが確認されている情報交換の増加
TMSが発展すると、グループ内での情報交換が増加することが明らかにされている。これは、特定のタスクや状況に応じて、情報の割り当てや検索の調整がより頻繁に行われるためである発展したTMS構造が必ずしも効果的な情報交換を保証しない
発展したTMS構造が存在しても、グループ内の情報共有が必ずしも効果的であるわけではないことが示されている。これは、情報の質や情報の配分方法に問題がある場合があるためであるポジティブな人間関係とグループの雰囲気が情報共有を促進する
メンバー間の関係が良好であり、グループ内にポジティブな雰囲気が存在する場合、情報交換が活発になり、TMSの機能が向上することが確認されている。逆に、ストレスの多い環境では、TMSの効果が低下する可能性が示されている時間の経過とともに口頭でのコミュニケーションの重要性が減少する
TMSが発展すると、口頭でのタスクに関するコミュニケーションの頻度が減少し、非言語的な手がかり(例:アイコンタクト)を用いた調整が増加することが示されている集合的な学習プロセスの増加
グループの発展に伴い、メンバー間での学習行動(例:共同作業の反省や評価)が増え、TMSがさらに更新・維持されていくことが確認されている
論文から得た学びと活用場面
コミュニケーションがTMSの形成と利用において重要な役割を果たしていることが確認されましたが、その効果はグループの発展段階や文脈に応じて異なることがわかりました。
タレントマネジメントシステムの導入で、チームのパフォーマンス向上を狙う企業も増えておりますが、上手くいかない場合は一度コミュニケーションに着目してみてもよいかもしれません。