境界のないキャリアの境界を再考する:論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は境界のないキャリア(Boundaryless Careers)についての論文です。
「境界のないキャリア」についてはこちら
今日の論文
Boundaryless Careers: Bringing Back Boundaries
境界のないキャリア:境界を再び考察する
Organization Studies, 2012年
Kerr Inkson, Hugh Gunz, Shiv Ganesh, Juliet Roper
サマリ
境界のないキャリア理論はキャリア研究や経営学の中でますます重要な役割を果たしており、現代のキャリアに関する新たな「現状」として位置づけられている
本論文はこの理論を背景にその貢献を評価するとともに、境界のないキャリアの概念の問題点を指摘
具体的には、5つの問題点(ラベルの誤用、定義の曖昧さ、個人の主体性の強調、キャリアの境界化、実証的な証拠の不足)に基づき、境界に焦点を当てた新しい研究方向を提案
方法
境界のないキャリア理論に関する文献を批判的にレビューし、理論の問題点を5つのテーマに分けて分析
さらに、境界理論を基に新しい研究方向を提案
わかったこと:
境界のないキャリアという概念が抱える問題
ラベルの誤用
「境界のないキャリア」という用語は適切に定義されておらず、実際には「境界を越えるキャリア」を指すべきであるが、誤って使われている
定義の曖昧さ
境界のないキャリアは、様々な境界(組織間、産業、職業、地理的境界など)を越えることを指すが、文献での定義は曖昧であり、どの境界を越えるのか明確に示されていない
個人の主体性の過剰な強調
境界のないキャリア理論では、個人が自己のキャリアを完全にコントロールできると強調されているが、実際には社会的・制度的な制約が強く影響していることが無視されている
境界のないキャリアの普遍化
境界のないキャリアは、組織間での移動が増えているとされるが、その証拠は不十分であり、むしろ多くの人々は依然として組織内でのキャリアを築いていることが確認された
実証的証拠の不足
境界のないキャリアが普遍的であるという主張には、実際の労働市場のデータや長期雇用の統計など、実証的な裏付けが乏しい
論文から得た学びと活用場面
境界とは?というイメージに対して自身の思い込みがあることを内省した論文でした。組織にとっての従業員のキャリア、従業員にとっての自身のキャリア、など改めて定義を考えさせられる論文でした。
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